「クソッ!クソッ!失敗した!」
鷲掴みした男の頭を地面へ叩きつける。砂埃の中から聞こえる男の声は心底悔しそうだった。
「誰だアンタ。何故はやてを狙う」
「誰だって?グリフィス・ロウランだよぉ!」
グリフィス・ロウラン。階級は准陸尉。レティ・ロウラン提督の息子。機動六課では部隊長補佐を務めていた。解散後は本局次元航行部隊に転属、事務官として艦船の事務業務を担当していると聞いたのだが、そんな彼がどうしてここに?
「グリフィス准尉、あなたが…どうしてこんな事を…?」
「…その剣、魔導書、バリアジャケット…まさかヤミ二佐」
あ、はい。そのヤミです。実は上から5番目の階級にいるヤミです。見た目の割に地味に階級が高い男TOP3入りのヤミです。実力的にはもうちょい上へ行けるんだけど昇格に興味を示さないので下の人がバンバン上がってきて若干ビビっているヤミです。
「俺の問いに答えて下さい。どうしてはやてを狙うんですか」
「あなたも確か特例措置で上級キャリアに合格してましたよね」
「あぁ。そうだが」
「僕はそれが憎いのですよ!」
グリフィス准尉魔力が業火のように燃え上がる。
「知ってますか?私はll種キャリア通過なんですよ。誰よりも努力してこれなんですよ!」
「何が言いたい」
「あなた方は稀少技能(レアスキル)持ちの特例措置があったでしょうが僕にそんな物は無いんです。おかしいでしょ!誰ほど頑張った僕よりもたった1つの才能が勝るなんて!卍解!!」
卍解。その掛け声と同時にグリフィス准尉の魔力は更に膨れ上がり、暴風と共に消えた。
今まで持っていた大刀は黒い刀となり、黒い装束を新たに身につけていた。
魔力の圧は無い。だが目には見えないプレッシャーがかかる。
「だから消すんですよ。過去のあの人達を。そして私がトップの世界を作り出す!」
〈月牙天穿〉
「んだよこの威力!」
〈闇纏・無明斬り〉
互いが放つ黒い斬撃は衝突した。が、俺の斬撃は押し負けて直撃する。
すごい威力だ。対応しきれなかった。
「どこを見ている?」
俺は准尉から目を離してなかった。刃を握って斬りかかる隙を窺っていた。
だが気がつけば背後から声が聞こえ、目の前から姿が消えた。
「ッ!」
振り向く要領で斬り払おうとするが、刃は砂埃を斬り准尉の姿はなかった。
「こっちだよ」
「やっぱそう来るか」
〈闇繭〉
世界樹回復魔法〈ユグドラシルの芽吹き〉
更に背後に回って斬りつけられる。が今回は“予測を立てて先手を打った”。
斬られるまで引きつけて、刀を振っている瞬間に〈闇繭〉でガード。刀が止まっている間に〈月牙天穿〉で受けた傷を世界樹回復魔法〈ユグドラシルの芽吹き〉で回復。
「っ、確か…ヤミニ佐の世界樹魔法を使うには世界樹を植えなきゃいけないのではなくて?」
そう。〈ユグドラシルの芽吹き〉を使うには世界樹を植える必要があるのだがここには世界樹は無い。
ならどうしたって?
「俺が考えなしにこの場所に来たと思ってんのか?既に植えてるんだよココに」
ココは俺が初めてこの世界には降りた所。
思い返して欲しい。俺がココに来て、着地して、空いた穴を塞ぐ為に…植えたのだ。世界樹魔法〈ミスティルテインの種〉で育った木の根を他の木々の根と絡めてこの山全体を覆っている。つまり世界樹魔法1番の欠点 世界樹を植えなきゃ事案は解決しているのだ。
「もう既にココはヤミニ佐のホームという事ですか。仕方ない…だったら私も本気でお相手しましょう」
(え、お前まだ本気じゃなかったんか(汗))
グリフィス准尉はかけていたメガネを取り握り潰す。そして全身から今まで抑え込んでいただろう爆発的な魔力が膨れ上がる。
一歩動けばもう姿は見えない。その目に止まらない速さで俺の周りを囲む。残像が多すぎて本体を狙いきれない。これだと防御専用の世界樹魔法〈魔守のトリネコ〉も起動しないだろう。
「これなら僕を捕らえられまい。行くぞ」
「…」
俺は刀を両手で持ち、構えていた。相手の刀が体に触れた瞬間にカウンターを決めるために全身の全神経に集中していた。
一瞬たりとも気を抜いていない。だが一瞬にして全身に切り傷が生まれた。一瞬にして全身を斬られたのだ。
刀を地面に突き立て、膝をつく。目の前で立ち止まったグリフィス准尉の髪は、先端から黒く染まり、全身から黒い魔力をが溢れていた。
〜いろいろ補足コーナー〜
Q グリフィスって誰〜?オリキャラ?
A なのはSSに登場した六課で隊長補佐を務めていた白い髪のメガネ。しれっと登場しているので認識している人は少ない(と思う)。
Q グリフィスの持っている剣は?
A 斬月だよ。本来は偽崎零護というキャラだったけど…なんか短編で終わらせるには惜しいキャラになったので単発消費ができる八神に近い男性キャラを血眼で探しました。グリフィスは(作品の)犠牲者です。