ジューダス・ビショップと最強のイマジナリーフレンド   作:束田せんたっき

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バジリスクタイム

 暗闇をひた走っていると、俺は広い空間に出た。巨大な老人の顔面像の前で、青年が一人佇んでいる。床には、さっきのロンのように倒れているジニー。

 

「誰だ!?」

「……それは僕のセリフじゃないか?」

 

 青年は困惑した顔で言った。しかし俺の胸元のロザリオを見咎めると、目を細めた。

 

「その十字架……なるほど、君は忌々しいビショップの息子か」

「そうだ。そして君はスリザリンの継承者だ。友達の仇! ぶっ飛ばしてやる!」

 

 俺は即座に掴みかかろうとしたが、体が動かない。青年が手で押し留めるジェスチャーをしたのだ。

 

「まあ待ち給え。話でもしながら、魔法界の英雄が殺される様を見ようじゃないか」

 

 青年が杖を振ると、豪華な椅子が2脚現れた。俺は強制的に座らされる。パチャパチャと水溜りを踏む足音と、何かが這いずる音が聞こえた。

 

「この音は?」

「ハリー・ポッターがバジリスクから逃げている音だよ」

「何だとぉっ」

 

 俺は藻掻くが、見えない手で押さえつけられたかのように動けない。椅子がガタガタと鳴った。

 

 青年は俺の対面の椅子に腰掛けた。深く背もたれに身を預ける。その間もガタガタが鳴り続けたのは言うまでもない。

 

「さて、落ち着いた所で自己紹介といこうか」

「全然落ち着いてないよ?」

「僕はトム・マールヴォロ・リドル。君は?」

「……アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアだ」

 

 リドルと名乗った青年は、乾いた笑い声を漏らした。しかし空気は依然、張り詰めたままだ。目が笑っていないし、むしろ赤い。

 

「僕の前でその名を吐くとは、流石は父親と同じグリフィンドールということか。ジューダス」

「あれ? 俺、名乗りましったっけ?」

「ああ、君は正直に話してくれなさそうだからね。心を覗いたんだよ」

 

 俺は一気に頭が冷えるのを感じた。どうやらリドルはチーターのようだ。

 

 リドルは少し身を乗り出し、俺と目を合わせた。赤い目の輝きが増していく。

 

「フフフ、ジューダス、君がどう打開しようと考えているのか当ててあげよう。……ん? 何だこの鶏は?」

 

 困惑感丸出しでリドルは眉尻を下げた。珍獣を眺めるような目で、目の前に座っている男を見る。俺は聖母も裸足で逃げ出す笑顔で言った。

 

「トムって鶏を飼ってたから、名前聞いて思い出したんだ」

 

 リドルは全身を小刻みに震わせた。ゆっくりと椅子から立ち上がる。顔は憤怒の色に染まっていた。

 

「貴様……! この僕を……! この僕を畜生扱いしたこと、後悔させてやる……!」

 

 ハリーの杖をリドルが空中に振るうと『Tom Marvolo Riddle』の金の文字列が空中に浮かび上がった。ゆっくりと文字は移動していき、別の意味を形作る。『I am Lord Voldemort』俺は息を呑んだ。

 

「フフフ、やっと気づいたようだね……。そう、僕は泣く子も黙る闇の帝王だ……」

「ハリーにもドヤ顔でやってそう」

「き、貴様ぁ……!」

 

 再びリドルの顔が赤みを帯びる。頬はヒクヒクと引きつり、爆発寸前だ。しかしそれこそが俺の狙いでもある。名付けて、闇の帝王激おこぷんぷん丸作戦。成功すれば冷静さを欠くこと間違いなしだ。

 

「余程死にたいようだな。ハリー・ポッターは後回しだ。『シューシュー(バジリスク)』」

 

 リドルがシューシューと言うと、どこからともなく大蛇が這い出てきた。鋭いハリーの声が響く。

 

「ジューダス! 目を閉じるんだ! バジリスクと目を合わせちゃいけない!」

「オーケー、でも何で?」

「死ぬ!」

「それは不味いや」

 

 俺は可及的速やかにハリーの言葉に従うことにした。素早く瞼を下ろす。これで視界はゼロだ。

 

 何か大きなものが近づいてくる気配を感じる。俺は躓かないようにゆっくりと後退った。リドルの勝ち誇った声。

 

「終わりだ、ジューダス。『シューシュー(あの狂人を殺せ)』」

 

 俺は高音で口笛を吹いた。2時の方向から反射した音が耳に入ってくる。俺は正反対の向きに飛び退る。

 

「何ッ!?」

 

 リドルの反応から察するに、上手く避けられたようだ。俺はソナーのように口笛を駆使して、バジリスクの位置を把握した。これなら目が見えなくても回避はできる。リドルのイライラした声が漏れた。

 

「ええい、小癪な。アバダ――」

「させるかー!」

「邪魔をするなポッター!」

 

 ソナーは揉み合うハリーとリドルを正確に知らせていた。俺は後転してバジリスクの噛みつきをすり抜け、叫ぶ。

 

「ハリー! バジリスクに弱点はないの?」

「弱点? そんなのある訳……雄鶏だ! 雄鶏の鳴き声が弱点だった!」

「無駄さ! 雄鶏はそこのジニーがみんな殺したからね!」

 

 雄鶏の鳴き声か……。ハグリッド、やっぱり鳥語は義務教育にすべきだ。俺は雄鶏の鳴き声を出した。

 

「クックドゥードゥルドゥー!」

 

 辺りが静まり返った。バジリスクが狼狽える気配がする。俺は続けて言った。

 

「ココリコ!」

 

 バジリスクが尻尾を巻いて逃げていく。リドルの悲痛な叫びが反響した。

 

「なぜ貴様は雄鶏の完璧な声真似ができるんだ!?」

 

 俺は目をパッチリ開き、リドルを見据えた。ハリーと取っ組み合いをしていて、もみくちゃになっている。俺は拳を振りかぶって駆け出した。拳は黒い靄を纏っている気がする。

 

「これが種族を超えた友情の力だからだー!」

  

 思い切りリドルを殴り抜いた。ハリーがパッと手を離すと、リドルの身体が後ろによろめく。リドルは頬に手を当てて、俺を睨みつけた。瞳孔が開き切っている。

 

「殴ったな! この僕を! ダンブルドアにも殴られたことないのに!」

「今のはミカエラの分! 次はハーマイオニーの分!」

「や、やめろお! こっちに来るなーっ!」

 

 リドルの放った緑の閃光が俺の顔の横を通り抜けた。俺は肝を冷やす。あれ当たったら絶対駄目な奴だ。

 ハリーが遠くを指さしたかと思えば、急いで目を閉じた。

 

「またバジリスクが来た!」

「俺に任せて。コケー!」

 

 しかしバジリスクが退散したような雰囲気はない。俺は口笛ソナーで状況を確認し、ハリーの手を引いた。刹那、バジリスクの尾がハリーの居た場所を通り過ぎる。

 

「雄鶏の鳴き声が効かない!?」

「僕が2度も同じ手を食う程愚かだと思ったか?」リドルが言った。

 

 俺はハリーの手を引いて走り出した。狙いをつけづらいようにジグザグで駆ける。リドルの高笑いが木霊した。

 

「せいぜい僕を楽しませてくれよ!」

「助けて……誰か助けて……」

 

 ハリーは呟き続ける。まるで夢遊病者だ。俺は望みをかけてトムの鳴き真似をするが、やはり無意味に終わった。詰みである。

 

「ああ畜生っ! ミカエラがいれば……」

 

 その時、どこからか美しい音楽が聞こえてきた。リドルの哄笑がピタリと止む。ハリーが言葉を漏らした。

 

「フォークス?」

 

 不死鳥はハリーの肩に留まると、俺の杖に顔を近づけた。玉のような大粒の涙が、一滴杖に落ちる。ドクンと心臓が高鳴った。この懐かしい気配は……!

 

「『シューシュー(バジリスク、待て)』」

 

 俺の杖から、手から、全身から、夜空のような黒と橙の靄が滲み出る。それらは渦巻きながら1つになり、人の形を紡いでいった。漆黒の髪、全てを焼き尽くすような目。俺は呆然と彼女を見る。

 

「ミカエラ……!」

「完全復活って所かァ? ん? 何泣いてんだよ、ジューダス」

「だって、だってぇ……」

 

 俺は止めどなく流れる涙を拭い、気合で止めた。人間、極限状態では何でもできるものだ。

 ハリーは突然、あっと声を上げた。

 

「き、君はあの写真の!」

「アア、オレはミカエラ。はじめまして、主人公クン?」

 

 ミカエラはそう言ってお辞儀するやいなや、バジリスクの方へ向かって手を握りしめた。怪物が悲鳴を上げ、悶える。目潰しが決まったーッ!

 

「今のはちょっとした挨拶だ。クリスマスの時はよくもやってくれたなァ」

 

 ミカエラは三流悪役のように口角を吊り上げた。リドルが歯ぎしりする。

 

「貴様は僕が直々に殺したはず……まさか……!」

「クハハハ、不死身なのはお前だけじゃねえってこった」

 

 ミカエラが高速でリドルに飛んでいく。両手から嵐が吹き荒れ、リドルに肉迫した。リドルが咄嗟に杖を振ると、嵐は左に逸れ、サラザール像の顎を削った。

 

「貴様! この像がどれほど貴重なものかわかってるのか!?」

「スリザリンのプライベートルームが重要文化財ィ? 笑わせるな」 

「『シューシュー(あの小娘を八つ裂きにしろ)』」

 

 リドルは命令したかに見えたが、当のバジリスクは頭を持ち上げて右往左往するばかりだ。苛立たしげにリドルは叫ぶ。

 

「『シューシュー(何をしている!)シューシュー( 臭いでわかるだろう! 殺せ!)』」

 

 そこからは怪獣バトルが始まった。バジリスクの毒牙をミカエラが躱し、お返しに魔力の奔流を太い胴に叩き込む。そこにリドルの失神呪文の横槍が入った。軽く吹き飛んだミカエラをフォークスが優しく受け止める。

 

「痛えなァ」

「逝ってくれると僕は楽だけどね」

 

 俺とハリーは流れ弾に当たらないように、部屋の隅に隠れていた。すぐ近くの壁を死の呪文が焦がす。冷や汗が頬を伝った。

 

 ハリーが這いつくばって、俺に顔を寄せた。緑の目はある種の覚悟を宿したかの如く、静かに光っている。

 

「ジューダス」

「何? 俺は今路傍の石ごっこで忙しいんだけど」

「何か僕らで助けられることはないかな?」

「助けられること? 俺たち一般人があの間に入って出来ることは、ミンチになって美味しく頂かれることだけだよ」

「だからってこのままミカエラに任せるだけで良い訳ない! 見て!」

 

 ミカエラはリドルとバジリスクのコンビネーションを前にやや劣勢のようだ。フォークスも大蛇の気を引こうとしているが、ミカエラと微妙に噛み合っていない。

 

 それもそのはず。ミカエラの真骨頂は膨大な魔力を背景にしたゴリ押しだ。上手く呼吸を合わせないと、あっという間にフレンドリーファイアを食らってしまう。だから、ミカエラは攻撃を控え目にせざるを得ない。

 

 俺たちは徐ろに立ち上がった。頷き合い、拳を握りしめる。右手の杖が勇気を与えてくれた。

 

「うおおおお――!」

 

 雄叫びを上げ、どちらからともなく走り出した。バジリスクの尾がドンドン迫ってくる。あと百メートル、あと数十メートル、あと――!

 

「いや、危ねえーッ!」

 

 俺は寸での所で前転回避した。普通に薙ぎ払ってきたぞあの蛇。ハリーが直撃して吹き飛ばされるのが、視界の端に入る。しかし振り返る余裕はない。

 

 バジリスクが鎌首をもたげ、大きな口をあんぐりと開いた。血のような赤で目の前が一杯になる。シューシューと先端が二股に分かれた長い舌が、出たり入ったりしている。目のあった場所は虚ろで、それが不気味さに拍車をかけていた。

 

「アホジューダス! なんでこっちに来た!?」

 

 食われる間際で俺は空に攫われた。チューベローズのいい匂いがする。ミカエラだ。オレンジの瞳は細められ、少し怒っているようだ。

 

「ミカエラを助けたくて」

「いいか、頭が鶏並みに足りねえジューダスにもわかるように言ってやる。お前はオレの弱点なんだよ」

「つまり俺はアキレスの踵と同じだってこと?」

「やかましい。下のリドルを見てみろ」

 

 リドルは俺たちを見上げて、実に爽やかな笑みを浮かべていた。その顔にどこか薄ら寒さを感じているのは、俺だけではないだろう。

 

「そんなに君はジューダスが大事なんだね。スリザリン像のお返しだ」

 

 バジリスクと緑の閃光が、一斉に俺を目掛けて襲いかかる。ミカエラは旋回しながら避けまくった。抱き締められる力が強まるのを感じる。

 

「ごめんミカエラ。俺なんかが出しゃばったせいで」

「謝るな。どの道、ジューダスがそばに来なきゃ、魔力不足でオレの魂は今度こそ木っ端微塵だった」

 

 やっぱりミカエラは優しい。嘘をついて俺を慰めようとしてくれているのだ。俺はローブを切り裂いた緑の軌跡から目を背けて、口を開く。

 

「本当にミカエラが戻ってきてくれて良かった……」

「バカ野郎。オレは簡単には死なねえよ。この半年間落ち込み過ぎだろ」

 

 俺はバッとミカエラの顔を見上げた。飛行に集中しているのか、白い喉から顎までしか見えない。みるみる俺の顔に熱が集まっていく。

 

「ゑ? 見てたの?」

「さあな。お前とその杖が、オレの魂を現世に繋ぎ止めた、とだけ言っておく」

 

 もうあの時期は黒歴史なんだけど。ミカエラにまで知られてたとか……。辛すぎる。

 

 そこでにわかにミカエラは急停止した。ふと、下を見ると、剣を手にしたハリーがバジリスクに切りかかっていた。一時的にリドルの意識が俺たちから外れる。

 

「ジューダス、今がチャンスだってのはわかるな?」

「俺は頷いた」

「いちいち口に出さなくていいから」

 

 ミカエラはため息にも深呼吸にも見える謎呼吸をした。やっぱりイマジナリーフレンドはエキセントリックなのだろうか。

 

「まァ良い。ちょっとお前の身体借りるぞ」

「えっそれってどういう……」

 

 その言葉と同時に、繭の如く靄が俺たちを包み込んだ。肌を這っていく混沌。視界がミカエラで塗り潰される。

 

「本当は使いたくなかったんだがな。あの極太蛇をぶっ殺すにはコレしかねえんだ。気張れよ」

 

 俺は自分が魔法に変換されていく、奇妙な感覚に襲われた。徐々にオブスキュラス(ミカエラ)と一つになっていく。しかしそこに不安はなかった。元々の姿に戻るだけなのだから。

 

 衝撃波とともに視界が開ける。『俺たち』は変わらず宙に浮いていた。闇の魔力(消費期限切れ)の化身として。

 

『継承者ぶっ殺』

 

 急降下。バジリスクに体当たりせんと迫る。しかし蛇のようにバジリスクは避けてしまった。何だよ蛇のように避けるって。バジリスクは蛇だろ。勢い余って床に激突。

 

「正体を現したな! 化け物め!」

 

 リドルは魔法で剣を操作し、ハリーと切り結んでいる。しかしハリーの輝く白銀の刃で、面白いようにスパスパと剣は両断されていた。何でだろうか。お前本当にグリフィンドール生かァ? アレは伝説のグリフィンドールの剣だぞ。なるほど、そういうことか。

 

 ……先程から俺とミカエラの思考が統合されているようだ。ノイズが混じって戦いに集中できない。うるせえなァ! コッチはキチガイの戯言を直接垂れ流しだぞ! キチガイって誰? ……お前もう黙れ。

 

 このままでは何も始まらないので、とりあえずミカエラパワーをバジリスクに向かってぶっ放す。……なァ。バジリスクの脇腹が抉れた。強い。おいちょっと待て、ミカエラパワーって何だ? …………無視すんなよ!

 

「バジリスクっ!」

 

 リドルがハリーから目を逸らす。そこをハリーの袈裟斬りが決まった。痛そう。ざまァねェな。

 

 バジリスクが最後の抵抗と言わんばかりに暴れる。俺たちは自在に変形して攻撃をいなし、魔力の塊を叩き込んだ。

 

「キシャァ――――ッ!!」

 

 断末魔。バジリスクの巨躯が爆ぜる。強敵だった。汚ねェ花火だ。バジリスクの牙が一本、ハリーの足元に転がる。

 

「ハァハァ、リドル……」

「中々やるじゃないか、ポッター……」

 

 向こうでは腕を抑え、苦痛に顔を歪めるリドルと、息も絶え絶えなハリーが睨み合っていた。牙を拾ったハリーがフラフラと、日記帳の方へ歩く。ハリーの意図に気づいたリドルが、顔を真っ青にして叫んだ。

 

「やめろ! ポッター!」

 

 血塗られた牙が、ドス黒い日記帳に突き刺さった。

 

 

 

 その後、リドルの日記帳が完全破壊されたのを見届けた『俺たち』は気絶した。次に目を覚ましたのはマダム・ポンフリーの医務室。いつの間にか合体は解除されており、直ぐ側の空中で寝顔を見せるミカエラの姿があった。

 

 ……それにしても、あの力、あの全能感。癖になりそうだ。

 

「こんばんはジューダス、体調はどうじゃ?」

 

 音もなく現れるダンブルドア校長。今ので俺の寿命が一分は縮んだと思う。

 

「スーパーウルトラハイパーミラクル元気です」

「それは良かった。後でミス・フォーリーとミスター・クリービーには真っ先に顔を見せてあげなさい。毎日お見舞いに来ておったからのう」

「レイン・クリービーが!? いい後輩を持ったなあ〜」

 

 ニッコニコでダンブルドアは俺へのお供物を眺めている。メッセージカードの話題で、俺の雄鶏の鳴き真似の方が身の心配よりも人気なのは何なんだ。

 

「先生、一つ、いや二つ、やっぱり三つぐらいお尋ねしてもよろしいですか?」

「いくつでも構わんよ」

「ロックハート先生のことなんですが……」

「あのペテン師がどうかしたって?」

 

 ミカエラも起きたらしい。寝ぼけ眼を擦っている。

 

「俺、リドルの前に様子のおかしいロックハート先生と戦ったんですよ」

「ロックハートはいつも様子がおかしいだろ」

「これがその時の傷です」

 

 俺は腹パンされた所を見せようと、病衣を捲る。だがお腹には痣一つなかった。おのれマダム・ポンフリー! 名医過ぎる!

 

「ギルデロイはほとんどの記憶を失って、聖マンゴ魔法疾患傷害病院に入院したのじゃ」

 

 ミカエラがポンと手を打った。

 

「アアそういうことか、ロックハートは分霊――「その可能性も考えたが、痕跡は全く見つからなんだ」

「となると、一気に迷宮入りだなァ」

 

 俺の頭越しによくわからない会話を繰り広げないで欲しい。寂しいだろうが。

 

 ダンブルドアはアイスブルーの瞳で俺を見据えた。俺の碧眼とは微妙に色が違う。

 

「早速答えられなくてすまないのう。ギルデロイが記憶喪失になった今、真実を知る方法は限られておるのじゃ」

「まあ仕方ないですよ。ハリーとロンとジニーはどうなったのですか?」

「三人とも無事じゃ。今も学期末パーティーを楽しんでおるよ」

 

 俺は布団を跳ね除け、ベッドから飛び上がる。大慌てでスリッパを突っかけ、そして盛大にすっ転んだ。

 

「おいおい、どうしたアホのジューダス」

「年に一回の学期末パーティーだよ!? 況や参加せんや!」

 

 ダンブルドアが苦笑交じりに口を開く。

 

「既にポピーの許可は取っておる。存分に楽しんできなさい」

「ありがとうございます先生! 行くよ、ミカエラ!」

 

 俺はミカエラを伴い、ゆっくりと歩き出した。病衣の襟を整え、寝癖を撫でつけながら――

 

「バカ、その格好のまま行く気か?」

 

 ――流れるように回れ右をした。




秘密の部屋編、完!
読んでくれる人がいるから、ここまでこれました……!
ありがとうございました

〜遅筆先生の次回作をご期待ください〜

嘘です
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