ミカドが世界を制する話   作:主任大好き

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第3レース 調教

 よぉ、ミカだぜ。年を跨ぎついに1月。今日も数ヶ月前から始まった追い運動なるものをやってるやで。ただ、最近なんかほかの馬も割と本気で追ってくるから割と怖いんやが……。なんだ、俺が何かしたか?

 牧場に隣接した割と広めの草地を縦横無尽に逃げ回る。だってすんげぇ追いかけてくるんよ。なんか、普段良くしてくれるほかの馬もこの時間は割と本気なんだ。ちょっとやめて欲しい。俺はまだ幼気な1歳馬よ!?ほらぁ!見張ってる八代のおっちゃんとか、馬に乗って追っかけてくる益城のイケメン野郎とか、見に来てた牧場主の山鹿夫妻でさえドン引きじゃねえか!!

 ……前世の経験上辛いことから逃げるのは得意だけど物理的な話じゃないんよねぇ……。まあ、逃げ切れてないからここに馬としているんやが……。(目そらし)

 

ヒヒィィィン(負けるかァァ)!!

 

ブルルル(マジで来んなよ)!!

 

 山鹿ァ!八代ォ!助けてくれよォ!!!

 

 

第3レース     調教

 

 

「……なぁ、八代」

「……はい、なんでしょうか」

 

 目の前で行われている追い運動を見て唖然としていた牧場主は少し間を置いて口を開いた。まあ、言わんとしていることは分かる。

 地方競馬ではあったが、第一線を走っていた馬たちだ。レースに勝った馬ももちろんいる。この牧場で数年隠居生活していたとはいえ、まだ動ける方だろう。

 だが、途中から追い運動ではなく、鬼ごっこの様相を呈し始めた。

 どうにも、負けず嫌いの激しい馬がミカに追いつこうとスピードを上げ始めたことが発端となったようで、それを悟ったミカがびっくりして逃げ始めた。それだけなら苦笑いを浮かべながらペースを落とさせるように指示を出すだけだった。

 ただ、追いつけない。それも十数分もだ。なのにミカには疲れが見えない。あまりにも近づくこともできないからか、追う側の先輩風邪吹かせていた馬たちが意地張ったように代わる代わる追いかけ回しているが、それでも先に疲労で潰れそうなのはミカ以外の馬たちの方だった。

 

「強いな。スタミナも十二分にあるし、賢い。……いや、賢すぎる」

「……まぁ、気分転換以来ずっと日に1回以上は大観峰に行ってますからね。嫌でもスタミナは付くでしょうよ」

「もしかしたら、中央に移籍させることもありだな」

「……そんなにですか?」

「とりあえずは予定通り荒尾競馬でデビューさせるが、戦績次第では中央移籍も有り得るって話だ。中央移籍すれば確実に話題になるし、GIも夢じゃなさそうだ」

「確実に、ですか?」

 

 八代は聞き返して山鹿に目線を移した。その男は自信満々な雰囲気を出していた。

 

「まあね。理由は毛色だ。ありゃあ珍しい。尾花栃栗毛だ」

「……なるほど。サッカーボーイ以来の毛色。しかも目付きも悪い訳じゃない……か」

 

 牧場主の山鹿の妻は口を開いた。

 

「それに──」

 

 八代はミカから目を離さない山鹿夫妻に倣うように追い運動(全力鬼ごっこver.)をしているミカへと視線を戻す。

 

「──勝ちますよ」

 

 やはり自信満々なその回答。しかし、不思議とそう思わせる力がミカの走りにはあった。

 

「楽しみですね。来年のデビュー」

「ああ、予想を超えてくるだろうな、あいつは」

「ただ、心配があるとしたら成長がな」

 

 それでも、不安はあった。母馬であるアソノキサキの体質を受け継いだことである。どうにも体の成長が、ほかの馬と比べて遅かったのである。

 ミカには負けず嫌いの気がある。まだ1年と少し先のことではあるが、レースの最中に無理に体を追い込まないか心配させる節がある。ちょうど今のように。

 

「まあ、その時はその時だ。俺たちが全力で支えてやろう」

 

 山鹿夫妻はどこまでも、自分たちが育てているミカの勝利を信じてやまなかった。

 

 

⿴⿻⿸

 

 

 さて、前日に1歳になってから最後の追い運動を終えて本格的な調教へと入る。今日からそのための最初の1歩として馴致が行われることになった。内容としては、ハミや鞍を取り付けて慣れさせるまでが今日のタスク。

 先日決定したことらしいが、俺の調教具合をを今後益城のように、新しい人材が入って来ることを前提として、教育用の映像やブログやホームページに掲載されるための用途として残していくことに決定したらしい。

 まあ、そんなわけで目の前の八代と益城は馴致を行うための段取りやタスクの確認をしている。そんな確認することなんてないでしょうよ。ハミを口の口角のところに入れる。鞍をつける。終わり!でいいじゃないか。まあ、益城のイケメン兄ちゃんが初めてやるみたいだからな。仕事を覚える意味でもちょっと大人しくしてやるか。

 

「おーう、お前らおはようさん。今日から本格的に調教始まるからよろしくな」

「ミカドもよろしくね!」

 

 おうおう、今日もよろしく。あれ、珍しく山鹿夫妻もいるねぇ。

 あ、そうそう。わいの競走馬としての名前決まりましたわ。ミナミノミカドって言います。ミナミノは九州のことやね。うちの牧場連中はミカドって言ってる。

 名前の由来は、俺の父馬の名前がとある皇帝から取られた名前らしく、2つ名もそれが由来した『皇帝』らしい。因みに俺の腹違いの兄貴には帝王もいるらしい。

 ほんで、俺の名前が決まったってわけ。

 略し方?山鹿とかと一緒でミカドでもいいし、同じ文字が3つあるんだからミミミでもいいな。いや、略すならもっと簡単にmmmでもいいかもしれんな!

 

「ごめんな、じゃあ先にハミつけようか」

 

 益城が笑いながら話しかけてくる。

 おけ。口を開きゃええんか?ほい。

 

「……これ、中に人入ってません?」

「……実は俺も思ってたんだよなぁ」

「……これ映像として役立つかな?」

 

 そんなわけないだろ!俺はどっからどう見ても馬だろ!そんな、ラノベみたいに『産ま(・・)れたら()だった件』、みたいな駄作臭するラノベみたいなことなんてある訳ないだろ!(すっとぼけ)

 

「……素直なのはいいことだな」

「自分に言い聞かせてません?」

「……着いちゃいました」

「着いちゃったか……」

 

 早くしろよなぁ、まったく。そんなコント(・・・)はまた今度(・・)ってな。俺はスルスルと馬房から出る。

 

ブルルルフフン(早くつけろよなぁ。てか、笑え)

 

 そう言って、鞍の下に敷くマットみたいなものハミで抑えられて窮屈になった口で器用に咥えた。そこから首を後ろにしてプペッと放す。するとどうでしょう。ちょっと斜めになったが割かしいい感じでベストポジション付近に広がった。

 

「……もしかして急かされてる?」

「分かった、分かった。早く着けて大観峰行こうな」

「もう何もしても驚かないぞ」

 

 その後、益城が鞍を乗せて固定するためにベルトを巻いてOK!よし、大観峰行くか。ということでお前ら準備できてるよな!?

 何?本来なら慣れさせるために馬房の中を歩かせるだァ?今から大観峰行くかんだから何かあったらそんときよろしくぅ!!(脱兎&脱柵)

 

「何やってんだ、ミカァ!もう逃げるなって言わないんだから作ったドアから出ろよ!」

 

 それじゃおもし……面白くないだろ!それと、まだ慣れてねえから、幼名か普通の名前かどっちかにしてくれよな!分かんなくなって俺もっと脱作しちゃうけどいいのか!?

 

「うーん、賢いのか賢くないのか……」

 

 賢いに決まってるだろ!なぜなら俺は賢いからなぁ!(アホ)




思ってたよりも書くペースが早い……。なんで?(知るか)

山鹿(やまが)夫妻
牧場主の夫婦。先代時代は乗馬のみの牧場

八代(やつしろ)(結婚済み)
世話担当。最近は大観峰と牧場の往復で痩せ始めた。結婚しており妻から若い頃の体型に早く戻ってとせっつかれている。

益城(ましき)
イケメンの見習い。彼女なし。人がいい。今はミカドに夢中
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