【TS】無職転生 ルディ子 ss   作:みいけ

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前話(曇らせハードモード1 閲覧注意)の時系列で書いていますが、一応読んでいなくても大丈夫です。
前回がちょっとアレだったので、今回はルディ子曇らせは無しです。

エリス→エリオット


1.「初恋泥棒@狼の足爪亭」

狼の足爪亭。

リカリスの街で鮮烈な冒険者デビューを決めた後、

俺たちは初心者用の宿屋を訪れていた。

理由は単純、とにかく安い。

これからコンスタンスに稼げる額がどのくらいなのかをまだ掴めていないので、ロキシーの実家からもらった路銀(おこづかい)はなるべく温存させる方向でいく。

 

だと言うのに、早速エリオットが無駄遣いをした。

先程、俺に着せるフーデッドローブ(獣族っぽい三角耳付き)を値切りもせずに買いやがったのだ。

まあ、見た目美少女な俺に変な虫がつかないようにしたかったんだろうと予想はつくので、その好意には感謝しておくとしよう。

 

ヒルダお母さん直伝のニャんニャん攻撃をしたら、

顔を真っ赤にするところが見れたしな。 

やってみたら分かったのだが、

女の武器で童貞男子をからかうのは意外と楽しい。

いまなら生意気に挑発してくるギャルとかの気持ちがわかる。

 

「パーティで三人。とりあえず、三日分お願いします」

「あいよ」

 

愛想の悪い店員だな。

あんまりやる気のなさそうな宿屋のオヤジにも、

つい猫可愛がりしたくなるような愛想を振りまいておいた方が良いのだろうか。

それで宿代が安くなるなら検討の余地は大いにあるが……

いや、やめた。

そういうのは使い所が大事なのだ。

 

生前、クラスで常にぶりっ子している女子が妙に苦手だった、というか冷めた目でしか見れなかったのを覚えている。

まあ、俺は相手にされていなかった訳だが……

相手にされていた男子も、

その子がそこそこ可愛くても逆に引いていたはずだ。

 

客観的な視点というのは大事だと思う。

あんまりやりすぎると、

エリオットに嫌われてしまいかねない。

恋愛的な意味で好かれたいかと言えば、

俺も心が男のままだしそうは思わないのだが、

旅を共にする仲間として距離を置かれるような愚は犯すまい。

自重が大事だよ。

 

どのくらい滞在することになるかは分からないので、

とりあえず3日分の料金を支払い、俺たちは宿屋の2階へと上がった。

 

---

 

部屋に入り、とりあえず被っていたフードを頭から降ろす。

3つ並んだ毛皮のベッドにそれぞれ座ると、昼間の疲れを実感する。

演技とは言え、あんな大勢の前で啖呵を切るのは緊張したな。

まあ、想定していた通りの掴みはできたので一安心だ。

安心したら、なんだか腹が減ったな。

 

「腹が減ったな」

 

エリオットも同意見なようだし、早速夕食にでも……

と考えた所で、受付で大切なやり取りが抜けていた事に気が付く。

飯をどうするのか聞かれていない。

まあ、3人パーティで泊まるなら自動で付いてくるシステムらしいのだが、こういうのは確認しとかないと不安になる。

 

「ちょっと下で聞いてきます。2人は休んでてください」

「俺もついて行くぞ、変なのに絡まれたら嫌だろ?」

「別に宿屋の中なんだから大丈夫ですよ。

待ってる間に、武器の手入れでもしててください」

「……」

 

んもう、エリオットったら過保護なんだから。

街に来てすぐ、人攫いに遭ったことを気にしてるんだろうか。

俺としては、結果として無事だったため、

エグいドッキリを受けた、ぐらいの出来事として消化できているのだが。

なんだかんだ、ルイジェルドの索敵能力と殲滅力は分かっていたし。

 

まあいい、すぐに聞いて来よう。

 

---

 

「な、なあ。君も新人なのかい?」

 

なんて、思っていたら。

新人冒険者と思しき男の子から、声をかけられた。

額に角があって、白髪で、

百歩譲ったら美男子と言えなくもない感じの少年だ。

連れの2人が腕四本のゴツイ系と嘴を持った鳥頭(悪口じゃないよ!)系なので、ポケットなモンスターの世界で序盤に仲間になりそうな感じだ。

 

ノーマル、かくとう、ひこうだな。

全員、運が悪ければオジサンを頼らないと忘れられない技ばっか覚えさせられそうだ。や、変な意味じゃないよ?

 

「お、俺たちもそうなんだ。どうだい、一緒に食事でも」

 

なんだなんだ、ナンパか?

ルディちゃんの美貌にやられちゃったのか。

かーっ、かわいそうに、

あたしには護ってくれる男が既に2人もいるというのに。

まいったなぁ、うふふ。

 

まあ、受付のオヤジに確認したところ、飯は指定された時間の範囲で好きに食って良いらしいので、淡い初恋の思い出に付き合ってやるのも面白そうなのだが、何せこれから決めなきゃならないことは沢山ある。

 

正直お遊びのニュービーたちに付き合っている暇はない。

まあ、ニュービーってんなら俺たちもそうだけども。

断る方向でいった方が良いだろう。

 

「えぇと、はじめまして。

お誘いはとっても嬉しいんですけど、

生憎と連れを待たせていますので。

またの機会に、誘ってくれると嬉しいです」

 

微笑むように、ルーディアスマイル。

俺はノーと言える日本人だが、

わざわざ角の立つ断り方をするほどでもない。

リップサービスくらいはしといてやろう。

またの機会なんて100%無いが。

 

ていうか、飯はもう食べれる時間になっていたから、

1人で降りずに2人とも連れてくれば良かったな。

そうすればナンパもなかったろうに、

今日の俺はちょっと段取りが悪い。

反省しよう。

 

そう思って、もう話は終わったとみて足早に階段へ向かおうとすると、ぐっと手首を掴まれた。

思いのほか強い力でびっくりして立ち止まると、さっきのノーマルタイプの少年だった。

なんだよ、こっちはもう行きたいんだが。

 

「つ、連れの子たちも一緒にどうだい?

なんなら、誘ったのはこっちだし、奢るよ」

 

連れの子たちて。ウチにいるのは、

手懐けるのが大変な聞かん坊エリオ子ちゃんと、

ムキムキマッチョなスペルド戦士のルイジェル子ちゃんなんだけど、良いんだろうか。

多分、俺たちが2階へ上がった後に宿屋に来たものだから、

俺の連れも女の子だと思い込んでるんだろう。

 

それに奢るってお前、宿代をか?

そりゃ本当に奢ってくれるなら一考の余地もあるが、

多分彼が言ってるのは飯代とかのことだ。

俺を引き留めようと、咄嗟に出た言葉っぽいな。

飯代を払う必要がないのは、同じく3人パーティの彼らなら分かるだろうに。

 

「……いえ。

連れは2人とも男ですし、飯代は宿代に含まれてますから、

結構ですよ。それでは」

 

気持ちちょっと突き放す態度で、俺は必要なことだけを告げて掴まれた手をやんわりと外した。

 

やれやれ、冒険だけじゃなくてそっちの方もニュービーか。

ま、誰にでも最初はあらぁな。

俺もそっち側のまま一生を終えたことがあるから気持ちは分かる。

今後のご活躍をお祈りしますってなもんだ。

 

さて、2人を呼びに……。

 

「なんだよ、ちょっとくらい話してくれてもいいだろ!」

 

ちょっとイラついたような声と共に、

俺の首がグッとつっかえたように引っ張られた。

多分、無防備だったフードを引っ掴まれたのだ。

が、咄嗟に立ち止まれる訳もなく、俺はそのまま一歩進もうとしてしまい、引っ張り合う力に耐えられなかったフードがビッと嫌な音を立てた。

 

「あっ、ご、ごめん、服を破るつもりは……」

 

やっぱり破れちゃってたか。

せっかくエリオットが俺のために買ってくれたのに……。

あとで縫い直そう。

ちっ、粋がったナンパ小僧が、手間取らせやがって。

 

そう思い、振り返りざまにキッとひと睨みしてやると、

流石にしつこかった少年はすごすごと引いていく様子だった。

最初からそうしてろよな、まったくもう。

 

さて、気を取り直して今度こそ2階に────と思った所で。

俺は、階段から今まさに降りて来ようとしていた2人と目線が合った。

言うまでもなく、エリオットとルイジェルドだった。

 

「あ、遅くなってすみませ────」

「ごふううぅぅ!!?」

 

一瞬だった。

俺が言い終わる前に、エリオットは結構な高さのある位置から階段を飛び降りて、正義のバイク乗り宜しくライダーキックを角の少年にかました。

顔面を強蹴され、ぶっ飛ばされながら倒される少年。

ドタドタダダン!

畳み掛けるような鈍い音と振動が、宿屋の1階に響く。

 

鼻を押さえながら蹲る少年と、そんな彼に寄り添う2人。

勝負あったなと思う前に、

しかし、肩を怒らせるエリオットは止まらなかった。

エリオットは怒っていた。エリ(オコ)だ!

 

「お前! 誰の! 女に! 手を出してんだ!!」

 

そう叫びながら、エリオットはノーマルタイプに気合いパンチを、止めに入ったかくとうタイプにはスカイアッパーを、何が起こっているのかわからないひこうタイプにはとびひざげりを食らわせていた。

タイプ相性なんて関係ない。

全員がいちげきひっさつ! で無力化されていた。

レベル差がダンチだ。力こそパワーだ。ヤー!

 

エリオットのあまりの剣幕に止めあぐねていると、

彼は何を思ったか。

すっかり伸びている最初の少年にツカツカと近寄ると、

その頭をサッカーボールみたいに蹴り上げた。

その衝撃で目を覚まして、

体を丸めて身を守ろうとする少年。

 

しかしエリオットはそんな少年の行動は意に介さず、

丸まろうとする少年の片足を掴んで持ち上げて、

無理やり仰向けにした。

 

「一生後悔しろ! 踏みつぶしてやる!」

 

ナニを?何がナニかは怖くて聞けない。

エリオットは、そんな恐ろしいことを、恐ろしい形相で言った。

俺は、今はもう付いていないはずの二つのタマがヒュンッてなるのを確かに感じた。

女でもタマヒュンがあるというのは、本当らしい。

 

っていけない、これ以上はいけない。

勘弁してあげてアナタ!

 

「エリオット、待って!」

 

無我夢中で、怒り散らかすエリオットに後ろからしがみ付く。

というか本当に力が強い。

俺が初対面でマウントを取られてぶん殴られた時には、

これ程の力じゃなかった筈だ。

教え子の成長は喜びたいけど、

これはなんだか、ちょっと、フクザツだ。

 

「抑えて! それ以上はダメ! ハウス!」

「なんでだ! ルーディア、邪魔するな!」

「私は平気だから! 何もされてないから!

だから許してあげて! それは流石にかわいそう!」

 

俺が必死に言い連ねることでエリオットはなんとか動きを止めた。

拘束を解くと、「俺の女に免じて許してやる」みたいな態度でルイジェルドの方へと歩いて行った。

女冥利に尽きることだが、限度ってもんがある。

エリオットがちょっとこわい。

 

ルイジェルドはいつのまにか酒場の椅子に座って、

何か微笑ましいものを見る目で見物していた。

 

「ルイジェルドさんも! 次からは止めてください!」

「ん? 子供の喧嘩だろう?」

「子供の喧嘩を止めるのも保護者の仕事です!」

 

 明らかに実力が違うじゃないですか。

 

---

 

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ、ありがとう、助かったよ……」

 

一番重症な角の少年に治癒魔術を掛けてやりながら、

助け起こす。

鼻が折れて、前歯も何本か逝っちゃってる。

こんなに手ひどくやられるとは、可哀想に。

 

「……その、さっきは悪かったよ。

嫌がってるのに引き留めたりして。

服も……、弁償するよ」

 

そう、しおらしくなって謝る姿に、

トゥンクと胸の奥がキュンとした。

これが母性か?

 

「いえ、こっちも連れがやり過ぎてしまったので、

おあいこです。服は縫えば済みますから。

……痛かったですよね? ごめんなさい」

 

そう謝ると、3人は慌てたようにどよめいて、

口々に「いやいや僕たちが」と言ってくれた。

 

そもそも、俺がエリオットの忠告を無視して一人で行動しなければナンパもなかった筈なので、割と本格的に俺のせいな気もするが……まあ、負い目を感じてくれているなら、

そういうことにしておこうか。美少女って得だな。

ま、彼らも無理強いは碌なことにならないと勉強してくれただろう。

 

「それじゃあ、私はこれで。

せっかく治したので、

あんまり怪我のないようにしてくださいね?」

「あ、ああ……」

 

去り際にニコリとルーディアスマイル。

すると彼らは一瞬にして惚けた顔になって頬を赤く染め、

だらしなく口を半開きにして手を振ってくれた。

 

ふふん、これは盗んじゃったかな? 彼らの初恋。

と思ったら、エリオットが仁王立ちで殺気を撒き散らしていたので、淡い初恋に染まっていた顔面は即座に引き攣った青色に変わった。

 

初恋は一瞬でトラウマになってしまったようだった。

なんかすまん。

 

見せつけるように肩を抱いてきたエリオットに連れられて、俺は食堂に向かった。

 

---

 

でも、格安宿屋の食堂だからそこまで広くないんだよな。

後から来た3人組は、

怯えるように隅っこで縮こまって飯を食っていた。

……本当にすまん。

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