ZELDEN RINK ─GRACE OF FRACTURED MARIKA─   作:屋根裏のナナチ

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王を待つ礼拝堂⑵

つい先程くぐり抜けたアーチが霧で閉ざされた。

景色も見通せない程に濃い黄金のカーテンは、招かれざる客を閉じ込めるために拵えられたものだろう。背中を押しつけてみるも、案の定霧の先へ進むことは叶わなかった。

 

そして、それを律儀に待ってくれるほど、檻に放たれた刺客は甘くない。

後ずさったのを好機と判断したのか、【接ぎ木の貴公子】はその巨体に似合わない速度で肉薄する。

 

接がれた四肢の膂力を遺憾なく発揮した前進から間髪入れずに薙ぎ払いへと派生。凡百の褪せ人であれば反応すら叶わず剣の錆となるのが関の山。よしんば回避に成功したとして、追撃に沈むのがせいぜいだろう。

 

然し、対するは『息吹の勇者』。100年に亘る回生の眠りによって力と記憶を失ったとしても、その身体には刻まれているのだ。

────これ以上ない逆境に立たされようと、活路を開いた足跡が。

 

 

勇者は脊髄から伝わる直感に身を委ね、凶刃が身体に走る寸前で地を蹴った。

剣は空に跳んだ獲物の下を通り、貴公子は顔を歪めた。

 

その瞬間、ぐぉんと奇妙な音が勇者の耳を打つ。

風にたなびく白霧も、再び剣を構えんとする敵の動きも、自分一人を除いた一切が停滞する。まるで世界を置き去りにしてしまったように、勇者を包む時の流れが何倍にも引き伸ばされた。

 

彼は直感に従っただけであり、この現象の所以を知る由もない。が、間違いなくチャンスであることだけは確信できた。そしてこの長い一瞬がそう保つものではないことも。

 

わずか一歩、飛び込みながら距離を詰め、がら空きの──恐らく本体に手にした両刃剣を振るう。

一、二、三────輝く軌跡を残しながら数えて七撃を流れるように叩き込んだところでやっと世界が勇者に追いついた。

 

先ほどまで目の前にいた獲物が刹那の間に眼前へ、そして瞬く間に放たれた連撃が自分を切り裂いたことに目を白黒させながら、接ぎ木の貴公子は大きく体勢を崩した。

切創は寸分違わず同じ箇所に刻まれている。貴公子の体幹を削るには、十分過ぎるダメージだった。

 

その隙を見逃す勇者ではない。

ダメ押しとばかりに七つの裂傷が重なった中心に剣を突き立て、鋭い声と同時に納めた肉鞘から対魔の剣を抜刀。赤血が剣を染め、貴公子の口に苦悶が浮かんだ。

 

しかし、貴公子は止まらない。己の矜持か、他に思惑があるのか。

……いや、そもそもまともな思考など、持ち合わせてはいないのだろう。数多の肉体を贄に紡いだ身体に宿ろうものなど、ろくなモノではない。

 

交差させた二つの剣に黄金が宿る。聖属性を武器に付与する戦技『黄金の剣技』だ。次いでおよそ人の声帯が出せる領域を超えた咆哮で勇者を引きはがす。

 

至近距離にいたはずが勇者はまたもそれを避け、攻撃することなく距離をとった。

 

蒼い瞳は見据えられたまま、勇者は動かない。

敵を前にして変わらない獲物の顔に、貴公子は牙を鳴らした。

 

 

────不遜であろう、黄金の一族を前にして。

 

 

それが、彼に残された最後の理性だった。

剣を振り上げ、大上段に掲げる。見るからに大技だが、それでも勇者は大した動きを見せない。時折石版を左手に持ちながら、何かを確認するように小さな範囲を右往左往するだけだ。

 

鬱憤のままに貴公子は剣と共に高速回転。眼前の褪せ人を切り刻まんと迫った。

 

が、その動きはあまりにも半端な状態で固まった。今度は貴公子だけが世界に取り残されたように、バランスを崩しそうな姿勢のままで動くことができない。

原因は明白だ。どこからともなく自分を戒めた黄金の鎖だろう。

 

視界の先には眼の刻印が入った石版をかざす褪せ人がいる。

貴公子の意識が闇に葬られるまで、その顔は無表情ながら──どこか、哀愁を帯びていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利。されど、顔は晴れない。

白い霞となって消えた貴公子の後に残された直剣と大盾を拾い上げ、霧の晴れたアーチをくぐる。

 

勇者がそれを思い出したのは偶然だった。

『止めたい』と心の底から思った直後、音を鳴らした石版の表面に黄色い錠前の記号が現れ、その効果を示すように目の前の貴公子を拘束したのだ。

 

端正な顔に、醜悪な身体。

何を求めて貴公子がそうまでしたかを勇者は知らない。

しかし一つだけ、確信めいて言えることがある。

 

 

────これは繰り返すべきではないことだ、と。

 

 




【この後】
不幸にも崖の崩落に巻き込まれてガメオベラ寸前で喘いでいるところをメリナとトレントに見つけられます。
この先、視線のやりどころに困るメリナがあるぞ。


【本日の行動】
ジャスト回避(バク宙)→ラッシュ→致命の一撃→ビタロック→〆

褪せ人とリンク(BotW本編)のいいとこ取り。
ラッシュ中にジャンプ攻撃が何度かあったせいか、体幹削りも可。闇霊で見たら絶対相手にしたくない。
厄災の黙示録版リンクはシーカーアイテムを筆頭に各種能力が強すぎるので当SSでは現在未実装です。


【入手武器】
・儀仗の直剣
・獣紋の黄金盾

『タン タララ ラ~~ン!』
ELDEN RING本編準拠。耐久力の概念はありません。


【シーカーストーン解放機能】
・ビタロック+

本編における機能は諸々詰めてありますが、ロックがかけられています。
狭間の地に試練の祠はないため、一定条件をクリアで解放できます。


【さいごに】
ジャスト回避初めて見た時クロックアップを思い出しました。
後エルデンリングSSもっと増えなさい。
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