燃え上がる業火の中、真紅の鋼が群集を守るように立ち上がる。
見上げるほどの鋼の背中に、人々は微かな希望を抱いていた。
傷つき剥がれ落ちた塗装がその惨事を物語る。
「はぁ、はぁ、はぁ、、、」
満身創痍のなか、倒壊する建物を薙ぎ倒し炎の中から無数の巨大な顔が姿を現した。
顔に手足の付いた一頭身の鋼の巨人。鋼で作られた無数の巨人と対峙する真紅の背中もまた、奴らと同じ顔だけの歪な鋼の巨人である。
真紅の巨人の内部で操縦桿を握る男は、自分を鼓舞するように巨人達に向かって叫びを上げた。
「来やがれ、、、顔だけども!!」
その雄叫びに応えるように、一斉に鋼の巨人達は男が乗る真紅の巨人に向かって迫り来る。
迎え撃つ真紅の巨人は、1体の敵巨人の顔に拳を叩き込む。
その一撃は正に瞬殺。風穴が開き、崩れ落ちる機体は鉄塊と化す。
その光景を目の当たりににした敵巨人達は動揺を隠せずにいた。不利な状況下にて鬼気迫る勢いで立ち向かってくる。彼らにとって男と真紅の巨人は恐怖でしかなかった。
「ざまーみろ、、、」
疲弊した男が悦に入る刹那、男の体を衝撃が巡る。無数の敵の拳が真紅の巨人を襲い、男はその衝撃に耐えるように下唇を噛み締めた。
口元から滴る血を親指で拭った男は、真紅の巨人の拳を握らせて再び、敵巨人に向かって拳を振るう。
何体倒したのだろうか。幾度となく現れる敵巨人に対して男はそれでも尚、諦めようとはしなかった。真紅の巨人の左腕は砕け散り、関節は不気味な金切音を立てていた。
男は真紅の巨人が限界だと感じていた。まるで真紅の巨人に話しかけるように男は呟く。
「すまねぇ〜なぁ・・・。俺は、お前の力を引き出すことが出来ないみたいだ」
絶望とも言えるその状況に人々は涙を流し祈りを捧げていた。男もまた、真紅の巨人の中で一枚の写真を見つめている。
男は一度、目をつぶる。
記憶の中、過去を巡り、未来を思い--------------
自分の人生に後悔はない。
それを再確認した男は、覚悟を決め再び目を開く。
「螺旋力、、、全開放、、、」
男は静かに呟いた。
その瞬間、まるで、男の「人を守りたい熱い意志」に呼応するかのように真紅の兵器の機体はより赤く熱を持つ。
「あとは、任せたぜ。クソガキ共!!」
敵巨人の拳が真紅の巨人の体を突き破る。
崩れるように片膝を着く真紅の巨人。
それを皮切りに敵巨人の槍が機体を貫き、無数の剣が頭部を貫く。
真紅の巨人の絶命を確認した敵巨人はその武器を抜き取ろうと力を込める。
だが武器は動かず、その代わりに真紅の巨人の装甲は更に赤く熱を帯びていく。
何かに気がついた1体の敵巨人がその場を離れようとするが、真紅の巨人はその敵巨人を抑えつける。
その瞬間、眩い光が辺り一帯を埋め尽くす。
その光は、激しい爆発と共に辺り一帯を灰塵へと化えていた。
その場に残された真紅の巨人の瞳を一筋の雫が流れ落ちる。
空には暗雲が広がり、その戦場を浄化するかのように、雨が絶え間なく降り注ぐ。
雨が降り注ぐ中、真紅の巨人はまるで自分の役目を終えたと悟ったようにその機能を停止させたのだ。