「あっ」
サラの声に、この白金貨の事を理解したと気付いたゴンザレス太郎は小さく呟き最後の実験を行う。
「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動」
心臓が一回大きく鳴るのにはもう慣れた。
そのままウィンドウを操作して、リストから目的の項目を見付けてONに入れる。
使用するのは初めてなので上手くいくか分からないが、多分大丈夫であろうと予測できる理由がゴンザレス太郎の頭の中にはあった。
そして、ゴンザレス太郎はサラに向けて人差し指を立ててまだ終わってないよと左右に振り、魔王子アーサーの結界に向かって歩いていく。
魔王が何かを言い掛けたが、ゴンザレス太郎の視線が魔王子アーサーしか見ていなかったのに気付いて、何を言っても無駄だと思ったのか様子を見ている。
そして、ゴンザレス太郎はそのまま結界を素通りして中へと入っていった。
「えぇ?!」
魔王は口を大きく開けて固まる。
それを気にせずにゴンザレス太郎は意識の無い魔王子アーサーを背負い、魂石を手に取って歩いて結界から出てきてすれ違い様に魔王に魂石を手渡す。
まるでマジシャンの手品の様に結界はそのまま残され、魔王の手には妻の魂石、ゴンザレス太郎の背中には魔王子アーサーが背負われていた。
「はい、魔王子アーサーさんだよ」
ゴンザレス太郎はサラの前に魔王子アーサーを白金貨の上に寝かせ、自分で回復魔法を掛ける。
ゴンザレス太郎自体は回復魔法が得意ではなく、レベルを振って覚えた使えないことはない…という程度の熟練度なのだが現在のゴンザレス太郎のステータスは史上最高。
勿論魔力も異常な高さまで上昇しており、簡単に言うとマッチをすれば核爆発を起こすくらいの影響がでる。
その為、初級の擦り傷の血を止める程度の効果しか無い筈のその回復魔法だが、魔王子アーサーは低下していた体力すらも全快しゆっくりと意識を取り戻し目を開ける。
「に…兄さん…兄さん!」
サラはアーサーに抱きつく。
もう会話も出来ないと考えていた兄がこうして目覚めたのだ。
もはや奇跡の大バーゲンセールみたいな事態の連続にサラは心の緊張が完全に切れた。
ゴンザレス太郎は兄弟の再会に大きく一回頷き起動しているコードの『建物素通り』を解除する。
この世界にゴンザレス太郎を転生させた神は確かに言ったのだ。
『俺達神の間で流行っている異世界ツクールってゲームがあって…』
そう、これが人間界にもあるツクールシリーズのゲームと同じ仕様なら『建物素通り』とは操作で通れない場所を歩ける効果ではないかと考えたのだ。
結果それは的中し、結界はキャラが進入禁止なだけで呼吸も出来てるしこのコードで何もなかったかの様に通れるようになったのだ。
そして、結界内のアーサーの生命力が無くなったので結界は消滅する。
ゴンザレス太郎サラとの約束を全て果たせた事に満足しフーカに向かって親指を立ててサムズアップを行うのであった。