第1話 スキル『パンドラ』
「お父さん、私のユニークスキル何かなぁ~?」
「こらフーカ、もう6歳のレディなんだからもっと女の子らしくしないと駄目だぞ」
明るく綺麗な声を持つ少女が父親と手を繋ぎながら礼拝堂への道を歩く。
父親は優しい顔つきで娘に微笑んでおり、黄色い目がまるで外人のように見える。
少女は父親と違い青い目をしており、おかっぱ頭の髪を揺らしながら楽しそうに歩いている。
「うん、フーカレディだからおしとやかにする~」
「よーし良い娘だぞフーカ」
礼拝堂の列に並び順番を待ってる時に男の子が出てきて、女神様からスキルを2つ授かったと喜んでいた。
人によっては希に2つユニークスキルを授かる者も居て、あの男の子もそうなのだろう。
「次の方どうぞ」
少女は中に入り、片膝を付いて祈りを捧げる。
そして、どよめきが神官達に広がる。
父親は何事かと心配しながら神官と共に出てきた少女のスキル名を聞いた。
「ユニークスキル『パンドラ』ですか?」
「えぇ、聞いたこともないスキルです」
少女は大人達がざわめく意味が分からない、なので父親の説明を待つが父親のユニークスキル『スキミング』をもってしてもその詳細は分からなかった。
仕方なく「大人になったら使える凄いスキルだけど人に話してはいけないスキル」っと教えて家に連れて帰るのだった。
「そう、誰も知らないスキルなのね?」
「あぁ、俺のスキルでも見抜けなかったよ」
赤い目をした母親は旦那の言葉に嘘がないことを理解して娘の寝顔を見つめる。
母親のユニークスキルは『スピリチュアリティ』、質問したことに対する返答が嘘か本当かを見抜くスキルであった為、旦那の言葉を信じるしか無かった。
そして、翌年…
運命の日はやってくる。
「どうもシズクの父です」
「フーカの父です。今日はお招き頂きありがとうございます」
「いえいえ、娘のシズクもフーカちゃんと仲良くなってからガラリと変わって明るくなりましたから、フーカちゃんには本当に感謝してるんですよ」
隣では二人の母親同士も会話をしておりフーカとシズクは仲良く遊んでいる。
そして、悪夢の惨劇が始まった。
突然の襲撃、不意を突かれて殺されるシズクの一家。
フーカの両親は強盗が最後に残していった炸裂魔法からフーカを庇う。
フーカに覆い被さった父親は背中に大火傷を負う、だがフーカの無事を確認し安堵の息を吐く。
しかし、フーカの目の前に炸裂魔法で吹き飛ばされたシズクの変わり果てた姿が写り混む。
声にならない叫び、そして後ろで覆い被さってる父親の息が徐々に弱っていくのを感じた…
母親はフーカからは死角の位置で事切れていた。
絶望の最中、どうすることも出来ないフーカは必死に祈りを捧げた。
「助けて下さい神様!助けて下さい神様!助けて下さい神様!助けて下さい神様!…」
炸裂魔法の炎が家中に広がり、炎の中呼吸が苦しくなってもフーカは祈り続けた。
目の前に見えているシズクが焼かれ、覆い被さっている父親と共に自分も炎に包まれていく。
彼女を庇った両親が彼女を押さえて動けなくしていると言う皮肉な現実…
その時、フーカのユニークスキル『パンドラ』が発動した!
『パンドラ』絶望に包まれた最後の最後に希望を与える幻のユニークスキル。
それはフーカとフーカに触れていた両親の最後の想いが溶け合い一つに成る!
シズクを助ける為に人生をやり直せる『転生タイムリープ』と両親がフーカを守るためにそのユニークスキルをフーカに自身の代わりとして譲渡した。
そして、フーカも焼け死にユニークスキル『転生タイムリープ』によって生まれた瞬間へ時が巻き戻る。
だが、フーカの中に両親の魂はスキルとして入っており、その存在はパラドックス回避の為に転生後の世界には存在しなかった。
捨て子としてフーカは子供の居なかった老夫婦に拾われ、その家で暮らして成長する。
今度こそシズクを助けるために…
「うぁぁぁぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
その日、自室のベットの上で飛び起きたオッドアイのフーカは悪夢を見たのだと理解する。
だが、一体どんな内容だったのかは思い出せ無かった。
1月1日、フーカはこの世界にはシズクが生きてこの日を向かえられたのを理解し、ゴンザレス太郎なら自分を助けてくれると信じてベットから降りる。
「残りの3ヶ月絶対に生き延びてやるわ!」
フーカの意気込みを嘲笑うかのように運命の歯車は回り出す。
真っ白の空間、そこに居る真っ白の存在はそれに気付いた…
「ん?アップデートのお知らせ?」