薄暗い洞窟の中から呻き声のようなものが上がりだした。
「う…ううううう…」
「あ…あがががが…」
奴隷として売られ首輪に繋がれて、鉱山奴隷として働かされている二人の男、かつてシズクの家に強盗として入り一家を惨殺する筈だった二人である。
本来の歴史であれば、二人の借金はシズクの母親の宝石を売り捌いた金で借金を返済するが、泡銭で儲けた二人は再び金に困り、神の操作により任意の相手を襲うように設定を作られていた。
だが、ゴンザレス太郎により二人はシズクの家族を殺すこともできず、本来であれば死んでいるはずのフーカはスキルの力により両親が既におらずフーカ本人も生きていた。
つまり、ゴンザレス太郎だけでなく実はフーカも歴史に干渉していたのだ。
そして、二人の男は神の操作によりフーカを襲う様に行動を起こしたいのだが、鉱山奴隷として鎖で繋がれて逃げることも出来ず、突然の苦しみに悶えていた。
「っど、どうしたんだこいつら?」
「分からん、さっきまで『俺、ここを出たら田舎に帰って家業を継ぐんだ』とか言ってたのに突然…」
あまりにも異様な二人の急変に、鉱山から毒ガスが発生したのではないかと騒ぎになってこの鉱山が暫く閉鎖されたのは言うまでもないだろう。
勿論二人は解放されず、そのまま奴隷として拘束されたままだった為、次第に廃人のようになるのであった…
丁度その頃、町の方では小さなイベントが起こっていた。
「えっ?!」
「あの…ゴンザレス太郎…これ…パパから聞いて…」
それはサラからバレンタインのプレゼントであった。
勿論異世界にそんな文化もなく、チョコの代わりにお菓子を渡しているのだが…
「サラ、抜け駆けとはいい度胸」
「なによフーカは毎日会ってるんでしょ?」
「うぅ言い返せない…」
「ゴンザレス太郎、来月のお返し楽しみにしてるよ」
「っ?!どういうこと?!」
「バレンタインの翌月にホワイトデーと言うお返しをするイベントがあるんだって。」
「タツヤ、私も用意してくる!待ってて!」
命を狙われている筈のフーカは特に何事もなく一人駆けていく。
魔物のヘイトを集めるくらいでここ暫くは特に何事もなく、彼等は幸せな毎日を過ごしているのだった。
「ど、どうなってる?!俺は確かにイベントを起動したぞ?!くそっこうなったら可哀想だがこの手で行くか…」
神はフーカがまだ生きていて、奴隷となった二人が指示通り行動してない事実に苛立っていた。
設定したイベントが何かの不具合で途中で止まることは良く有り、これもその一つだと考えた結果、間接的にだが自ら手を下すことに決めたのだった。
全てはアップデートの為に…
「良く考えたらネタで作ったこの呪いのアイテム、こういう事態にピッタリじゃないか!ハハハッ」
神はまだ知らない、フーカを守る規格外のゴンザレス太郎という存在の事を…