異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第6話 イタチゴッコ

それは気付けばそこにある。

まるで呪いのように…

 

「タツヤ、遂に始まったみたい…」

 

フーカはゴンザレス太郎にそれを見せる。

小さな黒い石であった。

フーカの話では朝起きたら手の中に入っていたとのことだ。

 

呪縛石:対称に取り付き死ぬまで生気を吸い取る呪いのアイテム。取り付かれたら二度と外れず、死んだ後も生気を吸い続け生気が吸えなくなったら爆発して消滅する。

 

「これがその『呪縛石』なんだね」

「うん、以前と違ってHPが高いからまだ平気だけど今も吸い続けられてる…」

 

ゴンザレス太郎の力でも呪縛石は破壊することは出来ず、その石を見詰めてゴンザレス太郎は考える…

力ずくでどうにか出来れば一番楽だったのは言うまでもないからだ。

 

(どうしてフーカは殺されなくてはならないのだろうか?スキルのせい?それとも死ぬはずだったのが生きているから?)

 

考えるが全く原因の分からず悩むゴンザレス太郎を見てフーカは落ち込む…

やはりゴンザレス太郎でも難しいのかと…

 

「どうしよう、やっぱり手首ごと切り落とすしか無いのかな…」

 

フーカの言葉にゴンザレス太郎焦る!

フーカは今のHPなら直ぐに死なないし、片手無くなるけど最悪ラストエリクサーがあるので再生も出来るのでどうとでもなる、やはりゴンザレス太郎が居て良かったと考えるが…

 

「何言ってるの?!簡単な事じゃないか!」

「へっ?」

 

ゴンザレス太郎、前にフーカから聞いた死因で今回の事は予想していたので対策も決定済みだったのだ。

ただ、別の方法が思い付ければそれを試そうと思っていただけである。

 

「とりあえずギルドの店に行こう」

 

ゴンザレス太郎が何を考えているのかは分からないが、自分を助ける簡単な方法があると言う言葉に安心し、感謝と尊敬の念を持ってゴンザレス太郎の腕に抱き付き移動する。

そして、店の前に到着し…

 

「フーカ、今持ってるアイテム全部出して」

「えっ?う、うん…」

 

そしてフーカが着ていた服から次から次へとアイテムが出てくる…

ちょっと引いたゴンザレス太郎だったが、女の子には秘密のポケットがあると言うくらいだから仕方ないのかとそれを全部預かる。

そして、二人は店に入る。

 

「いらっしゃい、おや英雄君じゃないか!今日はどうしたんだい?」

 

もう顔も知れ渡り、ギルド会員カードを提示しなくても大丈夫なのだが二人ともカードを律儀に提示する。

これに笑いながら「あいよ確認したよ」っと陽気に笑う受け付けの前に立って。

 

「すみません、ちょっと協力お願いしますね」

 

っと告げゴンザレス太郎はフーカから一応ギルドカードを預かりスキルを発動する。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

心臓のドクンッと鳴る鼓動をいつものように聞いてゴンザレス太郎は操作する。

フーカも邪魔にならないようにゴンザレス太郎の腕を離れて様子を見守る。

ゴンザレス太郎、どうやらあれから更にコードが増えたらしく、目的のコードが中々見付けられなかったが、やっと見付けて安心しそれを起動する。

 

「よし、それじゃフーカさっき預けたアレを俺は店から出てるから買い取ってもらって」

「わ、分かったわ。」

 

そう告げゴンザレス太郎は店から出て入り口で待つ。

フーカが店員に売るために出したのはあの思い出のリップクリームであった。

 

「おっ!懐かしいねこれ!はいよっ買い取り価格の銀貨4枚だ」

 

フーカはそれを受け取り、これからどうしたらいいのか分からなくて困惑したのだがその時やっと気付く…

 

「えっ?あれっ?呪縛石が…無い!」

「ん?何か落とし物かい?」

「あっいえ、なんでも無いんです。買い取りありがとうございました」

「こちらこそ、あっ彼氏に言っといて。今度またなんかレアな素材売りに来てって」

「わ、分かりました!」

 

フーカ、ゴンザレス太郎の事を正式に彼氏呼ばわりされたのは実は初めてで、凄く嬉しいのに加え、どうやったのか分からないがまた助けられたのに嬉しくなりすぎて声が裏返ってしまった。

だが気にせずにそのままゴンザレス太郎が待っている店の外へ駆け出していく。

 

「んふー少しでも早く彼氏と一緒に居たいのね、可愛いわぁ~声も綺麗だしあの子は美人になるだろうなぁ~」

 

そんな独り言を呟くギルド専用販売店の彼女はまだ独身であった。「ほっとけ!」

 

 

外に飛び出したフーカを見たゴンザレス太郎はスキル操作をして、使用していたコードのスイッチをOFFにする。

そのゴンザレス太郎に飛び付いて抱き付くフーカ。

 

「ありがとうタツヤ、でもどうなってるの?なんで?教えて?」

「まぁまぁとりあえず落ち着けって、はい荷物」

 

そう言ってゴンザレス太郎は預かってたフーカの荷物を返す。

その作業が必要と考えてフーカもゴンザレス太郎が何を行ったのかに辿り着いた。

 

「分かったみたいだね、考えれば簡単な事でしょ?」

「でもこれタツヤが居なかったらやっぱり私、手首切り落とすしか無かったよね?」

「んーまぁなんとかなったから良いじゃん」

「うんっ!」

 

凄く嬉しそうなフーカはやっぱりゴンザレス太郎しか自分を助けられないと確信していた。

今回の様に頭が切れる大好きな彼、世界中の中で二人が出会う確率は天文学的確率と言う言葉を知りはしないのだが、フーカはこの時代のこの時の為に何度死んでも諦めなかったという事を喜んでいた。

 

「いやーしかし内心成功するとは思ってたけど、フーカの荷物も僕の所持品ももしかしたら…って考えていたから全くラッキーだったね」

「そっか、その可能性もあったのよね…」

 

そう、今回ゴンザレス太郎が発動したコードは『アイテム売ったら持ち物全て無くなる』であった。

これがパーティー単位ではなく個人単位での効果で良かったと安堵しているが下手したら範囲内の全ての人に影響を与えていた可能性もあった。

ちなみに衣類が無くなった場合も考えて、店員は女性で店内に他に人が居ない事を考え、入り口で他のお客さんが店内に入らないようにゴンザレス太郎がガードしていたのはフーカには秘密であった。

なんにしても予定通りで良かったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ死んだかなぁ~?ってあれー?!なんで!?僕確かにあのフーカって女の子の手の中に送ったよ!確認したもん!なんで無くなってるの!?」

 

神はかなり混乱していた。

全知全能と言える筈の世界での出来事に、自身の理解が及ばないのである。

そして、神の中にどす黒い感情が産まれる…

 

「なんだか面倒くさくなってきちゃったな…町に住む人全員一緒に壊しちゃうか!」

 

思い付きで行動する神はやはり…面白いかもしれない、という理由だけで町にも色々仕込んでいた。

破壊神も疫病神も神で間違いない訳だ。

 

「うん、じゃあ町ごと全滅して貰っちゃおう!」

 

そして、神は最悪の細菌兵器のスイッチを入れる。

それは一日で町中に広がる伝染病のウィルス兵器。

そして、感染したら一日で確実に死ぬ。

神がオリジナルで組み込んだ最低最悪のそれは遂に動かされた。

 

「いいさ、こんな町一つくらい。僕は神なんだから」

 

神の笑い声が木霊するが、翌日神はまた驚き怒り狂うのを本人はまだ知らない…


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