異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第9話 出会う神とゴンザレス太郎

「ゴンザレス太郎?やっぱり居ないぞそんなやつ」

 

神は鬼の祭壇を破壊してから確認の為に白い空間に戻っていた。

そして、キャラクターのデータベースからゴンザレス太郎の名前を探したが、何度見てもそんな名前のキャラデータは存在しないのである。

それもその筈、名前とは魂に刻まれるもので、転生したゴンザレス太郎と魔王は転生前の名前が登録されているのを神は知らなかったのだ。

 

「まぁいいや、あれから何日か経ってるしそろそろ人口半分くらいになったかな?」

 

神は自分の行った事を想像して快感に身を震わせた。

そして、自らの管理する異世界を覗いて…

 

「はっ?えっ?なんで?どうなってるの?」

 

そこには変わらず平和な町が映し出され、魔王の居る魔物の町も戦闘とは無縁の復興作業の中で友情や恋愛に発展している異文化交流の様子が流れていた。

 

「おかしい、流石におかしすぎる…」

 

神は裏ボス的存在としてこのイベントを仕込み、最後の一匹は弱い神にまで届く力を持つ鬼『鬼神』に進化するイベントを用意した。

絶対に勝てないとは言わないが、人間の寿命で勝てるレベルにまで到達するのは不可能と考えていた。

しかし、調べてみたらその鬼神は既に撃破されている事が分かったのだ。

 

「ゴンザレス太郎か…こいつが僕の世界を滅茶苦茶にしたんだな…」

 

名前しか分からないその人物の事を調べるため神は再び異世界へ足を運ぶ。

神の中では既にゴンザレス太郎も殺す候補に入っていた。

 

「ただじゃ殺さない、じっくり痛め付けて苦しめて…地獄すら生ぬるいと感じる苦痛に沈めて殺してやる!この僕をこんなにコケにしたんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

3月も下旬になりゴンザレス太郎とフーカは今日も冒険者ギルドの販売店へ足を運んでいた。

いい加減サラへのホワイトデーのお返しを考えないと駄目なのだが、魔族と言う文化の違う生き方をして来た彼女が何を欲しがるのか全く検討も付かないからかなり困っていた。

 

「フーカ、こう言うのはどうなのかな?」

「大丈夫、タツヤから貰ったら何でも喜ぶと思う」

 

フーカはサラのために悩むゴンザレス太郎を見て嫉妬していた。

だがフーカは知らない、ゴンザレス太郎がサラにホワイトデーのお返しを渡す時に一緒にフーカにも新しいリップクリームを渡すつもりで用意していることを…

 

「それにしてもあれから何もないね…」

「うん、こんなの初めて…逆になにか怖い」

 

例のフーカの手に現れた呪縛石以降、フーカの身に危機になるような事が何もないのだ。

実は裏で神が様々な方法でフーカを殺そうとしていたのだが、全てがゴンザレス太郎が過去に行った行動の結果未然に防がれ不発に終わっていた。

だから状況を知らない二人には何もないと感じさせていたのだ。

 

「あっこれどうかな?」

 

そう言ってゴンザレス太郎が手に取ったのは一匹の魔族と二人の人間が手を繋いでいる絵であった。

鬼の件以来人間と知性のある魔族の関係は良好になっており、こういう物も増えてきたのだ。

 

「うん!これ凄くいいよ!」

 

チラッと見てフーカもその絵の事がまるで自分達の事を描いているようで気に入ったらしく、今度サラが来たときに渡そうと料金を払い取り置きをお願いするのであった。

 

やっと返す物も決まり、今日はこれからどうしようかと考えながら隣の冒険者ギルドへ移動すると、何やら中が騒がしくなっていた。

どうしたのかと思いながら中へ入ると、冒険者の一人が中腰でこちらを指差し何かを話していた。

その話している相手はゴンザレス太郎やフーカと同じくらいの銀髪の少女であった。

何故か少女はこちらを見て再度確認をして教えてくれた冒険者へ頭を下げてこちらへ走ってきた。

 

「初めまして、貴方がゴンザレス太郎さん?私、ミリーって言います」

 

その言葉に手を繋いでいたフーカの手がピクリと反応した。

もう慣れたものだ、このタイミングでの反応は偽名である。

だがこんな少女が偽名を使って名乗ってくるには訳があるのかもしれない、と一応警戒をしつつ話を聞く。

 

話によるとミリーは西の砂漠を越えてここまでやって来たらしく、その道中で魔物に襲われ同行していた馬車が大破。

残った馬車で護衛の人たちが守ってくれてここまで辿り着いたのだが、壊された馬車の中に母親の形見が乗っていてそれを回収したいとの事だった。

 

「その形見の品物ってのは何?」

 

フーカの質問だ。

 

「ペンダントです。」

 

ピクリ、これも嘘…か…

 

「それでこの町で一番便りになる冒険者と聞いてゴンザレス太郎さんと言われたのですが…」

「誰に聞いたの?」

「名前までは知りませんが道であった人に聞きました」

 

ピクリ、また嘘…

 

「まさか私と同じくらいの男の子だとは思いませんでしたよ」

「うん、まぁね」

 

ゴンザレス太郎の警戒心もかなり高くなったがフーカが…

 

「いいわ、私達これから暇だから一緒に行ってあげる」

「ほっ本当ですか!?良かった~」

 

目の前の少女の言動はフーカが居なければ確実に信用していた。

だが嘘だと分かっててもフーカはミリーと名乗る少女の依頼を受けた。

これは何かあるとゴンザレス太郎は考えながら直ぐに行きたがるミリーに手を引かれ、歩くフーカの後を付いていくのだった。


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