異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第19話 勝利の方程式

ゴンザレス太郎が立てた作戦、それは心ない天神を作った神であるマリスの言葉を全て信じた上での内容だった。

 

まず『命令を聞かない』

これは心ない天神達の動きを見ても分かるように各々の知性が有るわけではなく、目標を捕らえ射程内まで移動して手を翳して消滅の光を放つ。

これと何か攻撃をされたら消滅の光で反撃をする。

 

この二点!

これが心ない天神の行動の全てであった。

余りにも単純で分かりやすいこれをゴンザレス太郎はまず利用した。

浜辺で左右に逃げ回ることで左右に広がっていた心ない天神達は、射程内から外れたゴンザレス太郎を追いかける為に外側のモノが中央へ寄る。

まずこれでゴンザレス太郎は心ない天神を広がらせずに出来るだけ集まらせた。

そしてその状態で頃合いを見計らい後方へ下がり、予定の場所で合図の魔法を放つ!

 

音に反応してメールがゴンザレス太郎の発動している『射程無限』を利用してはるか上空に用意していた結界の中にアーサーが水魔法を固定しているアレを曲げて天の裁きを心ない天神の中央へ落とす!

 

太陽光を集めたそのレーザーは心ない天神に対して神の言った通り『全属性攻撃魔法無効』によりダメージは一切無い。

だがサリアのレールガンで衝撃を受けると仰け反る事を知っていたゴンザレス太郎の狙い、それは心ない天神達の中央にいるヤツラを海上へ叩き落とす事であった。

 

そして、そのタイミングで上空へ飛び上がり結界を張りサラの炎王球との合わせ技で開けた空間へ突っ込む!

そして、ゴンザレス太郎の心ない天神対策の最大の切り札を使う!

それはプロアクションマジリプレイで発動させたコード『回復アイテムでダメージ』を発動させ、心ない天神の中央を通りすぎる時に左手で蓋を開けつつ左側へ投げたフーカから託されたただ一つの『ラストエリクサー』である!

 

ここでラストエリクサーの効果について説明するとしよう。

ラストエリクサーとは蓋を開けて空気に触れたと同時に一定範囲に効果が広がる回復薬で、風が吹いてようが空気があれば遮蔽物が在ったとしても関係なく射程にまで効果を発揮する。

そして、その効果は『欠損部位すらも治しHPを最大まで回復する』と『死んでから10分以内の死者を生き返らせる』である。

 

つまりプログラム上では『生物死者問わずHPを理論値増やす』なのでゴンザレス太郎の回復アイテムでダメージと合わさると『HPを理論値分減らす』と言うわけだ。

そして、マリスが言ってた通り「ステータスは全てMAX!更に『絶対物理遮断』と『全属性攻撃魔法無効』と『全ステータス異常無効』!」つまり回復アイテムは効果があると言うことだったのだ!

 

デニムの力を借りて反射したゴンザレス太郎はそのダメージを受けるラストエリクサーの効果範囲内に再び飛び込み、右手と口元だけを保護し左手の中にあるラストエリクサーを再度使用する!

そう、『アイテム減らない』を発動していたので開けて捨てたラストエリクサーはゴンザレス太郎の左手の中に復活していたのだ!

二度目の通過時に今度は逆側にラストエリクサーを使用するのだが、そこは既に最初のラストエリクサーの効果内。

音速を超えた速度で飛んでいるゴンザレス太郎の全身にラストエリクサーの効果が速度に関係なく発動し、その身を急速に汚染する。

そして、ゴンザレス太郎は全身を音速を超えた衝撃とラストエリクサーの効果により全身を崩しながら飛び続け、ラストエリクサーの射程外でそれをサラがキャッチする。

そのゴンザレス太郎を追うように心ない天神達は消滅の光を当てようと追い掛けるのだが、一番の胆だったデニムに反射される瞬間も攻撃されなかった為に見事やり遂げたのだ!

後はサラがその命を懸けてゴンザレス太郎が生きている間に停止させ、HPがリアルタイムに減り続けるゴンザレス太郎の猶予を少しでも伸ばすために最後の力で回復魔法をかける。

 

もしもこれが似た効果の『回復でダメージ』を使用していたらこの時点で詰んでいたであろう。

そして、ゴンザレス太郎も最後の力を振り絞りスキルを発動させ『回復アイテムでダメージ』を解除すれば完了だった。

だが最後の最後で体を崩しながら心ない天神達は消滅の光をゴンザレス太郎に向けて放ってきていた。

完全にゴンザレス太郎の予定から外れた事象ではあったが、魔王子アーサーのユニークスキルにより間一髪彼の消滅と引き換えに二人の体は助かったのであった。

 

そして、最後に全てを託されたのはメールであった。

ゴンザレス太郎の左手が崩れる前に右手に移していたラストエリクサーを彼女が使用し、二人を助けるのが彼女の役割なのだが…

ゴンザレス太郎が寝た場合はスキル効果はリセットされるが、死んだ場合はどうなるか分からないと言うのが最大の問題であった。

その為にゴンザレス太郎は死ぬ間際スキル効果を解除するために発動の為の口元と操作の為の右手を庇っていた、だがしかしゴンザレス太郎が死ぬ間際にスキル解除が間に合ったかは彼女には分からないのだ。

 

もし解除前にゴンザレス太郎が死んでいて効果が解除されてなかったら、ラストエリクサーの蓋を開ければ確実に自分も死ぬことになる。

そんな極限状態にあった中彼女は迷うことなくその蓋を開けた。

ゴンザレス太郎への絶大なる信頼と、もし死んでもお腹の中の子供と父親の元へ行けると信じていたからだ。

そして、ラストエリクサーはゴンザレス太郎の予定通り、効果範囲外で魔海に浮かんでいる心ない天神の死体を一体も生き返らせる事の無いまま、ゴンザレス太郎とサラの二人だけを生き返らせるのであった!

 

どれか一つでも欠けていたり間違ってたら全てが終わっていた戦いに彼等は勝利したのだ!


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