異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第20話 プロアクションマジリプレイが凄すぎる効果を発揮した件

消えかけた肉片は再生し、ゴンザレス太郎は光の中で肉体を再生しながら目覚める。

サラも動かぬ体に光が染み込み、瞳をゆっくりと開く。

意識を取り戻した二人に涙を流しながらメールが抱き付いた。

 

「良かった、本当に良かった」

 

大人のメールに抱き締められ、ゴンザレス太郎とサラは終わったんだと安堵の息を吐いた。

その体はとても小さく、特にゴンザレス太郎は戦いであれだけの事をこんな小さな体で実現させてきたとメールの心を驚かす。

先日8歳になったゴンザレス太郎だが、まだまだ子供なのは変わらない。

少ししてメールが腕を離し笑顔を見せるが、やはりその表情には陰りが見えた。

この戦いで失ったものが大きすぎるのだ。

 

「兄さん…」

 

サラも最後の最後に自分達を守り抜いた兄であるアーサーが居た場所を見つめながら、生き残ったのは自分一人なのだと心を強く持つ。

 

「終わったようだな」

 

その時上空から声がした。

3人が見上げるとそこには魔物の軍隊と魔王が居た。

そして…

 

「デニムさん!?」

 

空を飛ぶ魔物に座席に寝かされた状態で運ばれて、空中で治療を受けているデニムがそこに居た。

全身の骨は粉々にやられ、まさに死を覚悟したその時…

偶然にも魔物の町へ向かった心ない天神達を追い掛けていた魔王軍に空中でキャッチされていたのだ。

 

「どこの鉄砲玉かと思ったぞ」

 

魔王の言葉にゴンザレス太郎は吹き出す。

魔王は前世の世界での任侠映画を思い出したのだ。

魔王もゴンザレス太郎が居るからこんな冗談も言える、それが楽しかった。

 

「そうか、アーサーも逝ったか…」

 

魔王にアーサーが自分達を助けて死んだと告げるサラ。

魔王の目には悲しみよりも、命を懸けて世界を救った一員として誇り高い息子を自慢にする様な雰囲気をゴンザレス太郎は感じた。

 

「それでも、よくぞ世界を救ってくれた。魔王ではなくこの世界の住人の一人として礼を言わせてもらうぞゴンザレス太郎」

 

魔王のいつもの冗談ではなく、本気で心からの礼なのだと伝わる気持ちを受け止める。

しかし、ゴンザレス太郎は首を横に振り告げる。

 

「まだやることが残ってます」

 

一同の頭に浮かんだのはやはりあの神であろう。

この件の元凶でもあるし、ヤツが居る限り再び同じことが起こり得るのだ。

しかし、ゴンザレス太郎の口から出たのは誰もが予想をしなかった言葉であった。

 

「俺のスキル『プロアクションマジリプレイ』の真価を試す実験を今からします!」

 

意味が全く分からない、その場に居る全員に動揺が広がる。

様々な事象に常識を無視した影響を与えるゴンザレス太郎のスキルの事はこの場に居る誰もが分かっていた。

だがこれから起こることはまさに神をも超えた現象なのをこの時誰も理解していなかった。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

空に向かって叫ぶゴンザレス太郎!

発動するだけならこんな大声を出す必要は無いのだが、この声には彼の願いが込められていたのだ。

そして、ゴンザレス太郎は自分にしか見えないウィンドウを操作する。

彼が選んだのは『パーティーメンバーに加える』であった。

そして、セレクト後キャラを選ぶ一覧が表示されゴンザレス太郎は笑みを浮かべ叫ぶ!

 

「頼む!帰ってこい!」

 

そして、決定を押すと奇跡は起きた。

突如ゴンザレス太郎の目の前に驚くべき人物が姿を表した!

 

「ぐぁぁぁぉぁあ…あれ?」

 

目の前に魔王子アーサーが出現したのだ。

 

※『パーティーメンバーに加える』

世界の何処に居ても、生きている限りパーティーとして認可される範囲に強制的に瞬間移動させて無理矢理パーティーに加える効果

 

そう、これは加わっていない人間をパーティーに加える効果ではなく、データベース上に存在する生きた人間を無理矢理パーティーメンバーに加えて一緒に行動できる場所に一方的に呼びつける効果だったのだ!

神マリスは心ない天神を説明する時に言った。

 

『こいつの消滅の光は通過したものを消滅させる。死ぬのではなく消滅、分かる?消えるんだよ当たったら最後僕でさえも消えるし生き返れない!どう?素晴らしいでしょ?』

 

つまり消滅したので、死んだとは違う扱い!と言う訳なのだ!

混乱している一同、自分に何が起こったのか分かってないアーサー。

全員を放置してゴンザレス太郎は再び叫ぶ!

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

最早それはチートなどを超えたデバックと呼べるレベルの行為。

この世界を作った神すらも超えた人間の知恵の結晶が起こした奇跡であった。

その中で魔王だけが前世の知識から一つの伝説を思い出す。

 

『改造データを使って起こすエア○ス復活バグ』

 

かつて地球と言う星で産み出された伝説のファンタジーRPGゲームの7作目で、世界中で話題になったそれを思い出しながら魔王は一人高らかに笑い声を上げるのであった。

消された仲間が帰ってくる、その事実に歓喜する一同。

だが、その中で一人…ゴンザレス太郎だけがそれに気付き影を落としている事実に誰も気付かなかった…


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