異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第25話 奇跡なんて無い、あるのは結果である

やっぱり駄目だった。

もうあんな奇跡はきっと起こらない・・・

だから私はもう抗うのは止めにしよう・・・

あんなに頑張ったのに無理だったのだから・・・

 

 

 

 

少女は礼拝堂に老夫婦に連れられて来ていた。

身寄りのない自分を引き取って育ててくれた老夫婦だ。

もう何度この時間を繰り返したのか分からない。

だが結果はいつも同じだ。

 

「ををを!この娘には3つもユニークスキルがある!」

 

周りが騒がしくなる中、少女は反応を示さない。

それは元から知っているから・・・

 

そして、その帰り道少女は同い年くらいの少年と、少し年上の少女とスレ違った。

人生になんの希望も持ってない少女は俯いたままその横を素通りしようとした、その時に声が掛けられる。

 

「リップクリームでお小遣い稼ぎしようぜ!」

 

懐かしい愛しい声、自分なら絶対に聞き間違える事は無いと自信を持って言えるその声が聞こえた。

その声に反応して少女の顔が上がり、更に声が届いた。

 

「二人で一緒にお嫁さんになるって約束でしょ?」

 

懐かしい愛しい声、自分なら絶対に聞き間違える事の無い親友の声・・・

 

少女は顔を上げて目を見開いて振り返った。

その瞳は赤と黄色のオッドアイが輝く。

そして、少女の瞳に映る2人の男女。

少女は涙を浮かべながら両親の手を振りほどき、走り出す。

最愛の彼と最高の親友の元へ!

 

「タツヤ!サラ!」

「やっと見つけたよフーカ」

「お帰りフーカ」

 

抱きしめ合う少年と少女二人。

奇跡は起こらないから奇跡と言う。

だから人は奇跡を奇跡とは言わない、それは結果である!

3人は遂に再会を果たしたのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうタツヤ?」

「うん、やっぱ最高だよ!だって目を開けると視界にフーカしか映らないからね」

「はぁ・・・またやってるの?本当膝枕好きよね?」

「いいじゃない、それにサラはタツヤとの子供3人も作ったんでしょ?じゃあ私は4人作るからね!」

「あんた・・・そんな勝負する気なの・・・」

 

フーカの膝枕にゴンザレス太郎が頭を乗せ、それをサラが見つめる。

3人は少年と少女なのにとんでもない会話をしている、だが本人達にとってはもう普通の事なのだろう。

そして、サラはフーカの膝枕に気持ち良さそうにしているタツヤを見てもヤキモチなど妬かない、だって彼女もさっきまでゴンザレス太郎に膝枕をしていたからだ。

 

「そう言えば結局なんでこうなってるのか聞いてなかったけど説明してくれる?」

「あぁ、俺が寿命で死ぬ時にミリーの首輪外しただろ?」

「ちょっと待って、ミリーって誰よ?首輪って何よ?私達の他に女が居るの?!」

「落ち着いてフーカ、ミリーはタツヤに私が居ない間に全裸にされただけの被害者よ」

「ちょっと待てぇえええええええええ!!!」

 

騒がしく中々話が進まない中、やっと落ち着き話の続きが始まる。

 

「…っでさ最後の最後にコードガチャを回したらさ、とんでもないものが出ちゃってさ」

「とんでもないもの?」

「あぁ、『スキル自由選択』だ!」

「「?!」」

 

※『スキル自由選択』指定した相手のスキルを自由自在に過去に見聞きした物の中から自由に選んで付けたり外したり出来るコード。ただユニークスキルに付いては一人に付き2つまでしか付けられない。

 

「それで俺は自分にフーカと同じ『転生タイムリープ』を付けてさ、んで死ぬ直前ギリギリにサラにも同じものを付けるのに間に合ったんだ。」

「そう、それで・・・でも何故このフーカが過去に戻ってるって思ったの?」

「勘っ!」

「全くアンタって人は・・・」

 

笑い合う3人の元へ一人の男が降りて来た。

 

「やっと見つけたぞサラ!」

「あっパパ久しぶり!」

「貴様らが俺の娘を攫った張本人か?!」

「魔王さん!」

 

魔王が威嚇の目でゴンザレス太郎を見たが、それをものともせずゴンザレス太郎は魔王の前に立ち目を見ながら告げる。

 

「サラさんを僕のお嫁さんに下さい!」

「私達愛し合ってるんです~」

「わっ私もタツヤの事サラよりもずっと好きなんだからね!」

 

ゴンザレス太郎の両腕に二人の少女が抱き付き魔王は固まる。

3人共が威圧に全く反応しなかったのもあるが、魔王の中の本能が告げていたのだ。

 

(なんだこいつらの強さは?!)

 

目の前でイチャイチャする3人の前で固まる魔王だったが、彼に続いて上空から降りてくる魔物たちで周りの人々は大騒ぎになる。

だがそんな事は気にしないとばかりに3人はあーでもないこーでもないと言い続け、ゴンザレス太郎の腕を両方へ引っ張り出す。

 

「私が先に結婚式挙げるの!」

「サラは一回やってるんでしょ?!だったら次は私の番でしょ!?」

「痛い痛い痛い痛い・・・」

 

降りて来た魔物達も3人の前で立ち尽くす。

まるでどちらの母親が子供の親かを試すあのシーンみたいな状態なのだが、恐ろしいのは両方から引っ張ってる少女二人の力はここに居る誰よりも、そう、魔王よりも強いのだ!

 

「っと、とりあえず魔王さんと魔物の皆さん。話を聞いてもらえますか?」

 

両腕を引っ張ってたはずが何故かねじり始めている二人の少女を放置して、ゴンザレス太郎はこれから起こるであろう歴史の話をし始める。

そして、魔物の町で鬼狩りが開始されるのだがそれはまた別のお話・・・

 

 

 

「あっそうそう、フーカ?ちょっとイイかな?」

「ん?」

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動」

 

ゴンザレス太郎はスキルを発動させ『スキルの自由選択』を選びフーカの『転生タイムリープ』を外す。

 

「神のマリスが3つ持ってるとやってきちゃうから一時的に『転生タイムリープ』は外しておくね」

「うん!」

「じゃあ次はシズクちゃんを助けに行きますか!」

 

 

こうしてゴンザレス太郎達はこの後起こる事件を発生前に次々と対策していき、皆とも知り合い様々な歴史をなぞって、出来るだけ交友関係を再現した。

 

 

 

「はぁ~ここ数日毎日色んな事し過ぎて疲れたわ」

「そうだね、暫くお休みって事でどう?」

「賛成~タツヤと居られるだけで私は幸せだし~」

「私の方がもっと幸せです~!」

 

二人はまた言い争いから何故かゴンザレス太郎の両腕を絞る対決に入る。

そして、この日から3人は豪邸を購入しその家で毎日ゴロゴロして過ごすのであった。

まさにそれはニート家族と言えるだろう・・・

 

「ニート生活は最高だぜ!」

 

お金はゴンザレス太郎の『所持金MAX』で幾らでも出せる。

そんな家で3人は毎日をグータラに過ごし、永遠に続くニート生活を満喫する。

 

「今回の人生はこうやって毎日ゴロゴロして過ごすとしてさ、次の人生では世界巡りとかやってみたいと思わない?」

「「賛成~」」

 

寿命で死んでも3人は『転生タイムリープ』の効果で再び生まれた時に巻き戻り、再会し別の行き方を3人で堪能する。

終わらない永遠を3人は今日も飽きる事無く過ごし続ける。

そこは神の作ったゲームの中の世界。

世界は何処までも広く飽きる事無く3人は人生を満喫し続ける事だろう・・・永遠に!

 

「ニート生活最高!」

 

 

第1章 第2部 完


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