「止まれ!」
3人が徒歩でニーガタの町に入ろうとしたら門番に声を掛けられた。
ここは砂漠のオアシス、現在の3人は青年と美女二人と言う両手に華な状態なので、周囲を歩いている人の目が少し気にはなっていた。
だが自分達だけ声を掛けられるのが少し気に入らないサラは少し御立腹だ。
「なに?」
伊達に魔王の娘をやってはいない、低い声と共に威圧を放ちながら返ってきたサラの返事に気後れする門番!
だが怪しい者を町に入れないようにするのが門番の仕事である!
この仕事をもう5年続けている門番の青年は町の平和の為!と気合いでその威圧を受け止めてサラを睨み返す。
「へぇ~」
自らが放った威圧、それがCランク位の冒険者なら動けなくする位の強さだと理解しているサラはその青年の態度に感心した。
と言っても青年の下半身はプルプルしているのだが…
「僕らがどうかしましたか?」
ゴンザレス太郎が助け船を出すようにやんわり話し掛けた、それにより言葉も発せれなかった青年はサラの威圧から解放され呼吸が楽になる。
「あ、あぁ君達は歩いてきたみたいだが旅の人かい?」
「そうです。ここからずっと東の町から来ました。」
ゴンザレス太郎は赤砂が広がる方向を指差し答える。
その言葉に門番の青年の目が光る。
「その格好で?」
そう、門番に止められた一番の理由はこれであった。
普通なら砂漠を旅するには太陽の熱から皮膚を守るために何か羽織る必要があるのだが、サラはまるで「これから彼氏とデートなのっ」て言いそうな短いスカートに健康的なシャツを着てポーチを着けていた。
ゴンザレス太郎はこれこそが冒険者の正装だ!と言いそうな服装なので服装には問題はないのだが、明らかに荷物が少なすぎるのだ。
それもその筈、ゴンザレス太郎には『使用したことのあるアイテムランダム復元』が有るのでその気になったら幾らでも時間さえかければ欲しいものが出せるのである。
そして、一番の原因を作ってるのはフーカのパジャマ姿であった。
ピンクの上下が揃ったパジャマを着て「砂漠を歩いて遥か東の町からやって来ました」って言われてハイそーですかドウゾとは行くわけがない。
サラの格好は、お前砂漠舐めてるだろ?だがフーカの格好は、お前砂漠って何か分かってる?である。
「タツヤは可愛いと言った。だからこれは正装」
意味が分からない。
そんなフーカの言葉に腕を組んで頷いているゴンザレス太郎、かなりフーカに染まってると言わざるを得まい。
「あー、ちょっと待ってくれ頭痛がしてきた。」
「舞うの?ここで?3分間?」
「頼むから少し黙っててくれ…」
門番は頭痛に困ってるようだった。
きっと大変な仕事で毎日疲れているのだろう。
「おいどうした?」
門番が悩んでいたらもう一人の門番もやって来て、サラとフーカの格好を見て同じ様に頭痛がしてきたのか眉間を押さえ始めた。
ちなみに3人にはサラの魔法で紫外線と熱を吸収する極薄の膜が全身を包んでいるのだが、その精度が高過ぎて見抜ける人は殆ど居なかった。
「あの~僕ら町に入っても良いですか?」
「あーまぁ持ち物もそんな成りじゃ持てないだろうし、一応上には話通しておくから良いぞ」
「そう言う事だから行くか」
「うん!」
「えぇ…」
サラは相変わらず不機嫌だが、ゴンザレス太郎の腕にしがみつくと直ぐに機嫌を直してニコニコしていた。
「一応、デルタさんに報告しとくわ」
「あぁ頼む…」
門番の一人はこの町を守るSランク冒険者の妄槍のデルタが滞在しているニーガタの冒険者ギルドへ駆けていく。
まさかゴンザレス太郎達がそこを目指しているとは知らずに…