「あ~君達ちょっといいかな?」
デルタは少し抵抗があるが、仕事だから仕方ないといった感じで3人に声を掛ける。
だがそれに気付いているのはゴンザレス太郎のみだった。
そこ声に聞こえない振りをしてスルーし、フーカとサラの手を取ってギルド内へ入っていった。
(ワザと避けなかった?それとも分からなかった?)
デルタはゴンザレス太郎に何かをしていたのだが、反応がなかった為にますます分からなくなっていた。
3人が居なくなった事で見物していた人達も散り始めた、なのでデルタも何食わぬ顔をしてギルド内へ足を運ぶのであった。
砂漠の町、ニーガタの冒険者ギルドはやはり荒くれ者達の集まりが多く、3人が入ってきたら視線が一気に集まる。
ここで一般人の依頼人だと手を出すのは不味いのだが、もうギルド内はそれどころでは無くなっていた。
「ピンクだぜ…」
「あぁ、ピンクのパジャマだ…」
「俺、女の子のパジャマ姿なんて始めて見たぞ」
「俺はあっちのみにすかーとって言うやつだと思うのが…」
「お前マニアックだな」
ゴンザレス太郎と手を繋いでいる二人の魅力にメロメロになって後ろを付いていく荒くれ者達。
もう一度言うがフーカはピンクのパジャマ姿だ。
「い、いらっしゃいませ。ニーガタの冒険者ギルドへようこそ」
受け付けの女性も顔をひきつらせながら、なんとか営業スマイルで対応を開始する。
その視線がゴンザレス太郎に向いていたのが気に入らなかったのか、フーカがカウンターにわざと音を立てて何かを置いた!
「町のギルドから護衛の依頼でここまで連れてきた。これ依頼書とギルドカード」
そう言ってフーカが受け付けに依頼書とギルドカードを提出して一斉に叫び声が上がる!
普段であればフーカの美声に耳を奪われるのだが、受付の女性にはその衝撃が凄まじすぎた。
「「「「お前が護衛する側かよ?!」」」」
後ろの男達の叫びで突っ込みを入れそうになった受付はギリギリで踏みとどまれた。
なんとかまだ冷静にしていた受付の女性も、その依頼書を見て遂に声を上げてしまう。
「Gランク?!成功報酬銅貨1枚とキスぅ?!」
「そう、だから早く銅貨1枚出して。これからお楽しみ」
「ちょっとフーカ?!どういう事よ?!」
「依頼書に出す時書いておいた。仕方無いからキスする」
サラの質問に成功報酬だから仕方ないとそう言って、フーカはゴンザレス太郎の両頬に手をやり、人前でキスは恥ずかしいと拒否するゴンザレス太郎の首を無理矢理動かし…
ゴキゴキゴキゴキ…
見守っていた荒くれ者達もその音に流石に顔を青ざめたのだが…
そのままむちゅーとキスされるゴンザレス太郎。
実は3人共既にステータスは既にカンストしており、3人の力はほぼ同じとなっていた。
ちなみに首はフーカのキスしながらの無詠唱回復魔法で、両頬に当てられた手から治療されて既に完治している。
「ごちそうさま」
フーカのその一言に場の空気は一転した。
先程までは受付の方を向いて話していたのだが、キスをするために横を向いて話したからその声が聞こえたのだ。
しかもゴンザレス太郎とキスをするために上を向いたので前髪が横に開き、フーカの赤と黄色のオッドアイが見えていた。
そう、フーカの整った顔と美声がその周囲を囲んでいた冒険者達にも分かったのだ。
となれば荒くれ者達の中には自分の力量も考えずフーカの事を欲しがる者が現れるのは必然であった。
「おい嬢ちゃんそんな優男ほっといて俺の女になれよ」
その男はフーカの肩に手を伸ばした。
いや、伸ばしてしまった。
そして、フーカの肩に触れた瞬間、フーカはその男にだけ一瞬手加減抜きの威圧を掛ける。
既にSSSランクの魔物ですら片手で瞬殺出来る存在からの威圧を受けた男は、一瞬にして自分が如何に弱者かを理解してその場で漏らしながら腰が抜けてへたりこむ。
その場に居た全員がそれを見て驚き固まる中…
「きゃータツヤこの人こわーい」
っと甘えた美声でゴンザレス太郎に抱き付くのだった。
それを間近で見ていた受付の女性…
その手に報酬の銅貨1枚を持ったまま固まるのであった。