「それではこちら、成功報酬の銅貨1枚です。」
「ん、ありがと」
やっと仕事が先に進んだ受付の女性は満点の笑みを浮かべ、帰ろうとしたフーカが再び振り返った事で笑顔のまま顔がひきつる。
「泊まれる宿教えて」
「あ、あぁ宿泊施設ですねそれでしたらギルドを出て右手に進んでいくと『冒派亭』という冒険者がよく利用する宿が在りますよ」
「ん、ありがと」
ニーガタの町ギルドの受付嬢『マナ』見た目は成人成り立ての女性だが、実は3人の子持ちの35歳なのはここだけの秘密である。
3人は受付に聞いた冒派亭の前まで来て困っていた。
看板は確かに『冒派亭』と書かれているのだが、そこに在ったのはどう見ても定食屋だったのだ。
「ん?なんだいあんたらは?」
ゴンザレス太郎達が困っているのに気付いたのか、中から太ったおばちゃんが出てきた。
緑のエプロンがデカ過ぎて、エプロンと言うより鍛冶士の前掛けみたいなそれを装備したおばちゃんに「ギルドで宿を聞いたらここを教えられた」と伝えたら…
「あぁ、二階が冒険者でも泊まれる様にはなってるけど…」
おばちゃん、フーカとサラを見て困った顔をする。
「皆一緒の大部屋で雑魚寝だけどいいのかい?」
ゴンザレス太郎は別に良いのかもしれないが、旅の途中の夜営ならまだ仕方ないとしても、宿に金を払って他の男達と一緒にフーカやサラを寝かせるのは流石におばちゃんも抵抗があったようだ。
「んー仕方無い!あんたら二人は私の家に泊まるかい?」
「えっ?いいんですか?」
「だけど男は駄目だよ!」
「わ、わかってますよ…」
こうしてフーカとサラは冒派亭のおばちゃんの家に、ゴンザレス太郎は冒派亭の2階に泊まることになった。
そしてその夜、事件は密かに起こるのだった。
ニーガタの町から南へ進んだ場所に無数に在る地下への階段。
ここは砂漠の迷宮と呼ばれる地下にアリの巣の様に広がるダンジョンである。
ニーガタの冒険者はここを拠点に討伐や素材を取り、それ等をニーガタで売ることで生計を立てているものが殆どであった。
しかし、このダンジョンには数々の謎があり、毎月何人かは魔物にやられるわけでもなく帰ってこない。
それもパーティーで地下へ潜っているにも関わらず、気が付いたら人数が減っていると言う報告も上がっている。
そして、今ここに探索に入っている一組のパーティーがあった。
「ここから先は未知の階層だ。二人共気を付けろよ」
「えぇ、帰ったら娘に美味しいもの食べさせるためにも頑張るわ」
「アーニャ、頑張るんじゃなくて気を付けるんだ」
先頭を行くのは若い青年で名を『ナジム』と言い、魔法も使える剣士である。
ただ魔法を剣に宿らせられないので、本人は魔法剣士ではなく魔法の使える剣士と言い張っている。
そう、魔法を剣に宿らせると言う発想から分かる通り地球からの転生者である。
二人目は盗賊なのに魔法が使える女性『アーニャ』と言い、ニーガタに娘を置いて冒険者をやっている。
父親は誰か分からないと言う事から察しは付くと思うが、常に前しか見てない危ないタイプであった。
ちなみに本人は魔法も使える盗賊なので魔法盗賊と言っているが、誰一人そうは呼ばない。
そして、最後が身長が135しかない小柄な体に凄い筋肉を搭載した男『ローグ』、実はニーガタギルドの受付嬢マナの父親だったりする。
ローグは魔法は使えないがその強靭な筋肉を使ってパワフルな一撃を得意としており、豪快な攻撃を得意とするのに凄く細かい男であった。
そして、3人は階段を下へ降りていく。
まさか自分達がニーガタの町を滅ぼすなど想像もせずに…