「大変お待たせしてすみませんフーカ様、すみませんがギルドマスターがお会いしたいそうなので奥の個室まで来ていただけますか?」
フーカの出した依頼書をギルドマスターが拝見して面会を求めてきたらしい。
フーカは物凄く面倒臭そうな表情を前髪で隠しながら即答する。
「いや、お婆ちゃんから知らない人について行っちゃ駄目って言われてる…」
「えっ?いや、でも…」
まさか断られると思ってもいなかった職員は動揺するが、それでも仕事だからと引かない。
「ぐぇっ?!」
その時ギルドの隅で呻き声が聞こえた。
一同は目を疑った。
そこにはゴンザレス太郎が妄槍のデルタを組み付していたのだ。
「わ、悪かった。頼むから止めてくれ」
「ほら、こんなモノで良いだろ」
ゴンザレス太郎はデルタを組み付しているのだが視線はサラを見ていた。
実はデルタ、フーカの背中に見えない槍で攻撃を仕掛けようとしたのだ。
それに気づいたサラが動きそうだったので、それより先にゴンザレス太郎が襲い掛かりサラより先に組み付していたのだ。
後1秒遅かったらサラの超高速の炎を圧縮したレーザーがデルタを瞬殺していたかもしれないと考えるとゴンザレス太郎のファインプレーなのだが、何も知らない人達からしたらゴンザレス太郎が町の守護者を不意打ちでいきなり襲ったようにしか見えなかったので…
「おうこら!お前デルタさんになにしてくれとるんじゃ?!」
「この卑怯者め!ニーガタの冒険者の恐ろしさ見せてくれるわ!」
数名の世紀末の荒野に出そうな屈強な男達が立ち上がりゴンザレス太郎を睨み付ける!
だがゴンザレス太郎は男達には目もくれずサラを見詰める。
目で『手を出すなよ』って伝えているつもりなのだが…
両手を頬に当てて顔を赤らめて恥ずかしがり始めるサラ。
「無視してんじゃねーぞこらぁ!」
「五体満足でここから出られると思わ…」
そこまで言って全員驚愕する。
サラが巨大な炎の塊を手から作り出していたのだ。
しかし、次の瞬間炎の塊は氷の塊になる!
「サラ、建物壊れるから駄目」
「だってフーカぁ…」
フーカが魔法で一瞬にして炎を凍らせたのだ。
サラの炎も異常だが、炎が凍ると言うフーカの魔法も異常であった。
「な、なんなんだこいつら?!」
一部始終を見ていたナジムも目の前で起こったあり得ない現象の数々に唖然としていた。
ただでさえ不意をついてもデルタが遅れを取るなど有り得ないのに、サラの魔法もフーカの魔法も無詠唱どころか魔法の気配すらする前に発動しており、二人とも特別な魔法ではなく普通に何気なく出せる魔法があれなのだと理解していた。
ナジムの頭の中には前世で見たあの漫画のワンシーンがリピートされていた。
『今のはファイガではない、ファイアだ。』
この人達なら勝てるかもしれない!
そう考えたナジムは勇気を振り絞って声を掛けようとしたのだが…
「あーんタツヤ~フーカがいじめるぅ~」
サラは氷の塊を片手で粉砕してゴンザレス太郎に抱き付いて甘える姿をフーカに見せ付ける。
小さくペロッと舌を可愛く出して、ゴンザレス太郎にアピールも忘れない。
「これは一体なんの騒ぎじゃ?」
そして、ナジムが声を掛ける間も無くギルドの奥から一人の老人が顔を出した。
この人物こそニーガタのギルドマスター『コブラ』である。
その名の通り、左腕は義手で爆裂魔法を放つことでロケットパンチが撃てる様に改造されているのだが、実は遠くの敵には届く前に義手が空中分解してしまい何の役にも立たないと言うことを本人はまだ知らない。
「マ、マスター」
カウンターの中へしゃがみこみ避難していた職員が半泣きになりながら助けを求める。
元はと言えばギルドマスターがフーカを呼びつけたのが始まりなのだが、もうそんな事はどうでも良かった。
「ギルド内での揉め事はご法度じゃぞ!冒険者資格を剥奪されたいのか?!」
怒声が響く中…
「あたし冒険者じゃないし~」
「こらこら、話が拗れるから少し静かにしようなサラ」
「んふふ~じゃあキスで口塞いでタ・ツ・ヤ」
「サラ、いい加減にする!」
フーカが流石に怒り出したのでサラはゴンザレス太郎にウィンクしながら再び舌をペロッと見せて、近くの椅子に座った。
ゴンザレス太郎もかなり前からデルタの体を離していたのだが、考えていたのを遥かに超えた規格外な3人を見てデルタも動けなくなっていたのだった。