「サラ?サラ!おいサラ!」
「…んへっ?あっごめんボーとしてたよ」
声を掛けても無表情のまま立っていたサラ、ゴンザレス太郎がその肩を揺すってやっと返事が返ってきた。
「とりあえず重症の人に回復魔法かけるぞ」
「はいはい…」
ゴンザレス太郎、フーカ、サラの3人は見た目重症そうの人に回復魔法を使用し、順次治療を行っていく。
一応先程のゴーレムが生き返らないように10分以上経過してからラストエリクサーを使用するつもりなので、それまで出血多量で死んだりしないようにと痛みを緩和する為に治療を行うのだ。
「アーニャさんで良かったですか?」
「は、はい、あの…」
「娘さんにお母さんを助けてくれって言われましてね」
「娘は!リリアは大丈夫なんですか?!」
「えぇ、ニーガタの町でナジムさんが保護してますよ」
「良かった・・・本当に良かった・・・」
ゴンザレス太郎はアーニャの治療を行いながら少し話をした。
アーニャの怪我はラストエリクサーで完治する、だが実際に酷いものであった。
手足は全て複雑骨折し、内蔵もズタズタになっており、本当に生きてるのが不思議なくらいであった。
その他の人も、腹部を刺されて出血が止まらなくなっていたり、生きているのが不思議な状態だった人も数名居た。
その現状に少々違和感を感じたが、呪いの副作用の一つなのだろうと考えた。
事実、ゴンザレス太郎に襲い掛かって来た人達は、操られていた時は傷口から出血していなかったのに、今は血が流れているのだ。
「タツヤ、そろそろ10分」
「んっ?あぁじゃあ使うな」
フーカに言われ、ゴンザレス太郎はラストエリクサーの蓋を開ける。
瓶からオーロラの様な虹色の何かが空気に溶けていき、その場にいる全員の怪我が治る!
その奇跡の様な現象に場は歓喜に包まれる。
特に複雑骨折や、とても外まで歩けない人の怪我が治った時の喜びようは想像できるだろう。
救助が来るまでここで待たされるとか、とても耐えれるものではないのだから。
その後、3人はボスの居たその部屋を調べるが特に何もなく!ゴーレムが座っていた椅子にも特に変なところは無かった。
なので一同はニーガタの町へ帰還する。
逆ピラミッドの入り口ではゴーレムを倒したからなのか魔物は残っておらず、外に出ると少し残っていた魔物達をニーガタの冒険者達が殲滅させていた。
「ををっ?!本当に戻ってきやがった!」
デルタが目の前にいた魔物を数匹纏めて手にした槍で薙ぎ払い、逆ピラミッドから出てきたゴンザレス太郎達を見て声を上げる。
その後ろには居なくなってた住人達が居り、残り少なくなってた魔物を倒しながら冒険者達は歓声を上げる!
「うぉー!!」
「すげーぞおまえらー!」
ナジムもその場に居りアーニャが元気にしている姿を見て涙を流して喜んだ。
その後、傷の癒えた冒険者も加勢し、魔物はほぼ全滅させる事に成功!
こうして、ニーガタの町を騒がしたダンジョン隆起事件は幕を閉じた。
ニーガタの町に戻った一同はその夜、ギルドマスターが手配した宴会に盛り上がり遅くまで砂漠のオアシスに賑やかな騒ぎ声が響くのだった。
結局あのゴーレムの正体も、赤砂から何故魔物が生まれていたのか何も分からないが、終わってしまえば町の住人は誰一人欠けること無く今回の事件は幕を下ろしたのだった。
そして、翌朝…
宴会で誰もが色んな所に行ってたせいで、密かに起こっていた大事件に人々は気付くのが遅れたのであった。
コンコンコン…
「はーい、あれ?フーカどうした?」
「タツヤ、サラ知らない?」
「えっ?一緒に寝てたんじゃないの?」
「昨夜は居たんだけど起きたら居なかった」
その時、外が騒がしくなってるのに気が付いた。
更にゴンザレス太郎達の泊まっていた宿に走り込んでくる足音が響く。
昨日の宴会でゴンザレス太郎達がここの宿に泊まっている事はギルドにも伝えてあったのだ。
そして、走ってやってきたニーガタのギルド職員は慌てた感じで話し出す。
「た、大変です!」
「どうかしましたか?」
「人が、町の人が一斉に消えました!」
ニーガタの町の住人が消えた本当の事件はこれから始まるのであった。