「タツヤ…タツヤ…」
明け方、ゴンザレス太郎は自身を呼ぶその声に目を覚ました。
隣のベットではフーカが静かな寝息を立てている…
「タツヤ…タツヤ…」
聞こえる、間違いなくこれは…サラの声だ!
ゴンザレス太郎は音の発生源が分からない事に警戒し、フーカを起こし装備を整える…
「タツヤ…タツヤ…」
「聞こえないかフーカ?」
「うん、私には何も…」
その頭の中に響く声はフーカには聞こえないらしく、警戒を強めながらゴンザレス太郎とフーカは招かれる様に宿を出て、頭の中に響く声を便りに方向を確認する。
明け方と言うことで空気はまだ冷たく、砂漠の夜がどれだけ過酷かを理解している二人はお互いをフォローする魔法を掛け合う。
「寒さはなんとかなるけど、傷だけは負わないようにしないと…」
そう、砂漠のような乾燥した土地で寒いと皮膚がひび割れを起こす。
それが呪いに反映されるかは分からないが、警戒はした方が良いのは確かだ。
僅かな打撲ですら消えた人が居るのだから…
そして、助けた人達が再び消えたことからラストエリクサーですら呪いは解けないと言うことを現している。
「タツヤ…タツヤ…」
「こっちだ…」
二人は声のする方へ歩く…
そして、オアシスの前に二人が居た。
「サラ!」
フーカが声を掛ける。
だがサラは反応しない、まるで何も感じない人形のように直立不動で無表情であった。
そして、その横にいるのはこの町の住人の一人であった。
その人物もサラと同様に直立不動で無表情…
「これは一体…」
罠の可能性を考え二人は動かない…
そんな二人に突然声がかけられた。
「いやっはっはっはっ!直ぐに近付くと思ったけど中々慎重じゃないか!」
それはオアシスの水中から現れた。
水色の透明な体だが、直ぐに分かった。
目の前のそいつはあのゴーレムであった。
ゴンザレス太郎が逆ピラミッドの中で粉々に倒した筈なのにそいつはそこに居たのだ。
「初めましてっと挨拶をしておこうかな?神殺しのゴンザレス太郎君、前回は名乗れなかったからね、私はダマだ」
その言葉に驚く二人、何故ならばゴンザレス太郎がマリスを倒したのを知ってるのは今回の世界ではフーカとサラだけなのだ。
それはつまり…
「サラの記憶を読んだのか…」
「いやはや、本当に君は素晴らしい。強いだけでなく頭も回るからね、君に倒されたおかげで私の呪いは一段階成長したよ」
呪いの成長、とんでもない事をさらっと言われた事もあり、二人の警戒は強くなる。
何せ傷一つで敗北が確定するのだ。
「新しく得た『呪った相手の記憶を読める能力』のおかげで操った人間のユニークスキルまで使えるようになったからもう私は敵無しさ」
その言葉でゴンザレス太郎は理解した。
さっきのはサラの声を横の女性がユニークスキル『テレパシー』で送ってきてたのだ。
その表情の変化を見てゴーレムの女『ダマ』はゴンザレス太郎が全てを理解した事を確信した。
「やはり私の敵になりそうなのは君だけみたいだね、ますます君が欲しくなったよ。君の持つスキルさえ使えれば私は最強になるからね」
「そりゃどーも、でも悪いが俺にはもう二人も生涯を誓った人が居るんでね」
「ふふっ振られたか。なら仕方ない肉食系女子としてアタックさせてもらうよ!」
ダマが水面から全身を現す。
朝日が反射して煌めくダマとの戦いが今始まる!