「水蒸気爆発、水が熱せられて気体となるときに体積が約1700倍になる現象。だったか、凄まじい威力だな…」
銀髪の少女が座っていた。
その膝に頭を乗せているのは意識の無いゴンザレス太郎であった。
かろうじで結界の防御が間に合い即死は免れたが、かなり深刻なダメージを負ってるのは一目で分かるくらいボロボロになっていた。
「まさかこうしてお前に再会する日が来るなんて思いもしなかったよ。」
ゴンザレス太郎の顔に手を触れさせて親指でその唇をなぞる。
まるで恋人との一時を楽しむような雰囲気の中、銀髪の少女は意識の無いゴンザレス太郎に話し掛ける。
「お前が私の事を知っている理由も知りたいし、この世界の真実も伝えたい、話したいことがいっぱいあるんだ。でも今はこの二人だけの時間を堪能させてくれ、何万年も耐えたご褒美にこれくらい良いだろ?」
誰に聞くわけでもない、ただの独り言だが世界がそれに答えるように風がやむ。
神マリスだった不老不死の銀髪少女ミリーはゴンザレス太郎の唇をなぞった自分の指にキスをする。
人が居なくなり静寂に包まれた町の中で二人は静かに時を堪能するのであった。
「素晴らしい、まさかあれほど凄まじい威力だとは思わなかった。」
そこは真っ暗な空洞、そこに一体のゴーレムが居た。
ダマである。
「私の液体ゴーレムのボディが一瞬で蒸発するとは思わなかったよ」
ダマが視線をやると、そこには無表情で両手をダラリと下げたサラとフーカが居た。
二人とも水蒸気爆発でかなりのダメージを負っており、全身はボロボロで本来なら直ぐにでも治療が必要な状態であった。
「フーカとか言う小娘だけか…ゴンザレス太郎は呪われてここに来ないと言うことは爆死したのか、勿体無いことをした。」
ダマはゴンザレス太郎の至近距離で水蒸気爆発ぎ起こった為、それに巻き込まれたゴンザレス太郎が生きていればここに居るはず。
そうでないと言うことは即死していると考えたのだ。
あの距離で自身の体が一瞬で全て蒸発する程の爆発を生身で受けたのだから、生きているわけがないと結論を出したのだ。
「しかし、この転生者ナジムの知識は凄い。異世界にはこれが常識レベルであると言うのだから早く行きたいものだ。」
そう言いダマは3つの金属を手に取る。
それは幻の金属と言われる『オリハルコン』と『アダマンタイト』と『ヒイロカネ』である。
「さぁ、この知識と呪われた人間達の力で最強の私の体を作ってみせる!」
ダマの指示に従い人間達は動き出す。
世界に残されたゴンザレス太郎と言う一つの希望のみを残して悪夢は現実に形作られていくのであった。