ニーガタの町のとある民家、住人が居なくなったその家のベットでゴンザレス太郎は目を覚ました。
ゆっくりと開かれた目に飛び込んできた光景に普段なら「知らない天井だ…」と普段なら某アニメの台詞を言いそうだが、意識を失う前の事もあり…
「ん…こ、ここは?」
と普通の呟きが漏れた。
そのまま、知らない天井から視線を移し、周りを見ようと体を起こそうとするが…
「あぐっ?!」
突然の苦悶の声、全身に激痛が走り起こしかけた体を再び仰向けに倒した。
激痛に意識が覚醒するが、どういう状況なのか理解の及ばないゴンザレス太郎。
「なんだ…何があった…」
記憶を辿ろうとするが今度は激しい頭痛に思考が停止する。
本能が思い出すのを拒絶しているかのようであった。
「あっ?起きた?」
何処かで聞いた懐かしい声が耳に届く…
倒れた状態のまま視線だけそっちに移し、ゴンザレス太郎は驚いた。
そこには何度も転生を繰り返したが会う事は無かった存在、銀髪の少女姿の元神…
マリスだったミリーが居たのだ。
水着エプロンで…
「おっお前何してるの?!」
「ん?いや~ゴンザレス太郎こういうの好きだろ?」
「まぁ…かなり悪くないが…って一体何が…イテテ…」
「はいはい、怪我人は無理しないの」
そう言ってミリーが嬉しそうに持ってきたのはお粥であった。
忘れもしない、遥か昔にゴンザレス太郎が一度だけ味見をしたミリーの手作りお粥…
この世界には米がないので、代わりにクルトンの様なパンがスープを吸ってふやけた物が入っているのだが、そのスープが問題なのだ。
あの時と同じ緑色と青色のスープ…
以前一口食べて、死ぬほどのダメージにも耐えたゴンザレス太郎が一瞬で意識を刈り取られた恐るべきスープ。
あの時は確かに言った筈だ…
『作ったら人に食べさせる前に自分で味見をしろ』と
そのスープを見ただけで全身から脂汗が吹き出る、細胞一つ一つが拒絶しているのを理解したゴンザレス太郎は必死に逃げようとするが、動こうとした全身を襲う激痛に邪魔され身動きが取れない。
「ほら、無理しちゃ駄目でしょ」
ミリーがゆっくりと近付いてくる。
綺麗な笑顔が逆に恐怖を駆り立てる!
怪我をして動けなくなった一般人がゾンビに襲われるホラー映画の光景が脳裏を過る…
ゴンザレス太郎はあまりの恐怖に顎が震えだした。
「まずはこれを食べて元気になって」
そう言ってミリーがスプーンで掬ったお粥が目の前に出される。
緑と青のスープから紫の湯気が上がり、目の錯覚か湯気がドクロの形にも見えたそれをミリーは「エイッ」っとゴンザレス太郎の口の中に突っ込んだ。
その瞬間、オアシスで起こった出来事を思い出した。
ダマと名乗るゴーレムに水蒸気爆発で吹き飛ばされたことを思い出したのだ。
俗に言う走馬灯である。
だが…
「むぐっむぐっ…もむもむ…ゴクン。美味い」
「本当?!嬉しい!」
無邪気に笑うミリー、先程までと違いその笑顔に癒されるゴンザレス太郎。
元々神に性別は無い、だから恋愛対象になった相手と違う性別に変化していく…
と以前聞いた事でミリーはゴンザレス太郎に惚れていた事をその顔を見て思い出した。
「へへーん!ミリーちゃん特製『ポーションとエーテルのエリクサー粥・改』美味しいでしょ?」
無邪気に笑うミリーの口から聞かされた料理名に色々聞きたいこともあったが、ゴンザレス太郎は彼女に一言…
「ありがとう」
その言葉にミリーは満面の笑みで答えるのだった。