「さて、色々話したいことや聞きたいこともお互いにあるだろうから、少し話をしようか」
ミリーがゴンザレス太郎の寝ているベットの横に椅子を置いてそこに座る。
水着エプロンが短いスカートみたいな感じで、パンツがチラリと見えているような状態なので目をそらすゴンザレス太郎。
「ふふっやっぱりタツヤなんだね」
「なんか調子狂うな、俺が死ぬときまでお前呼ばわりしてたくせに」
「そうだね、流石に何万年も少女やってるとね」
「ん?それってどういう…」
その時ミリーが抱き付いてきた。
いきなり予想もしてなかった行動、なので完全に不意を突かれて受け入れてしまうゴンザレス太郎。
フーカに見られていたら修羅場待ったなしである。
「まさか、こうしてまた会えるとは思わなかった」
「それは俺もさ…」
少しの沈黙。
ゴンザレス太郎は少し違和感を感じるミリーの様子に抵抗はしなかった。
そして、少しして離れたミリーが話始める。
「タツヤって呼ぶけど良い?」
「もう呼んでる癖に、好きにしなよ」
「うん!」
かつてフーカを死の連鎖に追いやっていた人物とは思えない変わりようだが、ゴンザレス太郎は話の内容が気になるので黙って話すのを待つ。
潤んだ瞳が瞬きを堺に覚悟を決めた瞳に変わり、ミリーは口を開いた。
「まずタツヤは自分が寿命で死んだのは分かってるんだよね?」
「あぁ」
「私はあれから生き続けたわ、サラも死んで私の事を知っている人は誰も居なくなった」
ゴンザレス太郎は地球で生きてた時に読んだことのある小説などで、長寿のエルフが孤立する話を思い出しながら聞いた。
「そしてね、異界歴999年にあることに気が付いたの。」
異界歴はこの世界の年号だ。
ちなみに今は異界歴175年である。
「ねぇ、異界歴999年の翌年って何年だと思う?」
「1000年じゃないの?」
「違うの、0年なの」
これが不老不死の命を持つミリーだけが知ったこの世界の秘密。
現代日本でも2000年問題と言う形で話題に上がった事もある内容であった。
「そして、気付いたの。自然は私が設定した形に時と共に戻っていき、アムステルダの町の西には消滅した山が出来ていた。そして、同じ年の同じ日に同じ人が生まれたのよ」
これがこの世界の誰も知らない形であった。
そして、ミリーがこれを知ったと言う事実が1つの事実を暗にしていた。
つまり、世界を想像したマリスがこれを知らなかったと言う事は…
「それじゃ、タツヤの話も聞かせて。なんで記憶があるの?」
あまりの衝撃の事実に頭の中で一つの仮説が立つのだが、ミリーの言葉に我に返りゴンザレス太郎も語り始める。
「俺達はユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』のコード『スキルの自由選択』で『転生タイムリープ』を使って…」
そこまで話してゴンザレス太郎も気付いた。
「…なるほど、納得がいったよ。」
そう、『転生タイムリープ』と言う言葉を紐解けば答えは直ぐに分かったのだ。
すなわち、転生して時間(タイム)を跳躍(リープ)するスキルだったのだ!
「そうか…タイムループじゃなくてタイムリープなんだ…」
「相変わらず凄まじいのに抜けてるんだねタツヤは」
これが消滅の光で消されたフーカが、フーカだけが戻らなかった理由であった。
消されたフーカは既に1000年後の世界へ飛んでいたのだ。
真実を理解して驚くゴンザレス太郎を見て微笑むミリー。
「歴史が延々と続いている、だからこそタツヤを助けられたわけなんだけどね」
そう言ってミリーは懐から水の滴みたいな形のアクセサリーを取り出した。
そう、怪我を負ったゴンザレス太郎が呪いを受けずにミリーに助けられたわけがそれだったのだ。
それはかつてゴンザレス太郎が『埋めたアイテムランダム変化』で産み出して、マリスのデスポイズンを浄化したあらゆる汚染を浄化する伝説級のアイテム『女神の涙』であった。
運命の歯車は複雑に絡み合い動き出す。