ジリジリと後ろへ下がるダマをゆっくりと追い掛けるゴンザレス太郎。
ダマの体は自己治癒で既に完治してはいるのだが、ゴンザレス太郎の言い放った『残り15発』と言う言葉が引っ掛かり恐怖していた。
例え15発同じ箇所に集中攻撃を喰らってもやられない自信はあるが、サラとフーカの記憶を読んだ事でゴンザレス太郎と言う存在の規格外さを理解しているのだ。
その為、ゴンザレス太郎の言葉がただの虚勢ではないと言う事が頭に浮かんでいたのだ。
(15発殴られたら体が壊れる何かを仕込まれているのか?!)
そう一度考えてしまったら体は逃げ腰になり、まともに戦える状態では無くなっていた。
ここまででさえ、常識外れの事象を次々と起こされているのだから仕方ないだろう。
「ギャッ!?」
離れた位置から瞬時に接近され、殴り飛ばされる。
直ぐに起き上がり、ダマの頭の中に残り14発と言う言葉が響き渡る。
一体何が起こるのか分からない、ダマのその感情は人と同じであった。
未知なるモノへの恐怖に怯える、その根底にあるのは想像の力。
「ぐわっ!?」
残り13発…
「ぎゃあ!?」
…残り2発。
「う、うわぁぁぁぁ!!」
ダマは逃げ出した。
しかし、移動速度でも理論値を超えているゴンザレス太郎は瞬時にダマの逃げる先に回り込み、殴り付ける!
「さぁ残り1発だな」
ダマの頭の中で人から得た知識に『窮鼠猫を噛む』と言う言葉がよぎる。
(ばかな!そんなものは理性の無い畜生の行動だ!)
ダマは顔を振りゴンザレス太郎を睨めつける!
「最後に言い残すことは?」
ゴンザレス太郎の言葉に、まさに恐怖が具現化したように震えが止まらないダマ。
自身の金属の関節が擦れる音に、自身が恐怖を感じている自覚をしたダマは口を開こうとした時だった。
ドーン!!!
それはニーガタの町の方から聞こえた爆発音。
ゴンザレス太郎の本来の目的をダマはそれで察した。
誰も居ない筈のニーガタの町で何かをして、ここでの戦闘の真の目的は時間稼ぎなのだ!
つまり、自分を倒す方法は存在しない!
「見切ったぞゴンザレス太郎!全てブラフだったのだな?!」
そう、自分の体を傷付けるのが精一杯であるゴンザレス太郎に、今の自分が負ける筈が無いと理解したダマは威勢良く立ち上がった!
そもそも相手は素手でこちらは無敵、どんなに攻撃されようと自己治癒する自分と、傷一つで呪われるゴンザレス太郎、普通に考えれば負ける道理は無いのである。
そして、僅かに見えたゴンザレス太郎の拳の影と共に自身の体が粉砕されるのをその目で確認する…
「えっ…?」
視界の隅に見えたフーカとサラは何故かゴンザレス太郎の背後に居る。
何がどうなっている?
分からない分からない分からない…
そして、ダマの最後の意識は101発目のゴンザレス太郎の拳と共に消え去るのであった。