海沿いではしゃぐ3つの人影が在った。
「後3歩前だよー」
「タツヤ、もうちょっと右」
「行きすぎよ!ちょこっと左」
「そうそこ」
「いっちゃえタツヤ!」
目隠しをしたゴンザレス太郎は二人の声を頼りに歩を進め、指示された場所で手にした木刀を振り上げる、そしてそれを一気に降り下ろし…
「や、やめろー!助けてくれぇー!」
木刀はその勢いだけで目の前の海を割り、発生した斬撃が何処までも飛んでいく…
直ぐ斜め前で地面から首だけ生やした男はあまりの恐怖に失神していた。
「あら?気絶してるわ。もぅ、根性なしね」
「サラ、タツヤは私達のために本気で怒ってる仕方ない」
サラとフーカはゴンザレス太郎手作りの水着を着ている。
照り付ける太陽の下、他に人の居ないまさしくプライペートビーチの様な浜辺でその美貌を披露していた。
ゴンザレス太郎も二人を凝視するとちょっとアレがアレするので、目隠しを外しても視線をそらす。
転生前は二人相手に沢山子供まで作って居るのだが、それでも微笑ましいくらいウブだからこそ、いつまでも仲良くイチャイチャ出来るのだろう。
浜辺の地面に埋って顔だけ出したまま気絶している6人の男達、彼等がどうしてこうなっているかと言うと…
時は昨夜に遡る…
ニーガタの町を西へ出発し、翌朝3人は砂漠を抜けた。
そこは何処までも続く大平原。
この世界最大の弱肉強食の世界が広がっていた。
ライオンの様なカエルが、大量の犬の顔を持つ蟻に襲われ白骨になる。
ダンゴムシの様な体に羽根の生えた蝶が火を吐き、その勢いで二足歩行で追い掛けてくるキリンから逃げる。
水溜まりと思わせて実はスライムという魔物が突然空高く飛び上がり、空を飛ぶ自転車に羽が生えている様な鳥を襲う。
ここは人間が避けて通る事で有名なこの世の地獄『帰らずの平原』
その中をじゃんけんで負けたゴンザレス太郎が、二人の荷物を持ちながら次の大岩まで移動している。
魔物は一匹たりとも近寄らない、戦って勝てる勝てないの次元でないのを本能で理解しているからだ。
それでも怖いもの知らずな生き物は勿論居り、3人に迫るバッファローの様な大きな陸を走る海老が…
「はい、タツヤあーん」
「サラ、焼いただけじゃダメ。味付けしないと」
一瞬にしてサラにこんがりと調理され、3人のオヤツになっていた。
そして、帰らずの平原を普通に徒歩で抜けた3人は美しい海沿いの道に出た。
ここまでくれば人の行き来もあるのだろう、平原を避けるように道があり、視界に入る海を見てテンションの上がる3人。
それはそうである、その海は魔海ではなく泳いでも大丈夫な海である!
急ぐ旅でもない3人は海で遊ぶことを決め、そこで夜営をする事にしたのだが、3人が帰らずの平原を徒歩で抜けてきたのを見掛けた男達が居た。
「あいつら間違いなく強力な魔物避けアイテムを持ってるに違いない!」
「でへへ、兄貴おであの黒髪の女の子欲しいんだな」
「あの優男は奴隷に売り払うとして女二人は俺達で暫く楽しめそうだな」
「うへへへへ、今夜が楽しみだぁ~」
彼等は知らない、その3人が今の10000倍の戦力があっでも誰か一人に傷一つ付ける事も出来ないことを…