異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第36話 渡し船が出せなくて…

ゴンザレス太郎達が辿り着いたのは海辺に出来た小さな村であった。

ここから対岸に見える島への渡し船に乗り、更に西を目指すのが旅の正しいルートなのだが、ゴンザレス太郎達は困っていた。

 

「船が出せないってどういう事よ?!」

 

着いて早々、船着き場の強面の男達に西へ向かいたいと訪ねたのだが…

 

「渡し船は今はない」

 

そう言い渡されたのだ。

ニーガタの町でギルドマスターに聞いた話では、この村と対岸の町は定期便が毎日往復しており、町から冒険者ギルドの仕事でこちらに来る人が居る。

なのでタイミングによっては『予約が必要なほど便がある』と聞いていたのだからサラの怒りも最もだ。

だがサラの怒りの言葉に船乗りは言い返す!

 

「仕方ねぇだろ!ミミックジラが出現しているんだから!」

「ミミックジラ?」

「木の箱みたいな体のどでかい魔物さ、船の木材が好物でもう何隻もやられたんだよ、ほらあれだ」

 

そう言って漁師が指を指した方向の海の上に巨大な宝箱が浮いていた。

その宝箱の箱が海上で勝手に開き、その鍵穴から斜め上に潮を吹いている。

だが次の瞬間、突然水上で爆発が起こる!

 

ズガーーーン!!!!

 

一瞬にして木っ端微塵になるミミックジラ。

勿論サラの仕業である。

かなり距離があるにも関わらず、一瞬でそこに火の魔法を出現させ、先日見て覚えたばかりの水蒸気爆発を海の水を使用して発生させて吹き飛ばしたのだ。

 

「なっ何事だ?!」

 

座ってた漁師達がその爆音に慌てて立ち上がる。

そして、全員おろおろし出すのでサラが胸を張って…

 

「吹っ飛ばしたわ、これで行けるわね!」

「お、お前なんて事をしてくれたんだ?!」

「なによ、邪魔な魔物倒してあげたんでしょ?」

「馬鹿言え、あんな事したら…」

 

そこまで言われてサラも理解した。

こちらに向かって波が大きくなってる…

そう、津波である。

 

「全くサラは…」

 

再び漁師達は度肝を抜かれることとなる、フーカが指を鳴らそうとして…

 

「スカッ」

 

と言う手と指が擦れる音と共に津波が粉々に砕けたのである。

明らかに指パッチンの失敗であるが誰もそれには突っ込ま無い。

目を疑うような事象にそれどころでは無いのだろう。

船乗り達を飲み込みそうな津波は、まるで風に溶けるように海面から上の部分の水が細かい結晶となり、サラサラと海の中へ消えていく。

その幻想的とも言える光景にただただ海を見守るだけの一同。

 

だがそんな静寂を打ち破るように、沖合いのサラが吹き飛ばしたミミックジラの残骸を更に巨大なミミックジラが一瞬で丸飲みにする。

 

「一匹じゃないんだ…」

 

そのゴンザレス太郎の呟きで漁師達も我に帰る。

そして、何かを話そうとした時だった。

 

「やっと見付けたわよ!」

 

一同は声のした方を見て唖然とする…

そこには何故か下着姿のもう一人のサラが居たのであった。


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