久し振りの風呂に加え、布団で寝られたと言うことで朝日が差し込み顔を照らすまでグッスリと眠り続けた一同。
しかし、微睡みの朝は慌てた美声によって唐突に終わりを告げる。
「たっタツヤ!?起きてタツヤ!!」
フーカの慌てた声で飛び起きたゴンザレス太郎、寝起きにもかかわらず意識はハッキリしていた。
ゴンザレス太郎のステータス『精神』の値がカンストしているのも理由の一つだが、それが関係無いとしても冒険者として夜営で何かあった際に直ぐに動けるように鍛えていた経験あってのものでもあった。
そんな寝起きのゴンザレス太郎の視界に入ったのは、浴衣を着崩している事で起きたばかりなのだろう…
そう理解できるフーカとサラの姿であった。
「タツヤ、あれ…」
そう、サラが指を指したのは枕の上に頭を置いた藁人形であった。
まるで寝ながらこの姿になったかのようで、浴衣が着ていたままの姿で布団の中に入っている。
「きっとこれがドッペルドールの正体なのよ」
サラのその言葉に昨夜聞いた話を思い出すゴンザレス太郎とフーカ。
とりあえずお互いに他に何か実害が何か無かったか確認するため、3人は荷物のチェックを行う。
「こっちは大丈夫」
ポニーテールのまま浴衣が着崩れているフーカは大丈夫。
ゴンザレス太郎も特に問題はない。
まぁ何か無くなっていたとしても、いざとなったら『使用したことのあるアイテムランダム復元』のコードでアイテムを産み出せるので問題はない。
そして…
「もう一人の私が装備していたものは無くなってるわ」
居なくなったもう一人のサラがこの藁人形なのかは分からない。
状況的にそう考えるのが一番自然と言えるだろう。
しかし、確信が得られないのも事実…
その藁人形を見たフーカが何も言わないからである。
分かったことと言えば、調べた結果彼女が身に付けていた物だけが全て無くなっているらしかった。
被害としては非常に小さく、何が目的だったのか本当に分からない…
結局悩んだ末、そういう魔物だったと言う事で3人は納得した…いや、納得せざるを得なかった。
何が起こっているのか誰にも理解できなかったからだ。
「それにしても…この藁人形なんなんだろうね」
そう言って藁人形を手に取るツインテールのサラ、チラリとゴンザレス太郎の描いた絵を見ながら寂しそうな瞳で呟くのだった。
少し離れた場所に二人の人物が居た。
ゴンザレス太郎達の泊まってる宿を見上げ…
「ククク…まず一人…」
「ニウム様、次はどちらを?」
「ヤツは最後に回して、あの黒髪の娘にするか…」
「畏まりました」
一人の姿が消える。
ローブを着込んだ男はそのまま何処かへ歩いていくのだった。