「サラ!?」
一人のフーカがサラの存在に気付き、声を出した。
すると一斉に残り4人のフーカもサラの方を見ていっせいに話し出す。
「サラ私が本物…」
「違う!私…」
「こいつら偽物…」
一斉にフーカ達は被せるように話すので、同じ声が重なり合って途中から言葉になってなかった。
「違う…」
サラは一言そう告げて森の方へ駆けていく。
そこは普段、向こう岸の冒険者達が狩りに来る野生の魔物が多数存在する森なのだが…
「こんなやつまで…」
サラの前に現れたのはゲル状の赤い伝説の魔物『レスライム』であった。
かつてゴンザレス太郎とフーカが寿命で死んでから発見されたこの魔物、人でも魔物でも食えば食うほど強力になっていき、最終的には世界を滅ぼしかけた程の魔物である。
恐ろしいことに魔法も打撃も一切通じず、唯一魔海の水が弱点だった為になんとかなった恐ろしい魔物である。
「こんなところに居たら森が食い尽くされちゃう!」
サラはレスライムが喰えない土を魔法で吹き飛ばし、森から外へ誘導する。
そして、森を出た時にそこに居たのは多数のニウムに囲まれる数人のフーカであった。
そして、サラの目の前でフーカ達はいっせいに藁人形に戻される…
「どうかね?魔王の娘よ、この趣向楽しんでもらえてるかね?」
「全く悪趣味としか言いようがないわ」
「くくく…まぁ楽しんでもらえたのなら良かったよ」
そう言ってニウムが左手から放った炎弾がレスライムに当たり、瞬時に藁人形に変わる。
「魔物すら貴方の藁人形が触れてれば変えられるって事はもしかして…」
「御名答、ミミックジラの群れも私の藁人形だよ」
「全くとんでもない能力ね」
「今頃お仲間の黒髪娘も偽物達に疑われ疑心暗鬼になってる事だろう、あの娘も今夜が最後の夜だろうがな…」
「本当に用意周到ね」
「安心しろ、あの男はあのお方のお気に入りだからここでは手を出さんがな」
「あら?貴方タツヤに勝てると思ってるの?」
「ふっいくらでも手はあるさ、さてそろそろお前には藁人形に戻ってもらうとするか」
「そうか…ここまで執拗に追って来るってことは、最初から狙いは私だったのね?」
「くくく…そうさ、お前の美しさはどうしても俺の奴隷コレクションに欲しくなってな。次に藁人形から戻ったお前はこの『専属奴隷の首輪』で自由を奪って何度でも可愛がってやるから安心しな」
ニウムは告げながら懐からチラリと見せた首輪を仕舞いサラに左手を伸ばす。
「ねぇ、最後に教えて…貴方が本物?」
「くくく…偽物に最後を迎えられるのはプライドが許さないって訳か、ますますお前を可愛がるのが楽しみになってきたよ。」
「教えて!」
「あぁ、俺が本体だ。さぁ今楽にしてやる」
転移によって付けられたサラの体にめり込んでいる鎖のせいでサラは思うように体が動かせず、戦うこともままならなかった。
その為ろくに戦う事も出来ず追い込まれてしまった。
そして、ニウムの左手が遂にサラの肩に触れた。
「さらばだ魔王の娘よ…そしてようこそ私のコレクションに…」