異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第52話 スペニの秘密

「いやいや、見事だったよ」

 

差し出された手を握りゴンザレス太郎は立ち上がる。

そして、気付く・・・怪我が治っているのだ!?

 

「あぁ、心配しないでいいよ弟よ、ゾンビにはしてないから」

 

ゴンザレス太郎の考えを見抜いたのか、先に返事が返って来た。

現在居る場所が何処か分からず、姿が見えなくなっているサラの事も気になる。

もしあのまま戦ってたら間違い無く殺されていた。

そうしたらサラはこの後どうされるか分からない、なのでゴンザレス太郎は敗北を受け入れ情報を得ようと考えたのだ。

 

「それじゃあ、とりあえず戻ろうか」

 

スペニが指をパチンっと鳴らすと再びあの椅子の在った部屋に戻っていた。

 

「タツヤ!?」

 

サラが後ろに立っていた。

ゴンザレス太郎の体の怪我は既に治っているのだが、衣類はボロボロになっていたので心配したのだ。

そして、サラのその言葉に驚いて顔を上げて何かを言おうとするミリーが居た。

 

「はははっ私の嫁さんが君達に何か伝えたい事があるみたいだけど、とりあえずは私からの話をさせてもらおうかな」

 

そう言って椅子に座りミリーの後頭部に足を乗せ、その顔を下へ向けさせる。

悔しそうなミリーの顔、だがゴンザレス太郎なら何とかしてくれると考えているのかもしれない。

今さっき完全な敗北を植えつけられたと言う事を知らないからそう考えていたのもあるのだが・・・

 

「それじゃあまずは自己紹介をきちんとしないと駄目だね、私の名前は『スペニ』君の兄だ」

「それは一体どう言う事ですか?」

 

ゴンザレス太郎、機嫌を損ねないように慣れない敬語で話す。

 

「はははっそんなに緊張しなくても今すぐに君たちをどうこうするつもりは無いから安心してくれ、順に話をしないと駄目かな?君たちはこの世界が1000年で1周すると言う事は知っているよね?」

 

その言葉に無言で頷くゴンザレス太郎とサラ・・・

 

「ならもう分かったんじゃないかな?」

「そうか・・・」

「えっ?何タツヤどう言う事?」

「はははっ本当私の弟は優秀だ!」

 

ゴンザレス太郎は全てを理解した。

 

「確かにそれなら貴方は兄と呼べるかもしれませんね」

「だろ?」

「サラ、彼は・・・俺だ」

「えっ?」

「正確には俺が転生する1000年前の俺だった人物だ」

「おっと、勘違いしないでくれよ。弟が転生されたから私が輪廻から外れた訳じゃない、私はその時からずっと生きているのだよ」

 

それは簡単に話しているが、実にとんでもない事実であった。

つまりゴンザレス太郎がこの世界に転生した1000年前に生まれて同じ人生を送った人物なのだ。

そしてそれこそが彼の名前の秘密に繋がる・・・

 

「つまり兄さんの本当の名前は『スペニ』ではなく『ペニスたろ・・・』」

「そこまでだ。それ以上言うと弟でも容赦なく殺すよ」

 

そう、ゴンザレス太郎は前世の記憶が在り、名づけをされる時に拒絶の意思を示して泣いたので『ゴンザレス太郎』と言う名前になったが、兄は本物の赤子だった為にそのまま名付けられたのだった。

 

「名前は違っても弟の得ているのと同じユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』を授かってね、私は大人になって世界を旅した。そしてデウス様に出会った。」

 

これが彼の真実であった。

そして、彼はデウスに惚れデウスから永遠の命を頂いたという事まで聞いた。

それは不老ではあるが不死ではないと言う。

 

「そして、デウス様が捜し求めていたのが弟の嫁のフーカとか言う娘だというから面白いものだね」

「そ、そうよフーカは何処よ?!」

「彼女は既にデウス様の元へ行った。今頃はお前たちの事を忘れてデウス様に忠誠を誓っているだろう」

「で・・・デウスと言うのは一体何者なんだ?!」

「デウス様はこの世界を作った三大神の一人、まぁこのミリーとそこのダマと並ぶかと言われたら並ばれるわけないがな」

「だ・・・ダマ?!」

「ん?あぁそう言えば弟が彼女を倒して止めたんだったね、あれは彼女の操るゴーレムだよ。彼女の本体はデウス様が封印していたのをこのミリーが助けようとしてね・・・」

 

頭を足で押さえられているミリーが必死で目でゴンザレス太郎に何かを訴える。

しかし、言葉が話せないのか口をパクパクさせるだけでミリーからは何も伝わってこない。

 

「本当君は強情だなぁ~」

 

ミリーの頭に一度上げられた足が降ろされる。

ゴンザレス太郎と戦った時とは違い、物凄く手加減されているのだろうが、それでもミリーの顔面が地面にぶつかるには十分だった。

 

「あぁ、安心して殺さないよ。殺すと別の場所で復活できるからここから逃げ出せるからね」

 

スペニは薄ら笑いを浮かべながらそう告げた。

 

「さて、弟よ。質問だ。お前は私と共にここで暮らす気はあるかい?」

「突然なにを・・・」

「私はお前が気に入っていてね、デウス様以外で私の攻撃を受けても生きていられるってのはお前が初めてなんだ」

「フーカは・・・どうなる?」

「あぁ~彼女はデウス様が色々調べるのに使うだろうからもう戻っては来ないよ。だけど女が欲しいなら用意するよ、こんな風に!」

 

スペニが指をパチンっと鳴らすとゴンザレス太郎の前に女性が数名現われた。

そして、その中には・・・シズクが居た。

 

「シ・・・シズクちゃん!?」

「あぁ、心配しないでくれ。それは俺の時代のシズクちゃんだから」

 

その目を見れば一目瞭然・・・彼女達は全員ゾンビだ。

 

「私の命令には絶対服従だから、お前の命令を聞くように告げれば好きにしていいんだよ」

「要らん!」

「そうか残念だ。交渉は決裂って事でいいのかな?」

「あぁ、フーカがここに居ないならそのデウスってのに直接会いに行って返してもらう」

 

そう告げるゴンザレス太郎の背後に女性のゾンビが回りこみドアの前に立ちはだかる

 

「ここから逃がす気は無いよ。君たちはずっと一緒にここで暮らすんだ」

「生憎とっても便利なスキル貰ったからその言葉には答えられないな」

 

ゴンザレス太郎はサラを抱き寄せ転移でその姿を消す。

 

「やれやれ、それじゃあ鬼ごっこを開始しますかね」

 

スペニのその言葉に無言で頷いたゾンビ女達が瞬時にスペニに転移させられる。

 

「しかし、あの程度の力で私を倒す可能性だと・・・デウス様も完璧ではないという事か。」

 

それはデウスから言われた一言・・・

ゴンザレス太郎だけがスペニを倒す可能性が唯一ある人物であると・・・

スペニはその言葉を笑いながら頭から振り払い、開始された鬼ごっこを堪能するのであった。

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