「あぁ、素晴らしい!弟との命の共演!なんて素敵なんだ!」
まるで舞うように連続で打撃がゴンザレス太郎に打ち込まれる。
既に何時間二人は戦ってるのか分からない。
通常なら数千回は殺されている筈のゴンザレス太郎、だが彼は立ち上がる。
その目にはまだ闘志が宿っていた。
「ふむ、何かを企んでいるみたいだね」
「あぁ、勿論お前を倒すためのね」
「ははははっ!凄いよ流石弟だ!」
裏拳で殴られたゴンザレス太郎は顔面を陥没させながら地面を転がる。
そして立つ。
「一体この状況でどうやって勝つつもりだい?」
「勿論お前がミリーにしたようにミリーの目の前でお前の後頭部を踏みつけて…さ」
「面白い!我が弟、ゴンザレス太郎のその願いの手伝いをしてやろうじゃないか!」
スペニが指を鳴らすとそこにあの椅子と、それに繋がれたミリーとダマが現れる。
そしてミリーは驚愕する!
その部屋に付いた血の後に…
それは全てゴンザレス太郎の血であった。
「タ…ツ…ヤ…」
「頑張ってる弟に特別に話をさせてやろうじゃないか」
「声が…出る!タツヤ逃げて!こいつには誰も勝てない!」
「待ってなミリー、もうちょっとでコイツ倒して解放してやるからな…」
無理にでも笑顔を見せるゴンザレス太郎。
今まで彼が起こしてきた奇跡は確かに実績だが、スペニの力の事も知ってるミリーはその言葉をとても信じられなかった。
「私を倒すだと?よく言った。さぁ続きを始めようじゃないか!」
そして再び吹き飛ばされるゴンザレス太郎…
さっきまでと何も変わらない状況。
だった筈なのだが異変は起こった。
「へっ?」
殴られたゴンザレス太郎の反撃の一撃、スペニの鼻から鼻血が垂れたのだ。
本来それは有り得ないこと、だが確かに今ダメージがあったのだ。
「な、何をしたー!?」
再び襲いかかってきたスペニの攻撃と相討ちで攻撃を当てるゴンザレス太郎、すると今度は確実に目に見えて痛みを受けたスペニ。
怪我は一瞬で二人とも無くなるのだが、明らかにスペニに異変が起こっていた。
「な…なんだこの痛みは…くそっ、ふざけるなぁ!」
今度は相討ちで二人とも吹き飛ぶ!
スペニは意味が分からなかった。
だが徐々に心にそれは宿り始めていた。
それとは『恐怖』、目の前のゴンザレス太郎にスペニは恐怖を感じていたのだ。
「一体、何が…どうなっている?」
「もうすぐお前の敗けが確定するんだよ」
ゴンザレス太郎が近付いてくる。
「くっ来るな!来るな!」
スペニは自分の体に起こっている事に全く気付いていなかった。
そして…
「ぐわぁぁぁ!」
ゴンザレス太郎の拳で初めて悲鳴を上げた。
勿論直ぐに怪我は治る、だが明らかに受けてるダメージがおかしいのだ。
「さて、これがお前を殺す最後の一撃だ」
ゴンザレス太郎は右拳を突きだして語る。
「この…私が…負けるわけ…」
「眠れ永遠に!」
その拳はスペニの腹を貫いた!
そして、その腕を抜くと共に直ぐに傷は治る。
だがその激痛に頭を下げて丸まったスペニの頭部を踏みつけ、ミリーの方へ土下座するように地面に叩きつけた!
「ぶぁぉぉあぉぁぁ!!!!」
顔面を地面に着けながら叫ぶスペニの頭部に、ゴンザレス太郎の拳の一撃が叩き込まれ、スペニはその一撃で生き絶えるのであった。
「勝っ…た…」
その言葉と共にゴンザレス太郎も後ろに仰向けに倒れて意識を失うのであった。