異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第19話 最後の平穏

ポカポカとした日差しが窓から差し込み、だらしない表情のゴンザレス太郎がライトアップされている。

小鳥が朝の挨拶を交わす爽やかな朝、下の階から聞こえるお母さんの声…

変わらず永遠に毎朝続く気がするだけで、ある日突如終わりを告げるような平和な朝…

前世がそうだったのを覚えているのか、ゴンザレス太郎の目が勢い良く開いた!

 

「ゴンザレス太郎ー朝御飯早く食べちゃいなサーい!」

「んん…あれっ?」

 

気が付いたら朝だった。

あれから同じコードを再使用出来るか試そうとして、スキルを解除する為に一度寝たら、どうやらそのまま朝まで寝てしまったのだ。

 

「あちゃーやっちゃったか」

 

不幸中の幸いと言うほどではないが、アイテム減らない状態のまま朝を迎えたら、まさしくとんでもない事になってたのは直ぐに予想できるだろう。

朝御飯は食べても減らないし、捨てた物は増えるし…

ドッキリでした!じゃ絶対に誤魔化せない。

 

「うん、次からは気を付けよう!」

 

 

 

そんな事を考えていた朝が、実は最後の平穏な時間である事をゴンザレス太郎はまだ知らない。

ダラダラしたせいで、遅刻しそうになりながら学校に行ったゴンザレス太郎、教室に入り皆に軽く挨拶をして自分の席に着いた時にそれに気付いた。

 

「ん?えっ?これって…」

 

机の中に手紙が入っていたのだ。

誰にも見つからないようにそれをポケットに入れて授業を受け、休み時間にコッソリ一人でトイレにてそれを見たゴンザレス太郎…

それが前世も含めての初めて貰ったラブレター?だと気付いたのだ。

 

『ゴンザレス太郎君、突然のお手紙でごめんなさい。貴方の事が気になって仕方ありません、放課後体育倉庫まで来て下さい』

 

うん、とても7歳の書いたラブレターには見えない。

書き方が随分と堅いが、自分の事がどうやら気になると言う誰かからの手紙、きっとこれはラブレターに違いない!

差出人も書かれていないので、悪戯や同性からの告白かもしれないなんて全く予想していないゴンザレス太郎。

文字自体も何処か丸みがあると言うよりカクカクっとしているが、きっとこれは女性の字だと疑わないゴンザレス太郎。

恋に関してはウブである。

 

 

 

その日程、授業が頭に入らない日は無かったかも知れない。

彼女の居る学生生活、仲良く通学、公園デート、遠足は準備している時間が一番楽しいとは良く言ったものであるが、間違いなく取らぬ狸の皮算用である。

 

そして、ついにやって来た放課後…

一人で体育倉庫まで行ったゴンザレス太郎を待っていたのは、課外授業を同じ班だった女子のフーカであった。




いつも誤字報告ありがとうございます!
『取らぬ狸の皮算用』が『捕らぬ』じゃないのかと調べたけど『取らぬ』になってたのでこっちにしておきましたが…なんか怖い(笑)

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