真っ暗な闇の中であった。
どっちが上でどっちが下なのか分からない、その何もない空間に漂っていたゴンザレス太郎は混乱している頭を左手で押さえながら何かを探していた。
「俺は何を探していたんだっけ?」
なにも分からない・・・ただそれを見つけなくてはならないという事だけが頭の中に響いていた。
そして、突如それは聞こえた。
「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」
自分の声だと理解した。
だが自分はここにいるのに何故自分の声が・・・
そして、頭の中にバグったウィンドウの様な物が現われそれがスクロールしていく・・・
決して選んではいけないそれを選んだようにウィンドウが閉じる。
まるで世界が弾けた様に光が世界を包み、ゴンザレス太郎の目の前に男と女が現われた。
何処かで見た様な気がしないでもないシルエットで顔は見えないのだが、安らぐような雰囲気でその二人は敵ではないのが分かる。
「頼む・・・助けてやって・・・」
「君なら・・・君にしか・・・」
二人の声は徐々に小さくなっていく・・・
消える。
それは消えるというイメージ。
駄目だ!
俺は今諦めたら駄目なんだ!
上を見た!
そこには横に広がった線の様な空間の裂け目が在った!
あそこだ・・・あそこから外へ・・・
まるで無重力のその空間の中をもがき、少しずつそっちの方へ進んでいくゴンザレス太郎。
そして、やっと近付いた時にそれは広がりその向こうの景色が見えた!
その時ゴンザレス太郎の目に映ったのは泣いているフーカの姿だった。
「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」
世界が割れる音がしてゴンザレス太郎の意識は戻った。
全身の支配を振り払うようにゴンザレス太郎は叫ぶ!
「フーカァアアアアアア!」
「なんだと?!余の言霊を無効化したのか?!」
自分の向かいにあの女、そして二人の間に泣いているフーカがしゃがみこんで居た。
「くくくく、流石この世界最強の男だ。マリスが惚れるのも頷ける。」
「お前!フーカを泣かせたな!」
「あははははやらせたのは余だが、やったのはお前だぞ?」
「何をした?!」
「なーにお前にこの娘に必要ないスキルを外させただけさ」
その言葉にゴンザレス太郎は気付いた。
フーカの目が両目とも黒になっていたのだ。
それはつまり・・・
「タツヤ・・・お父さんと、お母さん・・・消えちゃった・・・」
フーカの中に宿っていた両親が消えた事を意味していた。
「さて、娘よ。お前には今ユニークスキルが存在しない。だから余が授けてやろう!」
「止めろ!」
「『動くな』!」
ゴンザレス太郎はデウスの言葉で体が動かなくなる・・・
「では改めて、『ユニークスキルを授かれ』!」
ここが礼拝堂でもないのに天から声が聞こえ始めた。
それはこの世界の理…
この世界の誰もがその存在に自身の持つユニークスキルを覚醒させられる儀式。
「アナタにはユニークスキル『パンドラ』を授けます」
遥か昔と同じように同じ台詞がその場に響く…
まるでアナウンスの様にその言葉は響き、ゴンザレス太郎とデウスの耳にも届く。
「やった!遂にやった!これで余は・・・」
「ふーざーけーるーなぁああああああ!!!」
言霊の拘束を自力で破り、ゴンザレス太郎の拳が目の前の女の顔面にヒットした。
だが、当たっているのにも関わらず、その拳は触れているだけで物理法則を無視して止まった。
「もうお前は用済みなのだが、ここまで余の役に立ってくれたのだ。このデウス様直々に相手をしてやろう!」
フーカから距離をとり後ろに下がったデウス、それをゴンザレス太郎は追いかける!
「『破裂しろ』!」
「がぁ?!」
ゴンザレス太郎の右足が突然破裂した!
だが左足で地面を蹴り現在持てる最高の一撃!
コード『限界突破』『物理攻撃2倍』に加え、ユニークスキル『全能力強化』と『熱血』で固めた最高の一撃!
だが・・・
「なんだこのへなちょこパンチは?」
当たった瞬間にその威力は無に返る。
そのゼロ距離でゴンザレス太郎はコード『HP全快』のお陰で復元した右足を踏ん張りそれを放つ!
「これはサラの分だ!『炎王球』!」
ゼロ距離で放たれた炎王球は出現と同時にデウスを飲み込む!
だが・・・
「ぬるいな…」
片手を払うだけでその炎の球は砕け散った。
それは言霊を使う必要すら無かったのか、デウスの表情は眉一つ動かない。
「お前は死んでも生き返れるのだったな?だったらどこまで耐え切れるか試してやろう!『圧死』!」
グシャ!
その瞬間、ゴンザレス太郎の体は上下に潰れて死んだ。
そして、直ぐにリレイズの効果で復活して・・・
「『焼死』!」
一瞬で体の中も外も炎に包まれて焼け死ぬ。
生き返った一瞬で焼かれながら再び使用したリレイズの効果でなんとか復活したが・・・
「『斬首』!」
ゴンザレス太郎の首が飛んで切断面血が噴出す。
だがそれもリレイズの効果で・・・
「『爆死』!」
首が無かった体が木端微塵に吹き飛んだ。
転がった首から体がリレイズの効果で出現し、倒れた状態で生き返るのだが・・・
「どうだ?まだ続けるか?」
デウスの笑みがゴンザレス太郎の中に恐怖を生みつけ始めていた。