異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第62話 終わり

「お…終わったのかのぅ…」

 

ミリーが言葉を発する、その言葉は一気に老けたような雰囲気を纏っており、その言葉使いににフーカが笑う。

 

「もぅ、ミリーはもうちょっと神様らしくしてよね」

「まぁそう言うなフーカとやら、こいつも昔とはかなり変わったぞ」

 

話し掛けるのはダマ。

フーカにとっては誰だか分からない人物だが、ミリーの過去を知ってる発言で大体の検討は付いていた。

 

「あいつがマリスの想い人か…参ったな余も惚れそうだよ」

 

体を起こしたデウスが艶かしく笑う。

一人大人の色気な感じをまとった雰囲気にその場の空気が少し変わる。

 

「駄目だよデウス、彼はフーカとサラの旦那さんなんだから」

「そうか?二人を愛せるなら四人でも愛してくれそうではないか」

 

そんな冗談を言いながら一同はお互いに肩を貸し合い、最上階のその部屋を出る…

 

「あの…スウは?」

「あれは脱け殻だ。元々このテンジクの住人は全てスペニの力で作られた『かりそめの魂』を与えられたゾンビ。スペニが死んだ時点で消えなかった事からおかしいとは思ったがな…」

「多分あのバグ修正プログラムの力で消えずに残ってたんだね」

 

仰向けで目を見開いたまま天を見て動かないスウはもう暫くしたら自然に消滅する、既に彼女のその中には何もなく、フーカは心残りながら置いていくことにした。

最後を看取ってやりたいと言うのもあるが、最後まで戦い抜いたゴンザレス太郎の事も気になるし、何より自分はミリーに、デウスはダマに手を貸して貰わないとまともに歩けないほど消耗しているのだ。

 

 

そして、1階まで降りて倒れて寝ているゴンザレス太郎を見つけて、フーカはいつもの膝枕をして彼が起きるのを待つ…

何故か参戦したいミリーとデウスも横に正座してゴンザレス太郎の腕を膝枕する、上から見たら張り付けにされてるような姿で寝ているゴンザレス太郎…

 

「バカばっかり…」

 

とダマが嬉しそうにその光景を眺める…

 

 

 

世界は救われた。

ゴンザレス太郎が目を覚ましたら彼女達は何を伝えるのだろうか。

愛の言葉?感謝の言葉?それとも…

 

主人公は眠る…

戦い疲れたその体を癒し人知れず世界を救った彼は何処へ行くのか。

それは彼女達に誘われてなのか自らの意思なのか、どちらにしても幸せな旅になることであろう…

 

 

 

 

 

 

----- 完? -----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズガァァァァァン!!!!!?

 

突如塔の一階の入り口が吹き飛んだ!

爆風と爆音に慌てて身構える一同。

そして、そこに立つ人形の黒い影…

信じられない、信じたくない…

4人共がその姿を見て絶望する。

 

「くは…くはは…くははははははは!!!!私は死なない、永遠に破壊を楽しむのだ!」

 

既に塔の外は酷い有り様であった。

空は闇に包まれ、竜巻が踊るように周囲を破壊する。

全ては目の前の存在、バグが起こした現象だ。

 

「そんな…どうして…」

 

ミリーの言葉に嬉しそうに闇の中に口らしきものが開き言葉を発する。

 

「簡単な話だよミリー、俺はデウスの知識と力の全てを得た。つまり…」

「赤砂から生き返れるって訳か…」

「タツヤ?!」

 

目を覚ましたゴンザレス太郎が語る。

そう、それが真実…

ミリーも過去にそうだったように、神の力を得ると言うことは死んでも赤砂から蘇れると言うこと。

そして、世界をこんな状態にしてからやって来たと言うことは…

 

「安心しろ、言霊は既に発動済みだ。」

「たくっ少しは休ませろっての」

「休むといいさ、死んで消えて永遠にな!」

 

バグの体から恐ろしいまでの威圧が放たれる。

以前は守りだけだったが、今度は攻撃の方も言霊で強化しているのはすぐに分かった。

万が一、いや億が一にも勝ち目はない。

誰もがそう考えた中、ゴンザレス太郎はフーカに突然キスをした。

 

それはフーカにだけ伝わる別れの合図。

 

「お前のスキル借りるな…」

 

その言葉を最後にゴンザレス太郎はバグに向かって駈けていく!

 

「スキル『一刀両断』発動!」

 

それはフーカのパンドラで産み出された一生に一度しか使えないスキル。

望むモノを斬る一太刀のそのスキルによりゴンザレス太郎の手に光で出来た刀が出現する!

 

「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

ゴンザレス太郎は飛び上がり命を懸けた最後の一太刀を降り下ろす。

しかし、それはバグの体を通過してゴンザレス太郎は向こう側に着地した。

 

「くふっ…くふっくふぁーはっはっはっはっはっー!!!」

 

目の前で笑い出すバグ。

ゴンザレス太郎の手からは光の刀は既に消えていた。

 

「無駄だ!私の体には『刃物の形状をした全ての物体は当たらずに私の体を通過する』ようにしてある」

 

慌てて助けに向かおうとするミリーとフーカであったが…

 

「『動くな』!」

 

その一言でミリーとフーカは体がその場から動かなくなり、見てることしか出来なくなる。

終わりだ。

勝てない…

誰もが世界の終わりを感じた。

 

「最後まで楽しませてくれたお礼だ。存分に楽しんでくれ…『発狂死』!」

「う…うぁぁ…うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

地面をのたうち回り苦しむゴンザレス太郎。

それは数分続き、バグはその様子を楽しそうに眺めていた。

そして、力尽きて生き絶えて倒れたゴンザレス太郎。

既に生き返れる上限に達したゴンザレス太郎、彼にバグはそれを知ってか言い放つ…

 

「これでさよならだ『孤独死』!」

 

その言葉と共に地面に現れた闇に、息をして無いゴンザレス太郎は飲み込まれ消える。

そこは亜空間、入れば二度と出られずに永遠に孤独を味わい続け死ぬ。

もし何かの方法で生き返ったとしても、そこから出ることはできず死ぬ。

そしてそれはゴンザレス太郎の完全敗北を意味していた。


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