秋も終わりに近づき風が徐々に冷たくなってきた。
外の空気を吸える残り少ないこのチャンス、新鮮な外界の空気を堪能しようと大きく深呼吸してムセた。
「けほっけほっ…」
口元にやった手はまるでミイラのように細くなり、その人物の死が近いことを表していた。
この病室からもう出ることは無いのだ…と窓の外の景色を見詰める。
「千佳、ほらまた窓開けて。駄目でしょ」
そう言いながら 部屋にノックもなしに入ってきた母親に窓を閉められる。
まだやりたい事も沢山ある、恋だってしたい。
だけど…
私は自分の腕にもう射されていない点滴の在った場所を見てため息を吐く。
数日前から点滴をされなくなったのだ。
理由は簡単、無駄だからだ。
「ねぇ、お母さん。正直に答えて、私は後どれくらい生きられるの?」
「千佳…馬鹿ねぇ、何言ってるのよ」
そうとしか答えない母の顔は困惑の二文字が浮かんでいた。
きっとあの木の葉が全部散ったら私は天国に行くんだ…
今は落ち着いているが全身を激痛が巡り、寝てても苦しくて起きない日は無い。
苦しいのはもういや、辛いのももういや、どうして私だけ…
千佳がこの病室に来てもう1年になる。
最初の頃は定期的に体調の安定した日に自宅に戻ったり、友達と会ったり出来たが次第にその回数も減り、数ヵ月前からは病院から出ることも無くなった。
このままここで死ぬんだ…
そう理解するのが当たり前の状況となっていた。
そして、その夜…
千佳は真っ白な空間に居た。
直ぐに理解した。
体が普通に動き痛みもないのだ。
「そっか、あたし死んだんだ…」
「いや、あんたはまだ死んでないよ」
声が聞こえてそっちを見ると人形の白い何かが居た。
それは近くにいるようにも遠くに居るようにも見えた。
「正確には、後少しで死ぬところだね」
「そう…」
「驚かないんだね?」
「だって分かってたから」
「そっか。ねぇ、もし健康体になれるとしたらなりたい?」
「健康体に?」
「そう、それが出来る人に心当たりがあるんだ」
「本当に?元気になれるの?」
「あぁ、ただ本人を説得するのは君だ」
「私、やってみたいです!」
「よし、それじゃ君には仮の体を授けるから頑張ってね」
「はいっ、あの…貴方は神様なんですか?」
「そうだよ…一応ね、それじゃ頑張ってね~」
少女の意識はその言葉と共に消える。
「これでよし、後は彼が上手くやってくれれば余と…」
白いそれも姿を消した。
「ぷはぁ?!」
魔海の果てにある場所に浮いていた多数の遺体の中で、何の前触れもなく彼女は目覚めた。
辺りを見回して千佳はここが地球でない何処かだと理解した。
真っ黒の海に浮いた同じ顔をした壊れた人形、背中には白い羽が生えており、天使を想像した千佳は自分の背中にも同じ羽が生えている事に気付き驚く。
「えぇ?!なにこれ?!」
そして、自分の体が思い通りに動かせる事に慶びを露にする。
それをモニターで偶然見付けたミリーは慌てて、ゴンザレス太郎に会う口実が出来たと異世界へ飛んでいくのであった。
これが新しい物語の始まりであった。