いきなりロープで拘束されたゴンザレス太郎。
これくらいのロープなら簡単に引き千切れるのだが、いきなり現れた目の前の女の子が言った「世界最強」と言う言葉が気になり、抵抗をしなかった。
そもそもゴンザレス太郎が魔族や鬼や心ない天使と戦ったのは既に数千年も前、テンジクでの事ですら200年は前の話なのだ。
なので彼…彼女?が世界最強と言うことを知る筈がないのだ。
「あの~突然なんでしょうか?」
とりあえず情報が少なすぎて理解が追い付かないゴンザレス太郎、目の前の金髪ツインテール少女に事情を聞く。
ゴンザレス太郎が地球に居た時なら、間違いなく典型的なツンデレキャラみたいな容姿の少女は何かを言おうとしているが、どうにも言葉を選んでいるようにも見えた。
「うるさい!貴方のせいでこの町は壊滅するんだから!」
突然怒鳴り、まるで未来予知の様なことを言い出す少女。
意味が全く分からない一同は困惑する。
冒険者ギルド内での争いはご法度なのだが、登録していない者同士の言い争いなので受付嬢も止めるか悩んでいた。
危害と言う危害はゴンザレス太郎が縛られている事で充分なのだが、メンバーの誰一人としてそれを心配する素振りを見せないのが躊躇する理由であった。
「早くしなさいよ!じゃないともうすぐ…」
そこまで言ったところで地響きが聞こえてきた。
そして、真夜中だと言うのに門番が冒険者ギルドに駆け込んできて叫ぶ!
「大変だ!変なオークの群れが物凄い数で攻めてきたぞー!」
「うそ…まだ夜も明けてないのに…」
少女はその場にペタンと座り込む。
何か良く分からないが、とりあえずオーク達から町を守らないと依頼した件が無駄になると考えた一同は外へ駆け出す!
勿論ゴンザレス太郎は縛られたままでだ。
「ちょ…ちょっと待ちなさいよー!」
金髪ツイン少女も慌てて追い掛ける。
そして、町の入り口で戦っているそいつらを見て一同は驚く、単なるオークではなく体が半透明なのだ。
そして、門番が槍をオークに突き刺すが、その体内へ槍は沈みオークの腕が門番の口に突っ込まれる!
「ぶごべぇ?!」
変な叫び声の後、オークが少し離れると変化が起きた。
なんと門番の体が肥大化し、着ているものを取り込んで透明のオークになったのだ!
「どいて!」
フーカが透明オークの群れを一瞬で凍らせる!
だがオーク達はまるで氷を取り込むようにその体その形に氷をくり抜き、真っ直ぐそのまま出てきた。
そして悲劇は次々と連鎖する。
「いやぁぁぁぉぉぉぉおおおおおぐぐぐぶぶぶごごぉおおおおお!」
冒険者ギルドからオークの撃退に向かおうとした女冒険者が突然叫び声を上げながら苦しみだし、突如透明オークになったのだ!
そして、それは連鎖的に町のあちこちで発生した!
まさに阿鼻叫喚の地獄絵図とも言えるだろう。
真夜中の寝ている人間が突然透明なオークに変身し人を襲い、襲われた人もまた透明オークになるのだ!
しかもあちこちで冒険者が対峙するが物理攻撃は体内を通過し、フーカの魔法もぶつけてみたが効き目が殆んど無い事からも分かるように魔法もあまり効果が出なかった。
町に影響の出ないように手加減をしているとはいえフーカの魔法で倒せないなら町の冒険者の魔法でダメージすらも与えられないだろう。
抵抗していた人々も徐々に追い詰められ誰もが絶望の悲鳴を上げる中…
「スキル『束縛』発動!」
あの金髪少女が魔力で作り出した結界を紐状にしてオークを縛って押さえた!
それを見たフーカ達はオークを囲うように4枚の結界を生み出しオークを捕らえていく。
一時的にとはいえオークの進撃を食い止める方法を知ったメンバーは手分けして町中のオークを結界で動けなくしていった!
そして、夜が明ける頃にやっと惨劇は一先ず落ち着いたのであった。