異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第11話 どうして負けたと思った?

「そんな・・・世界最強がこんなあっさり・・・」

 

アーニーがゴンザレス太郎の体を見て声を上げる。

その体は粒子となって徐々に消えていく・・・

元々スゥの体であったその体は、ゴンザレス太郎が入り神化の力で時間が止まっていたので保っていたが、それが消滅していく・・・

それが意味する所は・・・

 

「もう、お終いだわ・・・」

 

アーニーは膝から崩れる。

悪魔大元帥アモンの横にはフーカが操られ立っている。

それをサラは睨みつける。

 

「ふははこれは怖いお嬢様だ。そして、マリスよ・・・もうお前ではどうにもできないぞ」

 

銀髪少女姿のマリスは手を出さない、いや出せないのだ。

動いた瞬間に強制瞬間移動で元の場所に戻され、何か行動を起こしても操られているフーカに止められる。

それはサラも同じであった。

しかも既に2人は『ユニークスキル封印』を受けていた。

 

「まず一匹仕留めたがその目はまだ歯向かう気満々だな」

 

アモンはゴンザレス太郎の攻撃で確信していた。

アモンはダメージが一定量を超えると自動的に全回復するスキル『全自動フルケア』と、どんなダメージを喰らってもHPが10残るスキル『ふんばり』という隠されたユニークスキルである特殊スキルを持っている。

そして、この場に居た中で一人だけ『スキミング』でステータスが異常な数値に達しているゴンザレス太郎を確認し実験をしていた。

そして、そのゴンザレス太郎の攻撃ですらHPは10%を割らず、直ぐに全快していたので負けるわけが無いと確信していたのだ。

その証拠にアーニーがゴンザレス太郎が消滅していくのを見て絶望に沈んだ表情を浮かべていた。

悪魔大元帥アモンは名の通り悪魔である、人間の負の感情は非常に好物で敏感にそれを感じ取り、街中の人々の絶望の感情をその体に取り込んでいた。

今、この瞬間もアモンはどんどん強くなっているのだ!

 

「さて、お嬢様とマリス様に交渉だ。お前たち俺の女にしてやるから大人しく降伏しろ」

 

その言葉に2人はお互いを見合い1回頷く。

 

「寝言は寝て言え」

「私の与えた擬似生命がまた大きく出たものですね」

 

2人はアモンを小馬鹿にしつつ拒否の返答する。

アモンはこの時に気付けばよかった。

いや、知らなかったのだ。

フーカは自分が洗脳してしまった為に仲間が死んだ事に対する感情を出していない。

サラは元々人間とは敵対している魔人族と言う事しか知らず、マリスに至っては今はミリーと言う名前なのはスキミングで分かっていたが、彼女がスゥの体になっていたゴンザレス太郎にぞっこんだと言う事も知らない。

そう、あの時に死んだアモンは何も知らなかったのだ。

だからゴンザレス太郎が死んだ事に対する2人の反応がおかしい事にも気付かない。

 

「後ろから失礼~」

「ふごぁ?!」

 

突然アモンは後頭部に衝撃を受けてそのまま顔面から地面に突っ込む!

アモンではなくその人物の姿を見てミリーもサラも驚きを隠せなかった。

そこに居たのは・・・

 

「さて、実験は成功って事で第2ラウンドだな!」

 

元の好青年となったゴンザレス太郎であった!?

考えれば直ぐに分かる事で、サラとミリーは気付いていた。

そう、4人共状態異常の『神化』状態なのである。

そして、常にリレイズを発動させているゴンザレス太郎がそのまま死ぬと言うことはリレイズが発動しなかったと言う事。

神化の効果の一つに、マリスが何度も見せていた通り、死んだら一番近くの赤砂から生き返ると言うものが在り、それが発動していたのだ。

 

「なっ貴様はあの時の?!ってげぇええ?!!?」

 

地面に両手を付いて顔を抜いたアモンはゴンザレス太郎の姿を見て怒りから直ぐに驚きに変わる。

スキミングで見てしまったのだ。

ゴンザレス太郎の現在のスキル欄に『プロアクションマジリプレイ』『ユニークスキル封印』『永続的洗脳』『拘束』が並んでいるのを!

 

「なっまさかもう?!」

 

そう、既にゴンザレス太郎の『ユニークスキル封印』でアモンの『ユニークスキル封印』と『永続的洗脳』は封印されていたのだ。

恐るべきはゴンザレス太郎のプロアクションマジリプレイであろう、コード『限界突破』でユニークスキルを複数付けられる上に、コード『スキル自由選択』で見た事の在るスキルはユニークスキルだろうが特殊スキルだろうが自由に付け替え出来るのだ。

ここでアモンの永続的洗脳をコード『スキル自由選択』で消さなかったのはフーカを縛っているスキル効果を消す事で不具合が起きると困ると思ったからであった。

 

「う・・・うわあああああ!!」

 

アモンの叫びと共に操られているフーカが飛び出す!

だが、ゴンザレス太郎はそのフーカを優しく受け止めその身に抱く。

 

「がぁああああ・・・んぎぃいいいい!」

 

洗脳され凶暴化しているフーカであったが素手の状態ではゴンザレス太郎に傷一つ付けられないのだ。

しかも魔法は使おうと無詠唱発動をさせる前にゴンザレス太郎が分解して吸収していた。

やがてゴンザレス太郎はフーカの耳に手をあて魔法で眠らせる。

 

「さて、困ったチャンのアモンちゃんにはお仕置きが必要だよな!」

 

ゴンザレス太郎の言葉にサラとミリーはウンウンと頷いて答える。

だがユニークスキルを封印されていてもアモンには『ふんばり』と『全自動フルケア』があるのだ。

だからやられる事は無いと考えていたアモンだったが、既に体の自由が利かない事に気が付いた。

目に見えないレベルの極細の魔法の糸である。

それを使ってアーニーのユニークスキル『拘束』で既に縛っていたのだ。

 

「う、嘘だ!こんなのありえない!」

 

アモンは地面に土下座の格好で悶えて逃げようとする。

だがしかし、ゴンザレス太郎のユニークスキルでの『拘束』がそう簡単に解けるわけも無く、余り意味を成さない芋虫みたいな動きで逃げようとしたが、地面に体を擦りつけるだけで身動きは一切取れなかった。

僅か1分でアモンの表情は勝利の確信状態から絶望の状況へ一転した。

そんなアモンの頭部を鷲掴みにして持ち合げるゴンザレス太郎。

 

「逃がすと思っているのか?」

 

それは、これから自分に襲い掛かる攻撃の嵐の前の静けさだと理解するアモン。

そして、アモンの体はゴンザレス太郎の蹴り1発で空高く飛び上がるのであった。


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