異世界ツクール   作:昆布 海胆

208 / 435
第12話 天の裁きを超える灼熱のレーザー

「ぐわっはははははは!」

 

空に蹴り上げられたアモンだったが、ゴンザレス太郎の蹴り一発で拘束は解けていた。

アモンは生まれた時の様に空に浮かぶ事が出来るのだ!

つまりこれは逃げるチャンス!

そう考えたアモンだったが空に浮いて驚きに震える!

 

「か・・・体が・・・」

 

気付いた時には下半身が石になっていたのだ。

ゴンザレス太郎、スゥの体の時に殴りつけつつスキル『徐々に石化』を使用していたのだ。

これは攻撃力が激減する代わりに攻撃に石化効果を付属する攻撃であった。

だが先程の蹴りを受けるまではその効果は目に見えるほど発動していなかったのだ。

 

「だ、だが逃げるのに支障は・・・」

 

アモンはそう言って東から上がって来た太陽の光に目を細めた。

いや、それも気付かなかったのだ。

正面から差し込んでいる太陽の光がどんどん明るさを増していたと言う事実に・・・

 

「な・・・なんだまぶし・・・」

 

アモンの言葉はそこで掻き消された。

地上から見ていた人達はその光景に唖然と見上げながら立ち尽くす。

まさに光の極太レーザーがアモンが居た上空を飲み込み西の空へ突き抜けていたのだ。

 

「またタツヤは・・・」

 

ミリーが溜め息を吐きながらゴンザレス太郎の方を見る。

ゴンザレス太郎は東の空へ向けて右手を伸ばしていた。

コード『射程無限』で作り出していたのは太陽を包み込むように生み出した転移結界であった。

全方向へ広がる太陽光を転移で一方向へ転移させ、更にそれを熱を逃がさないように反射結界で包み込みながら方向を修正し、上空に蹴り上げたアモンを貫くように形作ったのだ!

その中の温度は太陽の表面温度約6000度を遥かに超えてアモンを飲み込んだ。

ゴンザレス太郎の反射結界が無ければ地上諸共灼熱に焼かれていただろう。

恐るべしゴンザレス太郎である。

スキル『ふんばり』で一瞬HP1で耐えたアモンだが、次の瞬間には完全に燃え尽きて消滅したアモンであった。

 

アーニーは空で起こっている現象がゴンザレス太郎の起こした事だと言う事実に驚愕していた。

この世界の何者も彼には勝てない、いや勝てるわけが無いと考えていた。

そして、世界は救われたと・・・

 

 

しかし、実は今までアーニーはアモンに殺され、この町は滅ぼされていたがアモンはこの町を滅ぼした時にスキル『永続的洗脳』で操った透明オークに触れてしまい、実はその後自身も透明オークになり死んでいた。

どちらにしても長生きは出来ない悪魔大元帥アモンなのであった。

 

 

 

「フーカ、フーカ」

 

ゴンザレス太郎が意識を失っているフーカを起こす。

目を覚ましたフーカは目の前に居るのが男の姿のゴンザレス太郎だと言う事に気付き、喜んで抱きつく。

だが直ぐにサラに引き剥がされ睨みつけられる。

 

「フーカ、あんたやっぱりワザとでしょ?」

「な・・・なんのことかしら?」

「ワザとアイツに洗脳されて、タツヤに助けてもらうお姫様役をやったんでしょ?」

 

フーカ、前髪で目は隠れているが口は吹けない口笛を吹こうとしている形になりヒューヒュー息を出している。

そうなのだ、サラが睨んでいたのはアモンではなくワザと洗脳されて、タツヤに助けてもらおうと考えていたフーカだったのだ。

それはミリーも同じであった。

アモン、実は全く相手にされてなかった。

と言うかこの中の誰でもアモンに手を出されていた時点で、ゴンザレス太郎にただでは済まされない事になるのは目に見えていた。

なので一人抜け駆けして、捕らわれのお姫様役を誰よりも率先して演じたフーカに嫉妬していたのだ。

 

「と言うわけでフーカはタツヤと寝るの暫く禁止ね」

「えー」

「私も居ますから両隣は私達のモノです」

 

サラとミリーが結託してフーカを排除している。

女同士の戦いが始まっているのだが、タツヤは特に気にする事無く近くに居る気絶した人達をアーニーと共に介抱していた。

透明オークに町が襲われサラに悪魔大元帥アモンの襲撃を受けたにも拘らず、意識を失って倒れている人も多いが死者は奇跡的に0であった。

 

「全くとんでもないなゴンザレス太郎タツヤさんは」

 

リルダーツがゴンザレス太郎に声を掛ける。

名前の呼び方が逆に呼びにくくないのかと考えるゴンザレス太郎だが、まぁ本人がそれで良いなら良いかと気にせずに笑顔を向ける。

その横顔を見詰めるアーニー、確実に堕ちていた。

 

「とりあえず、騒がしい一日になりましたがこれで落ち着きそうですね」

「なんか他人事みたいに全部解決した君が言うのはなんだかな・・・」

 

リルダーツも溜め息を吐きながらそう告げる。

 

「まぁ後の事はこちらで何とかするから君達はゆっくりと休んでくれないか?」

「結局寝てませんからね」

 

太陽はもう上がっており普段なら町は店が開き始める時間帯であった。

だが一つだけ解決しておかないと駄目な事がある・・・

透明オークの発生原因と予想されるオークションである。

 

「オークションだろ?そちらの方もギルドでもう動いているよ、アレを作っているのはいつも依頼を出しているあのお客さんだからな」

 

先にリルダーツの方からそう告げられたゴンザレス太郎。

それならそれで良いかと納得し、3人に宿に戻って寝ようかと提案すると3人共欠伸をして頷いた。

 

「それじゃ今日はフーカが一人で隣のベットで私とミリーがタツヤの横ね」

「今夜は寝かせないわよタツヤ・・・もう朝だけど」

 

一人不貞腐れるフーカを置いて、ミリーとサラはゴンザレス太郎の腕をしっかりと捕まえて宿屋へ連行する。

スゥの体ではなくゴンザレス太郎本人の体が戻ってきて、その彼と一緒に寝られると言う事に喜ぶ二人を今度は逆に睨むフーカであった。

 

 

 

「あたし・・・どうしようかな・・・」

 

一人残されたアーニーはとりあえず家に帰ることにしたのであった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。