私の名前は千佳、ピチピチの女子中学生…だった。
謎の奇病にかかり、衰弱した私は数ヵ月病院暮らしをしていた。
そして、体がどんどん弱っていき、死を待つだけとなったあの日に奇跡は起きた。
その部分の記憶が曖昧でどうなったのか良く分からないのだが、私は気付いたら天使の様な人形の山の中で、その天使の様な人形の体を手に入れていた。
思い通り自由に動く体、これほど素晴らしい事はなかった。
数ヵ月死を待つだけの寝たきり生活をしていた私は、これを奇跡だと信じて第二の人生を歩むことを決めた。
「でも…羽はあるけど飛ぶ方法が分からないんだよね…」
試しに羽ばたいたりもしてみたが体が浮かぶこともなかった。
まぁそんな事をしなくても、普通にジャンプしたら凄く高く飛び上がれたからそれだけで満足したのもあるんだけどね。
なによりこの体が凄いの、転んでも怪我どころか汚れ一つ付かないし、どんなに走り回っても全く疲れないの!
ただお腹は空いた気がするんだよね…
それから私は人を探して近場を探索したが、結局誰にも会わなかった。
でも自分が目覚めたそこに流れ着いてる物、その中には人の手が加わったと思われる物があったので人はどこかに居る筈だ!
だがこの流れ着いたもので出来た島には人は一人も居ない事が分かった。なので私は海を泳いで脱出することにした!
幸い疲れない上に思い通りに動けるこの体なら何処までも泳いでいけそうだった…
それがどうしてこうなっちゃったのかな…
お母さん、私は今とても大きな海の怪物のお腹の中に居ます。
「嫌だー!おしりの穴からこんにちわ…なんて汚れなくても嫌だー!」
「また言ってるのか?いい加減諦めなよ…」
「だってぇ~」
千佳の前に居るのはしゃべる人形であった。
この人形の名前は『メリッサ』と言うらしい。
私が泳いでいたらこの巨大な怪物に下から丸のみにされて、怪物の中で気を失ってたのを介抱してくれたのだ。
フワフワ金髪の髪に青い瞳のフランス人形を思い浮かべるこのメリッサ、約200年前に息子さんを探しに海に出た御主人様ごとこの怪物に飲み込まれたらしい。
もう200年も前の話だから当然その人はここで…
「いやいや、息子さんも結局ここに来てな、一緒に怪物のくしゃみを利用して脱出したんよ」
何処かで聞いたことのあるような話だったが、無事に出れたのなら真似をすれば出れるかもしれない!
そう考えたのだが、私達が今居るのはその時に燃やした船の残った部分である、とてもこれを燃やして出れなかった時の事を考えると無茶は出来ない。
「まぁ、自分は飯食わんでも死なんし、この怪物が寿命迎えたら出て行こうとは思っとるんやけどな」
しかし、この話し方はどうにかならないんだろうか…
見た目はフランス人形みたいなのに、この話し方のせいで色々台無しだ。
「それならさ、別の方法を一緒に考えるから協力しようよ」
「あんさん、なにか訳ありか…分かったで手貸すわ」
そうして千佳はこのメリッサとの怪物の中での共同生活を送っていた。
「…んでな自分の御主人様のゼペットはんがな…」
ん?何処かで聞いたことのあるような…
「おいおい、聞きたい言うたんわチカやろ。んと何処まで話したっけか、そうそう!息子はんのなピノキ…」
「ちょっとダメー!」
「なっなんやいきなり?!まぁその不思議な嘘ついたら鼻の伸びるピノキ…」
「ワーワーワー!」
何故か私はメリッサの話の中に出てくる息子さんの名前を最後まで言わせないように振る舞った。
そんな一人と一体は気付かなかった。
丁度その頃、二人の入っている怪物の上空を光のレーザーが通過していて、怪物がそのレーザーに感化され発射された方角へ向かっていることを…
そのレーザーこそゴンザレス太郎が悪魔大元帥アモンを消し飛ばした太陽光収束灼熱レーザーだったのだ。
こうして2人の距離は急速に接近する。
怪物がゴンザレス太郎の方へ向かいだしたのを感知したのかメリッサの口元がニヤケていた。
「どうしたのメリッサ?」
「いや、別に何でもあらへんよ」
慌てて表情を戻すメリッサであった。
そして、怪物が島へ急接近した事でその存在を察知した人々が冒険者ギルドへの依頼を提出し、それが翌日から掲載される事となる・・・
Sランクの依頼として・・・