「な…なぁ…俺は夢でも見てるのか?」
「あん?何言ってんださっさと丸太を運ぶぞ」
港町から坂を上がった場所、そこで丸太を運んでいる冒険者が海を見ながら口にした言葉に、相棒の冒険者が言葉を返す。
だが、何かとんでもないものを見たような表情を浮かべる相棒が気になって、振り返り同じ様に唖然とする…
「島が…迫ってる…」
言い得て妙だが島ではなく、それこそがゴッドウエポンである。
海の生物には口から食すのではなく、皮膚からプランクトンの様な物凄く小さい微生物を吸収して摂取する生き物も居る、ゴッドウエポンはそれらの生物を食べる事でその性質を手に入れていた。
それは触れるだけで他の生物を取り込めるようになったと同意で、真っ直ぐにゴンザレス太郎の放った太陽光の方向へ移動しながら様々な生物を取り込み続けていた。
結果、その体のサイズは巨大化し、既に全長1キロに達する程となっていた。
「なんだ・・・あれは・・・」
海辺の方でもそれに気付いた人間が声を上げて次々と視線をそっちへやる。
そして、気付いた時には既に遅かった。
巨大な島が空へ浮かび上がった様に月の光を遮り、人々は空を見上げていた。
ゴッドウエポンが浅瀬に達して一気に浮上し、その体を持ち上げたのだ。
「か、影転移!」
「飛歩行!」
影使いガイアが近くに居た冒険者達を影の中へ連れ込み一人でも多く救おうと転移を行なった。
それと同時に制空のアルベドは空中を蹴って上空へ走って逃げる!
2人のSランク冒険者のみがその状況下で逃走に成功していた。
それ以外の港町の誰もがどうにもならない現実と向き合い、自らの命が終わるその瞬間まで現実味を感じず最後を迎えたのだった。
どーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!
それは隣町だけでなく、数キロ離れた村や町にまで届いた。
振動がまずやってきて、続いて物凄い音。
真夜中と言う事で人々は振動に驚き、飛び起きて遅れてやってきた音に恐怖して外へ飛び出す。
そして、巻き上がる砂埃が海の方向で上がっているのが見えた。
月が巻き上がった砂埃で隠れ、人々は世界の終わりを予感した。
それは人間だけに留まらず、野生で生きていた動物や魔物までが恐怖を感じ、一斉に少しでも遠くへ逃げようと大移動を始めた。
この時、世界は終わりへと歩みを始めたのであった。
ゴッドウエポンは港町に居た全ての住人をその体で押し潰して取り込み、恐ろしい事に人間の知恵を得たのだ。
それは無意識に本能のみで動いていたゴッドウエポンが意識を持ったと言う事でもあった。
進むべき方向は本能で理解しているが、その道中に取り込めるモノがあれば全て取り込んで進化をしようとする知恵を得たという事である。
更に港町に在った物も取り込み、その体に様々な属性を宿していた。
木材や金属だけに限らず様々な生活用品も吸収し、その体を更に進化させていく。
そうしてゴッドウエポンは陸に上がり更に進み続ける。
ゴッドウエポンが通った場所は抉れ草や木は全て取り込まれ荒野と化していく・・・
救いなのは陸に上がってからその歩みが非常に遅くなったことであろう。
鯨などが陸に打ち上げられて死んでしまうのはその内蔵が重力に耐え切れないから、と言う話があるように水中と陸上では勝手が違うのだ。
だがそれも時間の問題だろう、既に多数の人間を取り込んだ事で陸上の生物の歩き方の知識を得ているから直ぐに陸上用の進化を遂げるだろう。
「こんなんどうしろっていうんだよ・・・」
空に逃げて生き延びた制空のアルベドは上空からゴッドウエポンのその姿を見詰める。
既に影使いガイアが近隣の村へ避難の呼びかけを行っているのでアルベドの仕事はゴッドウエポンの動きを確認してその進路を把握し被害を最小限にする事だろう。
既に倒すとかそんなレベルの話ではない、確実にSSSランクの超厄災である世界の危機レベルの事態である。
アルベドは先程足止めの為に用意した杭を何本か叩き込んだが、そのまま飲み込まれ吸収されているのを見て倒す事は不可能と判断していたのだ。
そして、アルベドはゴッドウエポンの進行方向に居たエレファントと呼ばれる象に似た魔物の集団がゴッドウエポンに取り込まれ、その体からエレファントの鼻と同じ物が生えて近くの木々を取り込み始めたのを見て絶望を感じる。
ゴッドウエポンは何処へ向かうのか分からないが、更にその体を進化させ成長していくだろう。
「人類の危機か・・・なんなんだよこいつは・・・」
アルベドの口からここ数年出た事のない愚痴が飛び出し、避難誘導を行なっているガイアの元へ現在の状況を影を通じて伝えるのであった。