異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第21話 魔物の街の秘密兵器!

朝日が昇ると同時に世界中で異変が報告されていた。

ゴッドウエポンによる進行を察知した動物や魔物達が一斉に大移動を始めていたからだ!

最初は近くの村が魔物に襲われたという連絡が入った。

だが直ぐに魔物達はその村を素通りし、そのまま走り去る。

ぶつかったりして建物に被害や死傷者が多数出たのはあるが、村人が全滅とまではいかなかった。

 

「マルニー村から魔物襲撃報告です!」

「こちらはガルムの砦が動物の大移動に巻き込まれ崩壊したと連絡が!」

「ズダインの街では家畜が暴れだして街中を暴走しているとの報告が!」

 

ゴッドウエポンの報告が真夜中にされてから数時間後、魔物の街アムステルダでは冒険者ギルドとの連絡網を設置し、全ての冒険者ギルドと通信用ラクリマを使用しての対策室の様な物が前魔王アルスの支持で設置された。

そして、被害報告を頼りに現在のゴッドウエポンの位置が割り出されていたのだ。

 

「いいか!人間は容易く死ぬ!俺達魔族が助けてやら無いと駄目なんだ!」

「おー!!!!」

「よし!各々無理をせず迎え!」

 

飛行タイプの魔物達は被害報告を上げている村等に魔族を派遣し、救助や非難誘導の為に動き始めていた。

その成果は着実に現われ、大勢の命が救われていた。

だが勿論救助が間に合わない地域は存在する。

現魔王ノロの指示で、ゴッドウエポンの通る道で救助が間に合わないと思われる町や村は既に見捨てられていた。

そして、その中に現在ゴンザレス太郎達が滞在している場所も含まれていた。

 

 

 

 

 

「タツヤ、お客さん来てる」

「ん?」

 

フーカの声に反応し、いつの間にか上下逆になってゴンザレス太郎に抱き付いているサラの体からそっと離れて、ゴンザレス太郎は起き上がる。

ミリーは一睡もしていないが、一晩中ゴンザレス太郎の匂いに包まれて悶絶していた。

 

「昨日のリルダーツさん」

「あぁ、今行くよ」

 

寝起きのボサボサ髪を手で少し押さえながらゴンザレス太郎は部屋のドアを開ける。

そこに立っているのは、エルフでこの町の冒険者ギルドのギルドマスターであるリルダーツであった。

 

「ゴンザレス太郎タツヤさん、世界の危機です。」

「朝から第一声がそれと言うのはどうにかならないんですかね?」

 

欠伸を我慢しながらゴンザレス太郎はリルダーツの話を宿の廊下で聞く。

部屋の中に入る3人は寝巻きで、ゴンザレス太郎は自分以外に彼女達のそんな姿を見せるのを嫌うので外で話をしていたのだが・・・

 

「と言う訳でこの街から約2キロの場所がその地点となるんですが・・・」

「それは不味いですよ!」

 

リルダーツの話によれば、魔物の街アムステルダの究極兵器を使ってこの街に向かって来ている超巨大な恐ろしい魔物を攻撃して滅ぼすと言う作戦が進んでいる…という話だったのだがゴンザレス太郎は焦った。

昨日ゴンザレス太郎を呼び出した冥と名乗った別次元のナニかは、その巨大な魔物をゴッドウエポンと呼んでいて確かに言ったのだ。

 

『そう、そいつはありとあらゆる生き物やエネルギーを吸収する性質を持っている・・・』

 

今まで数々の死線を潜り抜けて来たゴンザレス太郎はその意味を理解していた。

どれ程強力な兵器であろうが、吸収属性と認識される攻撃は相手を回復させ成長させるだけなのである!

だがそれをどうやってリルダーツに説明すればいいのかゴンザレス太郎は悩んだ。

その魔物をゴッドウエポンと呼ぶのは知っているゴンザレス太郎のみであり、その性質に付いても本来知っている筈が無いものである。

下手をすればゴンザレス太郎が生み出した魔物と言われる可能性も考慮すると、とても口出しは出来なかった。

 

「そんな訳でその超大型の魔物が到達する1時間後に作戦は遂行され、この町は強力な結界で保護されます。絶対に町から出ないようにお願いします!」

 

そう言い残してリルダーツは走っていく。

そんな大型の魔物を倒そうとしている兵器を、この町からたった2キロしか離れていない場所に使用すると言う事に問題がないのか?と首を傾げるゴンザレス太郎であるが、その兵器の威力も分からなければどうにも出来ないのが事実。

なのでゴンザレス太郎はフーカ達と共に街への被害を食い止める為に1時間後、町の外で町を巨大な結界でサラ、フーカ、ゴンザレス太郎と言う順に三重展開させ守って待機していた。

そして、ゴッドウエポンの姿が地平線に見えた。

それは更に巨大化し、全長は既に2キロを超えていた。

移動するだけで動植物を捕食し続けるその怪物は、一直線にゴンザレス太郎達の方へ向かって来ており、予定されていたポイントに到達したと同時にそれは飛んで来た。

一見すると生活魔法のライトと呼ばれる光の球体。

それが物凄い速度で一直線にゴッドウエポンの胴体に着弾する!

すると野球のボールサイズであった魂石に込められた魔物達の魔力が一気に暴走する!

それは一瞬にして巨大な光のドームとなりゴッドウエポンの体の4分の1を飲み込むように発動した!

周囲への被害は最小に抑えられる術式で、全ての力は内側へ発動し物凄いエネルギーの渦が容赦なくゴッドウエポンの体を飲みこんでいく!

 

「駄目だ止まらない!」

 

ゴンザレス太郎の一言を聞いて誰もが絶望した。

ゴッドウエポンは魂石の攻撃による衝撃に一瞬怯み、動きを止めたが直ぐに活動を再開した。

特に魂石で生み出された魔力の渦に巻き込まれたゴッドウエポンは予定では完全に消滅している筈であった。

だが実際に目の当たりにした効果…現実は非情であった。

着弾した瞬間は飲み込むように削られたゴッドウエポンであったが、自身にそれが触れている間にその力を解析し直ぐに自身の体に取り込んだのだ。

 

「おいおいおいおい・・・これ洒落にならないって・・・」

 

様々な生き物の体をその身に取り込み、進化した全長2キロを超えるゴッドウエポンは体の前部から自身が受けたと同じ威力の魔力を魂石に込め直し、それを放って来たのだ!

そして、それが街の前で貼られていたゴンザレス太郎達の結界を飲み込む様に大爆発を引き起こした!

一瞬でフーカの結界が粉々に砕け散る!

続いてサラの結界で85パーセントの衝撃が飛散され最後のゴンザレス太郎の結界で残りを全て受け止める!

その威力は天の捌きを超える威力で凄まじく、3人はその衝撃を必死に耐えるのであった。


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