異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第24話 メリッサの正体

「ほらっ地上だぞ」

「ほえっ?!」

 

ゴンザレス太郎が地上に転移してチカを降ろす。

どうみても大好きホールドな状態だったので!ゴンザレス太郎が降りて来たのを確認して走り寄って来たフーカ、サラ、ミリーはそこで固まっていた。

あんな羨ましいことは数百年やってないと全員考えているのだ。

と言ってもミリーはただ単に羨ましいだけだが・・・

 

「えっと・・・あの・・・その・・・」

「ぷはぁ!?あー死ぬかと思ったで~」

 

チカが状況をのみ込めず、あたふたしていたらその胸元からフランス人形が顔を飛び出してきて、ゴンザレス太郎は驚いた。

しかもその人形はしゃべっているのだ!

 

「あんさんがやってくれたんやな、あんがとな・・・」

 

そのフランス人形を笑顔で近付いて頭を鷲掴みにして持ち上げるミリー。

 

「何やってるのかなダマ?」

「えっあれれ?マリス?いやミリーさんお久しぶり」

「うん、お久しぶり~じゃなくてね・・」

「あかんあかん!頭メリメリ言ってる!これヤバイやつやって!」

 

そのミリーの行動にやっと我に返ったフーカとサラはゴンザレス太郎に走り寄って飛びつく!

何処の馬の骨から分からない女が愛しのゴンザレス太郎に抱きついていたからヤキモチを妬いていたのだ。

 

「ごばぁ?!」

 

2人のステータスは勿論カンストしている、勿論近くに居る人にはサラとフーカが突然消えて、次の瞬間には後方へ吹っ飛ぶゴンザレス太郎にタックル仕掛けてるようにしか見えてなかっただろう。

遅れて二人の音速にも届く移動速度の衝撃が周りに広がる。

 

「ちょっ!二人共何やってるのよ・・・ってこれもしかして・・・心無い天使?」

「そうみたいなんだけどちょっと違うんだよな・・・」

 

サラとフーカがタックル仕掛けて押し倒していた筈のゴンザレス太郎は何故かミリーの目の前に居た。

それを振り返って見た2人は自分達が抱き付いているモノに視線をやると・・・

『はずれ』と書かれた案山子が倒れていた。

変わり身の術にも見えるが、正確にはコード『限界突破』で2人よりも更に早い速度で動けるゴンザレス太郎は、二人に抱きつかれる瞬間にその案山子と入れ替わったのだ。

忍法というよりも無理やりである。

 

「あ・・・あの・・・さっきは本当にすみませんでした!」

 

チカが頭を下げる。

その姿はこの場に居る全員が過去に恐怖した心無い天使そのものだが、その仕草や様子がどう見ても人間のそれであった。

 

「っでこれは一体どう言う事なの?」

「あぁあああ中身出る!中身出ちゃう!!」

 

ミリーがダマが入っているメリッサと名乗った人形の頭部を鷲掴みにして力を込める。

ミリミリと言う音からメキメキと言う音に変わり、慌ててダマは話し出す。

 

「ち、ちがうんや!デウスがやった事なんや!」

「デウスが?」

 

デウスとはミリーとダマと共に3人でこの異世界を異世界ツクールで作り上げた神の最後の一人である。

バグにその力を奪われゴンザレス太郎を苦しめたが、彼の活躍で見事に勝利しその力を取り戻した。

 

「あ、あの・・・私・・・神様に死ぬ直前にこの世界に連れて来て貰って・・・」

 

予想以上の重い話に一同静かになる。

そして、ダマが口を開こうとした時にその気配に気付いた!

 

「これはヤバイんじゃない?」

 

人形が上を見上げ、それに続いてその場に居る全員が空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっきのとんでもない攻撃でもアレは倒せなかったのか・・・もうこの世界は終わりなのか・・・」

 

ゴンザレス太郎達から遠く離れた丘の上に立つ一人の男。

港町に避難を呼びかけていた賢者であった。

結局誰一人彼は救う事が出来ず、この歴史に残るであろう事象を記す為に離れた場所で観察を行なっていた。

そして、ゴンザレス太郎のとんでもない攻撃を目の当たりにして立ち尽くしたが、それでも倒せなかったゴッドウエポンの存在に絶望していた。

 

「賢者、手を貸してくれ。あの街の住人を避難させる」

 

賢者の後ろに陰の中から現われたのはSランク冒険者『影使いガイア』であった。

今、空高くに浮かんでいるゴッドウエポンが今度落下してきたら下に在るあの町は一瞬にして滅びるだろう。

それを少しでも助けようと賢者に声を掛けていた。

だが賢者は首を横に振る。

 

「正気か?もうこの世界は終わりだ。アソコにいる謎の人達がとんでもない存在だと言う事は分かった。それでもあの化け物は倒せなかった。早かれ遅かれこの世界は終わるんだよ!」

 

自暴自棄になっていた賢者は叫ぶ。

ガイアはそれを何も言わずに聞いている。

事実空に浮かぶゴッドウエポンは先程よりも更に巨大になり、今もその体を巨大化させている。

それを見詰め続けていた賢者は大きく溜め息を吐き頭を下げる。

 

「すまなかった。協力するよ」

「あぁ、それじゃ行こう」

 

そう言って二人は影の中へ消える。

ゴンザレス太郎達の近くの町の住人を非難させるために行動を開始したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「流石ゴッドウエポンって訳か・・・」

「ゴッドウエポン?」

 

空を見上げながら呟くゴンザレス太郎の言葉にミリーが問いかける。

 

「あぁ、なんか冥とか名乗った『観測者』とか言う存在があれを俺に倒せって言ってきてさ」

「「観測者?!」」

 

ミリーとダマの声が裏返る。

観測者、それは神の更に上の存在。

そんな2人の反応を無視してゴンザレス太郎は空を見上げながら考える・・・

大規模殲滅攻撃は効果が無いばかりか逆に相手を強化してしまう事が分かった。

かと言って近付けば取り込まれそのまま死んでしまう。

 

腕を組んで悩むゴンザレス太郎はフト視線をチカに向ける。

吊り橋効果なのかゴンザレス太郎に対して特別な感情を持っているかのように、チカは目が合った事で顔を耳まで真っ赤にして視線をそらす。

完全に乙女のそれであったがそれは仕方在るまい、彼女は現実世界でずっと寝たきり生活を送っていたのだ。

なので異性に興味はあるが、実際に何か行動に出た事は無かった。

恋に恋する少女はいつの日か、白馬に乗った王子様が迎えに来てくれる事を祈る日々を過ごしていた。

そんな彼女が、自らの死を確信するくらいの絶体絶命な状況から救ってくれたゴンザレス太郎を意識しないはずが無かった。

 

「ミリーちょっと耳貸せ!」

 

チカを見つめていたゴンザレス太郎がミリーに話をする。

それはゴンザレス太郎がゴッドウエポンを倒す方法として考えた、かつてミリーが考えた作戦であった。

それを聞いてミリーは頷く、いけるかもしれないと考えたのだ。

 

「やれるか?」

「無理って言ったら?」

「他の方法を考えるさ、お前に頼らないな」

「もぅ~やるよやればいいんでしょ!」

 

ミリーはプクーと頬を膨らませて怒る。

サラとフーカはかつての恐怖を思い出すが、今度はゴンザレス太郎が計画しているのだ。

きっと上手くいく、そう考え2人は補佐に回る事を決めるのであった。


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