異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第32話 世界の真実、そして元の世界への帰還

「う…うん…ここは?め、冥は?!」

 

ゴンザレス太郎が目を覚ましたのは数時間後であった。

冥の気遣いなのか記憶はそのままに、肉体と魂のみ時間を巻き戻されたゴンザレス太郎は、死ぬ瞬間身動きが取れない中で冥が戻ってきた事を知っていた。

消滅しながらも意識があったのだ。

 

「タツヤ?!」

 

サラが意識を取り戻したゴンザレス太郎に気付いて声を上げながら駆け寄る。

ゴンザレス太郎が生き残った事には喜ぶが、フーカは連れていかれこの世界も明日には消滅するのだ。

それを考えてか表情は微妙ではあるが、それでもタツヤなら何とかしてくれるかもしれないと考えているのである。

そこへもう一人誰かがやって来た。

元気が無いがゴンザレス太郎の意識が戻った事で少しだけ笑みを浮かべたミリーであった。

 

「良かった。本当に…」

「ごめん、心配をかけたね」

 

ゴンザレス太郎の言葉にミリーは首を横に振る。

そのままゴンザレス太郎の胸に飛び込んで行きたいところだが、状況的にそんな事をしている場合ではない。

そして、この世界を作ったミリーだからこそゴンザレス太郎は聞いておかないと駄目なことがあった。

 

「ミリー、月の落下は止められないのか?」

「えぇ無理よ」

 

一言で断言である。

だがそれには理由があった。

 

「月の落下はこの世界の最終防衛システムに守られてる、動き出すと同時にシステムの保護下に入り一切の操作を受け付けず後は落下するのみ。例えどんな攻撃を加えたとしても月自体が防衛システムの力により完全に守られているのでどうにも出来ないわ。時間の猶予は私たちみたいな神の座の者がこの世界から出る時間を稼ぐためよ」

 

思い空気が場を支配する。

このシステム『ギガメテオ』は発動したが最後、星を吹き飛ばす力を加えても抵抗すら受け付けないと言うのだ。

 

「だけどね、タツヤ。貴方は…」

「ミリーそれを言っちゃうのか?」

 

ダマが口を挟む。

ミリーの背中にしがみついていたのだ。

 

「えぇ、彼は彼だけは戻してあげないと」

「戻…す?」

 

ゴンザレス太郎が疑問に思う。

 

「ごめんなさい、実は私嘘を付いていたの・・・」

 

ミリーが泣きそうな顔をしてゴンザレス太郎に告げる衝撃の事実。

サラもその話を聞いて完全に固まっていた。

それは・・・

 

「私、貴方を殺した神と同一人物だけど、同一人物ではないの」

 

意味が分からない。

だがゴンザレス太郎は記憶を呼び覚ますと、あの時に会った神は確かに今のミリーとはまるで別人だった。

一時笑い方が同じだった時はあるのだが、それでも同一人物・・・神だが・・・とは思えないのだ。

 

「正確に言うと私だけじゃない、ダマもデウスももう一人居るの。そして、そのもう一人が管理しているのが・・・」

 

話を聞き終えてゴンザレス太郎は正気を疑った。

今まで信じていた全てに裏切られた様なモノである。

だが今はそれよりもフーカの事だ。

 

「それで、今の話が本当だとして・・・フーカを助ける事は可能なのか?」

「分からない、私はそっち側に権限が無いから。」

 

再び場を静寂が支配する。

そして、ゴンザレス太郎は覚悟を決めた。

 

「ギリギリまで粘っても同じならそうしてみるよ」

「うん・・・そう言うと思ってた」

 

まずは体を休める事だとゴンザレス太郎は再び横になる。

サラとミリーは隣の部屋で待つチカの元へ戻った。

誰もが衝撃の真実を聞かされて理解が及ばない中、彼らの時間は流れていく・・・

そして・・・

 

 

 

 

 

 

テンジクの塔の中、一人の女が立っていた。

 

「煌よ抵抗するな」

「・・・」

「それでいい」

 

まるで独り言を言う様に言葉を口から発する女。

それは冥が入り込んだフーカであった。

その体を完全に魂まで融合し、一つの新しい生命体として完成した女は塔の最上階の光の壁を通り抜ける。

 

「お待ちしておりました」

 

そこに居たのはデウスであった。

 

「私は戻る」

「分かっております。どうぞそのままお進み下さい」

 

その光の中を歩き続けた女の姿が蒸発するように消えた。

 

「まさかこんな事になるなんてね・・・」

 

デウスの呟きに答える者は居ない。

その光の中、デウスはきっと来ると彼を待ち続けるのであった。

 

 

 

 

 

この空間には時間の感覚がない。

一瞬が永遠の様にも永遠が一瞬の様にも感じられる空間でデウスが見詰める先に彼が、いや彼等がやってきた。

 

 

 

 

「待ってたわ、さぁそのまま進んで」

 

デウスと久々に会ったゴンザレス太郎。

特にこれと言った世間話をする事も無く、ゴンザレス太郎はその光の壁を通り抜ける。

それに続こうとサラとチカも足を進めるが、光の壁は二人を拒んだ。

 

「やっぱりそうなのね・・・タツヤ。絶対にフーカを取り戻してよ」

「あぁ、ミリー…後を頼む」

「えぇ、タツヤ・・・きっと貴方なら・・・」

 

それ以上ミリーは言わない。

ゴンザレス太郎は別れを言わず、そのまま光の中へと歩を進める。

そして、その体が浮かぶような感覚に包まれ、目の前にあの真っ白のもじもじ君みたいな存在が立っていた。

 

「やぁ久しぶりだね、ここに戻って来たって事は全部知ってるのか~」

「あぁ、知ってるよマリス」

 

ゴンザレス太郎、いや、ここでは達也だ。

達也は迷う事無くマリスの名を呼び笑みを向ける。

 

「ふ~ん、本当君は面白いね。それじゃ楽しんでもらえたみたいだから帰ると良いよ」

「あぁ、そうさせて貰うよ」

 

達也は真っ直ぐに真っ白な空間を歩く。

そして、振り返り一言だけ告げる。

 

「あっちのアンタは凄くいい女だったよ」

 

それを聞いて一人腹を抱えて笑い転げるマリスを放置して、達也は光の中へ溶けていった・・・

 

 

 

 

 

 

 

ぶぃいいいいいいいいん!!

「うぼぉ?!」

 

目を覚ました達也は口に掃除機の先端を突っ込んで舌を吸われていた。

その手に力を入れてそのまま掃除機から舌を引き抜こうとして、掃除機を握り潰してしまった。

 

「あっやべっやっちまったな・・・つか本当だったのか・・・」

 

そこは達也の家、ミリーの話した通りであった。

とりあえず達也は掃除機を横に避けて立ち上がり、体に異変が無いか調べる。

喉に詰まっていた筈の餅はいつの間にか飲み込んでいた様で既に無くなっており、一通り体を動かして口にする。

 

「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」

 

目の前に表示される青いウィンドウ。

それが全てが真実だと証明していた。

達也は自身にいつもの『限界突破』を付与し、スキル『サーチ』を使用する。

直ぐにそれは表示された。

そう、フーカの位置情報である。

 

「はぁ・・・なんかもう驚くのもあれだけど、この世界で暮らすのは普通に考えて無理だろうな・・・」

 

達也はミリーから教えられたそれを思い出しながら玄関で靴を履いて外へ出る。

空を飛んで行くと流石にこの世界では目立つので徒歩である。

距離的に歩いて行ける場所にフーカが居るのを確認した達也、実に数千年振りの地球の大地に立ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

時は戻りゴンザレス太郎にミリーが告げた世界の真実・・・

 

「あのねタツヤ、この世界が私達3人の神が作ったゲームの世界と言うのは前に話したわよね?実はね、この話には続きが在るの。貴方が元居た世界、そこが既にゲームの世界なの。つまりこの世界はゲームの中のゲームの世界、ゲームインゲームの世界なの」

 

ゴンザレス太郎がその言葉に固まる。

自分が本来生まれた世界が実はゲームの中の世界だと言う真実に驚きを隠せないのだ。

 

「そして、その世界を作ったのが私達を自身に真似て作ったその世界の神。上の世界のマリスとダマとデウスなの。こっちの世界と上の世界では世界は違えどステータスは同じ、だから貴方もあの冥もこの世界と同じ力を発揮できる。そして、これが一番重要なのだけど・・・あっちの世界からこっちの世界に来た時に貴方の世界での貴方の時間は停止しているわ。だから元の世界に戻ったら貴方があっちの世界からこっちの世界に来た瞬間に戻る」

 

静かに目を閉じてミリーから告げられた内容を理解するゴンザレス太郎。

世界の真実を理解すると共に観測者である冥の正体に付いても考えるのであった。

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