異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第34話 終わりは始まってすらいなかった

「おかしい…」

「どういうことなの?」

 

ゴンザレス太郎とサラが朝日が登るのを眺めながら、二人してミリーに問う。

困惑するミリーには原因は分からない。

ゴンザレス太郎が元の世界へ旅立つ前日…

昨日冥によってフーカが連れ去られた事を聞かされたゴンザレス太郎。

冥の力によりゴンザレス太郎は魂の消費を戻され、ミリーから元の世界の話を聞いた。

元の世界では時間が止まっている、正確には戻った時に、来た瞬間に戻れると言う話なので、まずはこの世界のギガメテオに何か対策をと考えていたのだ。

だが結局何も解決策は浮かばず翌朝を迎えていた。

 

「今日なんだよね?」

「うん、その筈…」

「ミリー、ちょっと調べてくるから待ってて」

 

空のどこにも今日落下すると聞かされた月など見当たらず、いつもと変わらない朝を迎えたことで誰もが違和感を感じていた。

ギガメテオは発動すればこの世界のシステムによって月は守られて、その月が地上に落下し世界をリセットする最終防衛システム。

発動すればどうあがいても世界は滅びるしかない。

それがこの世界のルールなのだ。

フランス人形に入ったダマが調べてくると言い残し、人形の中から消えた。

暫くして戻ってきた焦ったように彼女は伝える…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹部を冥によって貫かれ、口から吐血しながら達也は目の前の冥の頬に手を当てる。

愛しい女を追い掛け世界を見捨ててやって来たが、結局何もできないばかりかその相手を助けてしまった愚かさを冥は嬉しそうに見る。

 

「どうした?もうおしまいなのか?」

 

冥の言葉と共に達也の魂が再び時を進められる。

一気にではなく、そのまま魂が消滅するまでジワジワと苦しめるつもりなのだ。

もはや自らをどうにか出来る者は存在しない、どんな攻撃も効かず、時間すらも操る冥はまさに無敵であると確信していた。

その慢心が唯一のウィークポイントとも知らずに…

 

「……たんだ。」

「ん?なんだって?」

「…無かったんだ」

「一体何を言って…」

「月は既に無かったんだ。」

 

冥が不快に顔を歪める、達也が口から血を流しつつ言葉にした意味を理解したのだ。

 

「まさか…」

「そうさ、だからあの世界は無事だ」

 

達也の言葉に驚きを隠せない冥。

実はあの世界の最終防衛システムに守られる月、それは既にゴンザレス太郎がゴッドウエポンを消滅させた核融合と彗星のエネルギーによって軌道を変えられ、冥が具現化した時には既にシステムの範囲外へ追いやられていたのだ。

その為、最終防衛システムは起動せずに終わっていた。

偶然にも世界は既に救われていたのだ。

 

「だ、だからどうした?!お前はこのまま俺に消滅させられこの女は既に俺が吸収し尽くした。お前の敗けは変わらん!」

「あぁ、そうだな…お前がこうして触れる距離に来なかったらな!」

 

達也は腹部を貫いている冥の腕を掴んで叫ぶ!

 

「スキル『一刀両断』発動!」

 

驚く冥の体に達也の手から出た光の剣が降り下ろされて!

達也の腹部に片腕が固定された冥は避けられず、それをその身に受けるのであった。


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