異世界ツクール   作:昆布 海胆

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本日より第2章です。


第2章 第1部 ピコハン編『単独ダンジョン踏破者』
第1話 捨てられたピコハン


その日、雨が降っていた。

この村では今年も不作が続き、遂に口減らしに俺が捨てられる番が来た。

せめて妹だけは捨てられないで生きていて欲しいものだ。

 

「お兄ちゃん、私ね大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになるの」

 

それが昨夜、妹から言われた最後の言葉だというから笑えない。

この世界は残酷だ。

街に行けば色んな仕事があり、喰うのに困らないと言うが…

現実は田舎者が街に行っても、仕事を斡旋すらして貰えないのが現状だ。

コネが無いから仕方ないだろう。

それが先月捨てられた友人の兄から聞いた最後の言葉だった。

 

この世界ドリーにはダンジョンが存在する。

このダンジョンの中と言うのは未知のアイテムや魔物が沢山在る…と言う事なのだが、現実は中に入った者を待つのは死だけだ。

武器を持った集団で中に入って探索し、近くの未知のアイテムを回収して戻ってくるトレジャーハンターと言う仕事が在るらしいが、直ぐに大怪我を負って引退するのが普通と聞いている。

そもそもダンジョンの魔物相手に、人間が集団で戦ったとしてもどうにか出来る訳が無いのだ。

それ程魔物と人間には力の差が存在している。

 

そして、ダンジョンのもう一つの使い道が人捨てである。

老人や子供を口減らしにダンジョンの入り口に捨てるのである。

勿論外に逃げ出そうとする者も居るが、捨てられた者は既に死んだ者として扱われ家にも帰れない。

結局死ぬしかないのだ。

村長に名簿から名前を抹消されたら村に滞在する許可も下りず、門番に村に入れてもらえなくなる。

この世界は本当に残酷だ。

 

遅くなったが俺の名前はピコハン。

変わった名前?特徴的で覚えやすいだろ?

と言っても、もう直ぐこの世ともオサラバなんだろうけどな・・・

 

「それじゃさよなら」

 

子供に向けるとは思えない目を両親に向けられ、ダンジョンの入り口に置かれた俺は泣かなかった。

いずれこうなるのは分かってたし、まだ死んだわけじゃないから諦めない!

俺はそのまま振り返りダンジョンの中へ入っていく。

きっと両親は俺が泣きついて来ても、突き放すつもりで心を鬼にしていたのだろう。

もう10歳になった俺はせめて両親を困らせないように後ろは見ない。

 

「死んでたまるか!」

 

両親に聞こえたかどうかは分からないが、俺は一人何も持たずダンジョンに足を踏み入れた。

これが俺の全ての始まりであった。

 

 

 

 

「はははっもう駄目かな・・・」

 

5分後、俺はこうもりの様な魔物に追い込まれていた。

近くには人間の遺骨が多数転がっている。

このダンジョン内が何故か闇ではなく明るいのに驚いた所で天井に目が多数見えた。

その多数の目に追いかけられ、横道に逃げ込んで現在に至るわけだ。

ここの人骨は殆どが同じようにここに逃げ込んで、こいつらの餌になったのだろう。

 

「嫌だ!死にたくない!」

 

叫ぶが誰も助けてくれない。

きっとこの世に霊なんてモノが居るならきっと今、俺の周りで仲間が来たと喜んでいる事だろう。

そしてこうもりの一匹がこちらに飛び掛ってきた。

咄嗟に横に転がりそれを回避した、がそれで壁際に追い詰められてしまった。

終わった・・・短い人生だったな・・・

壁際に座り込み全身の力を抜いて天井を見上げた。

 

それは無意識だった。

偶然手に触れた人骨を手に掴んだ。

そして飛び掛ってきたこうもりを見た。

死を覚悟したからだろう、こうもりの動きが物凄くゆっくりに見えた…

タキサイキア現象と呼ばれるこれを見ながら、何気に手に持っていた人骨を直線状に向けた。

するとこうもりはその顔面を自ら人骨に突き刺さりにきて…即死した。

ピコハンの意識下ではスローだったが、こうもりの降下速度はかなり早く途中で止まれなかったのだ。

 

その瞬間ピコハンの体に変化が起きた。

目の前で死んだこうもりから光の様な物が飛び出し、自分に飛んで来たのだ。

それがピコハンの体の中に入る。

体が少し暖かくなるのを感じた。

 

「なんだ?いまの?」

 

そんな事を考えた時にまた別のこうもりが飛び込んでくる。

だがピコハンは先程までの脅威を感じなかった。

落ちていた人骨を掴んで飛んで来たこうもりを叩き落した!

手に伝わる衝撃に違和感を覚えながら、落ちたこうもりにもう一度人骨を叩き付け絶命させる。

 

「勝てる・・・勝てるぞ・・・はははっ勝てるんだ!」

 

そこからはピコハンの逆襲が始まった。

飛んでくるこうもりを次々と落ちていた人骨を使って叩き落し、落ちたこうもりは足で踏みつけて止めを刺す。

どうやら死んだ時にあの光の様な物が抜けて飛んできて、それが自分の体に入ると自分が強くなるのを感じた。

そして、気が付いた時にはこうもりは全滅していた。

俺は生き残ったのだ。

 

「こいつ・・・食えるのかな・・・」

 

動いてお腹が空いたピコハンだったが生でこうもりを食う勇気は無く、近くに落ちていた人骨を幾つか拾いダンジョンから出て行くのであった。

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