異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第14話 ピコハン領主宅を訪問する

「おい!門を開けろ!」

 

配下の男が怒鳴ると門の内側に居た門番が不快な視線を向ける。

配下の男が余りに急激に老けていたので誰か分からなかったのだ。

 

「こんな夜更けに何のようだ?領主様はお休みだ。明日の日が上ってから…」

 

そこまで言って目の前の男の顔に見覚えがあるのに気づく門番。

 

「何を言ってる?私だ!」

「まっまさかライマさん?」

「私の顔を忘れたのか?」

 

配下の男の名を間違う筈もない、門番の男を雇ったのは配下の男ライマなのだから。

 

「どっどうしたんで?」

「いいからキャベリン様に繋いでくれ」

「わっ分かりました」

 

門番はもう一人の宿直を起こし、門番を代わって貰いライマを個室へ案内し領主を呼びにいった。

個室で椅子に腰掛けて一息付いたところで、ピコハンの殺意をモロに浴びたライマは震え出す。

人間の放てる殺意ではなかった。

少なくともライマはそう感じ、思い出すだけでも体の震えが止まらなくなっていた。

 

「ををっライマ帰ったk…ど、どうしたのだ?」

 

起こされて不機嫌ではあったが、ライマが帰還したと聞いて吉報だと思い機嫌を直し部屋にてライマを見て、今度は唖然とする…

寝起きからの喜怒哀楽に振り回された領主は配下のライマの様子を見て何事かと焦り出す。

 

「キャベリン様、我々は触れてはいけないモノに触れたのかもしれません…」

 

ライマがキャベリンに村で有ったことを伝えている時であった。

領主の家の門前に一人の少年が徒歩で向かっていた。

 

「ん?こんな真夜中にどうした小僧?ここはこの地区の領主キャベリン様の屋敷だ。さっさと去れ」

 

起こされて交代したばかりの門番は不機嫌そうにピコハンに告げる、いや告げてしまった。

ここが領主の家で、領主の名前がキャベリンだと分かったピコハンは笑みを浮かべる。

月明かりによってピコハンの顔に影が差した状態で、笑うピコハンを見て門番は何か得体の知れない恐怖を感じ、そのまま歩き続けるピコハンを無言で見つめる。

たとえ野犬が出ても、鉄柵の門を閉めてしまえば安心だと先輩から教わっていた門番は何もする事無く、その光景を眺めていた。

そして、ピコハンは予備動作もなく跳んだのだ!

 

「なっ?!」

 

右足の足首の力だけで2メートルはある柵を立った姿勢のまま飛び越えたピコハン、まるで月の様に重力が少ない場所を跳ねるかのような動きだと現代日本の人間が見れば理解するだろう。

まるで何事もなかったかのように着地して歩くピコハンを見て、門番の男は固まっていたが直ぐに我に返り腰の鞘から剣を抜く。

 

「う、動くな!」

 

だがピコハンは気にすることなく屋敷の玄関へ向かって歩く。

それなりに剣の修練を積んでいる門番の男はただ歩いているだけのピコハンに剣を向けて固まる…

 

「そんな、バカな話があるか!」

 

こちらを向いてすらいないのに全く隙が無い気配に恐怖を覚え、それに対して叫びながらただ剣を上から降り下ろす事しか出来なかった。

 

ぱぁぁぁぁん!

 

しかし、振り抜いた男の手には手で握る部分の柄しか無かった。

何かが破裂するような音が響き男の横の壁にガラスのような物が当たり下へ落ちる。

降り下ろされた剣をピコハンは裏拳で粉砕したのだ。

 

「な・・・」

 

そしてピコハンは入り口のドアをノックする。

親から以前複数回叩いて相手に知らせるのがノックだと教わっていたのだが、1回目のノックでドアに穴が開いてしまい諦めてそのままドアノブに手を掛けるピコハン。

 

「い、入り口には鍵がかかって・・・」

 

だが締まっているドアは真っ直ぐに奥へと動いた。

ピコハンの力で蝶番が壊れドアが外れたのだ。

そして、ピコハンが手を離すとドアは奥へと倒れる。

 

「う~ん・・・こっちかな?」

 

ピコハンは屋敷の中に入り適当にドアを開けて中を確認していくのであった・・・

 

 

 

 

「た、大変です!」

「何事だ?!」

「侵入者です!この屋敷に侵入者が!」

「なんだと?!門番は何をやっている?!くそっお前たちで何とかしろ!」

「はっ!」

 

報告に来た警備をしている男はキャベリンの指示を受けて急いで対応に走る!

この屋敷内には警護として十数人の人間が居るのだが、実は既に半数はピコハンによって武器を破壊され放置されているのだ。

ピコハン、女王蟻を倒してから素手の普通の人間相手では傷一つ負わない程の強靭な肉体を手に入れていた。

 

「こっちだ!相手は一人だが油断はするな!」

「くそっ?!なんなんだこのガキは?!」

「俺の槍が?!嘘だろ・・・」

 

ピコハン、一応人殺しをしないように相手の武器を破壊するだけでそれ以上の手を出さないのだが、逆にそれが恐ろしく武器を破壊された男は抵抗を止める。

対峙しただけで心を折られるほどの恐怖を味わい、素手で武器を破壊するその力がもし自分の肉体に剥いたら死は免れない、それが本能で理解できるのだ。

 

「そこっ!」

 

一人の女が弓で遠距離からピコハンを攻撃する!

他の警備の者を巻き込む事を気にする事無く放たれた矢だったが、立っている人の合間を縫って飛んで来た矢はピコハンに真っ直ぐ当たる!

 

「つっ?!」

 

目の前に立つ男の腕の隙間から飛んで来た矢にピコハンは回避が間に合わず右腕を少し掠ってしまった。

それを見て警備の者達は笑みを浮かべその場を空ける。

そして、ピコハンに向かって真っ直ぐ歩いてくる一人の女。

 

「安心しろ、猛獣すらも麻痺させる毒だが命に別状は無い」

 

それを聞いてピコハンは膝を付く。

この場に居る誰よりも腕の立つ人間なのだと目の前の女を理解し視線を向ける。

 

「名乗っておこう、私はユティカ。この屋敷の警備体長を勤めるユティカだ」

 

そう言いユティカはピコハンの方へ短剣を向ける。

抵抗をすれば即座に命を奪うと言う意味を込めているのだろう。

毒の効果で麻痺しているとは言え無理やりに動けない訳ではないからだろう。

だが・・・

 

「じゃあキャベリンの所まで案内してもらおうかな」

 

ピコハンの声が聞こえたと同時にユティカの手に在った短剣は粉々に砕け、ピコハンはユティカの横に立っていた。

それにユティカは驚き後ろへ飛び距離を取ろうとするが・・・

 

「酷いなお姉さん領主さんの所へ連れて行ってよ」

 

後ろにジャンプしようとしたユティカの背後にピコハンは立っており、その体にユティカの背中が当たる。

 

「う・・・そ・・・」

「なんか俺、毒って効かないみたいなんだよね」

 

そう告げるピコハンにユティカの腰に下げていた剣も砕かれて、地面にその破片が落ちるのであった。

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