この世界の学校では二年生の課外授業が一つの区切りになっていて、それ以降は授業は午前中のみとなる。
これは一般常識や一通りの基礎学力を納め終わったとされるのがこの時期で、これ以降は親の元で家業の手伝いをしたり、冒険者登録をして薬草採取やお使い系の依頼をこなして金銭を稼ぐようになるからである。
ただ、正式な冒険者登録は9歳からなので、7歳のこの頃は登録して幾ら依頼をこなしてもランクは変動しない、言わばお試し期間なのである。
だがそれでもギルドは冒険者として扱うし、取引売買はギルドの名に懸けてしっかりと行われる。
「って習ったよね?」
「は…はい…」
近い、顔がすごく近い…
今朝からフーカの態度がやはりおかしい…
昨日までなら神力を使うから質問形式での会話は控えるって言ってた筈なのに、朝から普通に僕にだけは話してきてるし…
まぁ他の連中に話しかけられてもいつも通り無口キャラを通していたのは優越感が有って嬉しかったんだが、その後の自分に話し掛ける時の豹変振りが凄くて、むしろ自分が変な目で見られてた気がした。
「ねぇ、聞いてるの?」
「聞いてる!聞いてます!」
綺麗な美声に柔らかい優しい香り、そして綺麗な瞳が僕を魅了する…
だから近いって!?
「じゃあ一緒に冒険者ギルド行くか」
「うんっ♪」
何この娘、絶対昨日までのフーカと別人だろこれ…
何故か腕の袖を摘ままれながら、一緒に向かったのは中に初めて入る冒険者ギルド。
きっと女連れで入ったら強面の冒険者達に絡まれて…ってイベントが始まるんだろうな…
そう覚悟を決めて入ると…
「ん?ゴン太じゃないか!」
そこに居たのはアイアンだった。
横にはホネオも居る。
「なんだ?お前が冒険者登録?無理だって!アハハハハハハハ」
相変わらずホネオうぜぇ…
そんな二人は後ろに続いて入ってきたフーカの事に気付き、その態度を一転させる。
しかもゴンザレス太郎の袖を摘まんでいるのを見て更に怒りを露にする。
ゴンザレス太郎もこのままそこに居たら何されるか分からない、一応ギルド内での揉め事はご法度だが、7歳の子供同士だからとスルーされると困るので逃げるようにフーカを連れて受付へと移動する。
「ようこそ冒険者ギルドへ、新規のご登録ですか?」
ゴン太は7歳で背が低いため、受付嬢がカウンター越しに前のめりで話し掛けてくるもんだから、目の前にたわわが二つで立派なたわわわが…
ゴンザレス太郎、やっぱり男の子である!
するとすぐ後ろのフーカの不機嫌な気配がゴゴゴゴゴ…
更に反対側からはアイアンの怒りの視線がギギギギギ…
正面からは受付嬢のたわーがタワワワワ…
そうか、これが四面楚歌ってやつか!
ゴンザレス太郎、前世の知識で現実逃避するのであった。