異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第20話 更に奥へと進むと次なる道は真上?!

目玉と共に四角い部屋は崩壊を始めた。

壁に一気に亀裂の様なヒビが入り、壁が崩壊すると共に隙間からデモンズウォールの肉片が落ちてくるのだ!

ピコハンは駆け出し最初に入ったドアの在った場所の穴から飛び出す!

そのピコハンを追い掛ける様に四角い部屋から光の粒子は次々と飛んでピコハンの体に入ってくる。

 

そして、ピコハンが振り返ると同時に穴は押し潰されるように塞がれ、四角い部屋は完全に崩壊した。

だがピコハンは女王蟻の剣を構えたまま警戒を解かない。

ダンジョンの魔物の生態が分からない以上は死んだとしても気を抜けないのだ。

ピコハンが想像していたのは昆虫に寄生して生きている寄生虫等の生き物の様な魔物が居るかもしれないということであった。

特に部屋と言う形の魔物である、サイズ的にも中に別の魔物が居てもおかしくないのである。

ピコハンは完全に死亡を確認し安心できるまでその姿勢のまま待機していた。

 

やがて崩れたデモンズウォールだった魔物の死体は蒸発するように消えていき、最後に残ったのは大量の金属の塊であった。

光沢のある赤よりもオレンジに近い色のその金属。

それはピコハンは分からなかったが銅である。

ピコハンは共有箱を展開させ弁当を取り出してからその金属の塊を次々と中へ放り込んでいく。

その量は鍛冶職の人間が見たら腰を抜かすほどの量ではあるのだが、その価値の分からないピコハンはとりあえずある分だけ全て放り込んだ。

そして、銅の下から出てきた金色の丸い金属を見てその体が止まる。

それはピコハンに幻覚を見せたデモンズウォールのドアノブであった。

ピコハンは共有箱から布を取り出し直接触れないようにそれを包んで『素手で触れるな』とメモ書きを付属して共有箱にしまう。

 

こうしてデモンズウォールの素材を全て回収し終えたピコハンは奥に見えていた白骨死体の方へ近付く。

それはデモンズウォールの餌食になった者の成れの果てであった。

その中には勿論人間だけでなく様々な生き物の骨があった。

デモンズウォールはそのドアノブに触れた者に幻覚を見せて体内の部屋に獲物を入れてゆっくりと消化する魔物である。

その生態は蜘蛛に近い、獲物が掛かるのを罠を貼って待つ魔物なのでその行動範囲は非常に狭い。

最後にピコハンを追いかけたように少しは動く事はあるが、普段は同じ場所で動かずに獲物を待ち続けるのである。

 

その為、獲物を食した後のゴミはこうして近くに廃棄する生態をしていたのだ。

ピコハンはその中から貴金属をメインに回収していく。

それはルージュから言われていた事であった。

人捨てでこのダンジョンに捨てられた人間はこういった物を所持している筈が無いので、それは貴族関連の持ち物だった可能性が高い、それを持ち帰ることで家紋が入っていたり記念品だったりすれば高く買い戻してもらえる事もあるからである。

 

「こんなもんか、それじゃ進むとするか」

 

一通り人骨以外の物を回収し終えたピコハンは奥へと進む。

そして、凹んだ横穴を見つけそこにもたれる様に座り込み休憩する事にした。

共有箱を展開させ中から取り出したのは先程入れ直した今朝ルージュに作ってもらった弁当である。

実はピコハン、幻覚により数日もダンジョン内を彷徨っていた幻覚を見せられていたが、現実に戻って来た時の空腹具合でそれほど時間が経過していない事に気付いていた。

時計が無く太陽も見れないダンジョン内で腹時計は凄く役に立つのであった。

 

「へぇ~これは凄い!」

 

それはウィンナーに切れ目を入れて黒胡麻で顔を作ったタコさんウィンナーに、ぶつ切りにした卵焼きを斜めに切って反転させて作ったハート形の卵焼き。

まさに愛妻弁当であった。

少し照れつつもピコハンはそれを頂く。

幸いデモンズウォールがこの辺りの魔物も全て食い尽くしていたので、ピコハンは安心して食事を取る事が出来た。

 

「ごちそうさまでした。」

 

きちんと両手を合わせて感謝の言葉を述べ、一言お礼を書いたメモと共に共有箱へ空の弁当箱を戻すピコハン。

そして、更に奥へと進んでいくと再び行き止まりの場所へ辿り着いた。

ここまで一本道だったのでここが終点かとピコハンは少し悩んだが、一応奥の壁まで行ってそれに気付いた。

 

「そう来たか・・・」

 

真上へ穴が開いていたのだ。

幅は約1メートル。

上に何処まで続いているのか奥は見えない。

 

「行くしかないよな・・・」

 

ピコハンはジャンプして両手を左右に広げて壁を押さえるように体を支え、両足も開いて壁をしっかり掴む。

そう、ピコハン今度は垂直に直径1メートル程の竪穴を登り始めたのであった。


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