異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第28話 女神からの贈り物をアイへ

自宅に帰って体を拭いて着替えたピコハン。

その姿は何処からどう見てもただの男の子であった。

 

「ピコハンさん、無事で良かった」

 

アイが部屋から出たピコハンを待っていた。

左腕があるべき場所は腕が無いので袖がダラリと垂れ、右目が無いので簡単な眼帯の様な物をしている少女。

そっとピコハンの傍によって体を預ける。

右手がピコハンのお腹に当たり、ピコハンはそっと抱き締めてやる。

 

「心配掛けてごめんね」

「ううん、ピコハンさんならきっと無事だと信じてましたから」

 

少女と少年は見つめ合う。

特にピコハンは今回の探索にて一度左腕を失っているので、アイの苦労が良く分かったのだ。

そして、大人びた少女の手を握りピコハンはアイを連れて移動する。

 

「おっ戻りましたか村長」

「ルティア・・・なんで村長なんて呼び方に?」

「いや~ルージュ殿がこの村の村長だから村長と呼ぶようにって言っててね」

 

ピコハン、ルティアが名前呼びをするのにルージュがヤキモチを妬いたと理解した。

自分はダーリン呼ばわりしてるくせに・・・

 

「そうそう、ルージュは?」

「ルージュ殿なら解体場ですよ、村長が送った百足の解体が大忙しらしくてね」

「あ~」

 

ピコハンはそこで思い出す。

後半復讐も兼ねて百足狩りをした事を・・・

 

「とりあえず行ってくる」

「私は今日はお疲れの村長の護衛させてもらうんで、お供しますね」

 

こうしてピコハンはアイの手を引きながらルティアを従え解体場へ移動する。

そして、更に広く作り直されていた解体場では百足の体を解体している男達が居た。

 

「おっしもう少し持ち上げろ!」

「そっちしっかり持てよ!」

「よし、切るぞ!」

 

1体の百足に6人掛かりで作業をしている、その姿を見たピコハンはその場でルージュの姿を探す。

しかし、アイとルティアは目を丸くしてそれを見詰めていた。

あの巨大な百足をピコハンが一人で仕留めたというのに驚いていたのだ。

しかもその数が1匹や2匹どころではない・・・

 

「あっルージュ!」

「ん?あっダーリンちょっと待ってね」

 

何やら打ち合わせを暫く行なってからルージュがこっちへやって来た。

 

「お待たせ、どうしたの?今日はゆっくりしてて良いのよ」

「いやホラさ、メモと一緒に送った緑色の液体の入った物在ったでしょ?」

「えぇ、あれなんなの?」

「うーん・・・ちょっとここじゃあれだから家で説明するよ」

「分かったわ、それじゃ行きましょ」

 

ピコハンはルージュを連れて4人で自宅へ帰る。

そして、室内で外から覗かれてない事を確認して口を開く。

 

「実はさ、ダンジョンの一番奥で女神様に会ったんだ。」

 

ダンジョンは未だ神秘の物だ。

その中では一切の常識が通用しない。

その為、突拍子も無い話は色々とルージュも聞いた事があったのだが、流石に過去に一番奥まで行った人間は居なかったので、ルージュはその話に興味深く聞き入った。

そして、自分が左腕を一度失った事、女神様から頂いたそれを飲んで腕が治ったこと、そして火の加護と言う不思議な物を授かった事を話した。

 

「普通だったら信用できない話だけど、嘘じゃないのよね?」

「あぁ、この火の加護ってのが良く分からないんだけど、気配と言うか体温みたいなものを察知する事は出来るみたいなんだ。」

「はぁ・・・ダーリンどんどん人間離れしていくわね」

 

ルージュは呆れたと言った感じで口を聞くが、その目は明らかに獲物を狙う肉食獣の様な目をしていた。

商人だけあってポーカーフェイスが得意なルージュで在るが、ピコハンに惚れてるのを隠しきれていないのだ。

 

「そんな訳で、これはアイへのお土産なんだ」

 

そう言ってピコハンはその緑色の液体の入った入れ物を手渡す。

恐る恐るそれを受け取ったアイはピコハンを見詰める。

もし本当に失った体を修復する事が出来る薬なら、売ればそれだけでとんでもない値段が付く、それを本当に自分が飲んでしまってイイのかと考えているのだ。

 

「ピコハンさん・・・本当に良いんですか?」

「あぁ、良いよぐぐいっと飲んじゃって」

 

アイはピコハンが次にダンジョンに潜った時に大怪我をしたら使う用に残すべきだとも考えた。

だがピコハンは一切迷う事無く自分に飲むように返答した。

その気持ちを受けたアイはそれ以上何も言わず頷いてそれを口にした。

 

コク・・・コク・・・コク・・・

 

その光景にルージュとルティカは目を疑った。

アイの無くなった筈の左腕の所に光の粒子が集まりだし、それが腕の形になり弾けたのだ!

それと共にアイの右目にも光が入っていった。

そして、アイは自分の眼帯を左手で外して涙を流す。

 

「見える・・・触れる・・・手が・・・私の手が・・・ある・・・」

 

まさに奇跡としか言いようの無い光景にルージュとルティカは思考が停止し、ピコハンは一人腕を組んだまま満足そうに頷くのであった。


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