雑貨屋の様な店内を予測していたゴンザレス太郎は店内の綺麗さに驚いていた。
予想外に綺麗に掃除され、宿泊施設のロビーのように物があまり無い、ポカーンお口が開いたままのゴンザレス太郎はフーカの視線を感じ我に返る。
だが良く良く考えれば、大きな魔物なんかを持ち込むのに店内が狭いと困るからだろうと気付いた。
二人はそのまま正面のカウンターへと足を運ぶ…店の外では横に並んでいたフーカが、何故か店内では少し後ろを付いてくる位置取りなのにゴンザレス太郎は気付かないまま…
「いらっしゃいませ」
ギルド隣の専用販売店。
ここはギルドの会員カードを持ってる者のみが売買を行える店で、依頼を受けて魔物を討伐した際に余分に出たアイテムや壊れた武器から何でも買い取って貰える店なのだ。
ゴンザレス太郎とフーカ二人はスキルで増やしたリップクリームを売却する為にここを訪れていた。
二人がここでリップクリームを売ろうとしている理由は2つある。
1つは価格が固定制だからだ。
同じ物を複数個売る場合店側も買い取った品を売ってさばけないと利益にならないので、個人経営のお店では同じ物の複数個買い取りは同額ではしない、しても安く買い叩かれるのが理由だ。
もう1つは匿名性だ。
誰が売ったという情報はギルド内でしか扱われないので、情報の流出を防げるのだ。
なので盗品を売るならここって思うかもしれないが、ここを扱えるのはギルド会員カードを持ってる者のみなのがポイントだ。
前科持ちはギルド会員カードを持てないし、買い取りを行うのは最低でも『鑑定』のスキルを持つ者のみとなる。
明らかに価値の高い品はそうやって調べられるので、犯罪の抑制にも効果的なのだ。
「はい、買い取り価格は新品のリップクリーム14個で銀貨56枚になります」
銀貨10枚のリップクリームが買い取り価格銀貨4枚で、それが14本で銀貨56枚になった。
現代日本の価値に直して約5600円である、実に純利益4600円…
二回昼寝するだけで7歳が稼げる額と考えれば破格なのは間違いない。
「それでは確かに、ありがとうございました」
ゴンザレス太郎、所持金MAXの時ほどではないが、自分のスキルでなんの苦労もなくこんなに稼げるのに驚いていた。
ちなみに隣ではそんなゴンザレス太郎に前髪越しにうっとりとした視線を送るフーカがいたりする。
だが直ぐにフーカは意識を切り替え…
「それじゃ次行くわよ」
フーカがゴンザレス太郎の手を取り、隣の冒険者ギルドへ戻っていく…
そして、二人は予定通り依頼を出すのであった。