異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第4話 黒い人影とワニのダブルブッキング

第3車両

 

 

「あでっ?!」

 

ピコハンは隣の車両に逃げ込んだのだが、後ろに在った人影にぶつかり止まる。

一瞬誰か人が居たのかと思い振り返って謝ろうと考えたのだが、ここはダンジョンだ・・・

頭を下げる前に相手を見て恐怖した。

ピコハンの前には全身真っ黒の人の形をした影が立っていたのだ!

 

「ォォォォォォォォォォォ・・・・」

 

まるで地の底から響いて来る様な呻き声の様な音が響き、左右の座席に突如黒い人影が次々現われる!

一瞬恐怖したピコハンだが、手にしていた女王蟻の剣で横一文字に目の前の黒い影を上下に切り裂いた!

すると人影は霧になる様に消滅した。

それを合図に座席から次々と人影達が両手を伸ばして襲い掛かってくる!

だが動きそのモノはそれ程早くなく、むしろ普通の人と変わらない速度であった為、ピコハンは次々と手にした女王蟻の剣で切り裂き倒していく!

だがどれだけ倒してもその数が一向に減る気配が無い。

 

「くそっキリがない!」

 

そうしている間にピコハンは頭上に気配を感じ、目の前に居た黒い人影をジャンプで踏みつけ、そのまま一気に人影の上を走って移動した!

 

ズガアアアアアン!!!

 

大きな音と共に今さっきまでピコハンが立っていた場所の真上に大きな穴が開いて、巨大なあのワニが再び車両内に飛び降りて来た!

数体の人影はそのワニの胴体に押し潰され霧になって消滅する。

ピコハンが子供で低かった為、人影の上を渡れるのが幸いしたのだ。

 

「な・・・なんだ?!」

 

ピコハンが後ろをチラッと人影の上を走りながら見ると、ワニの近くに居た人影は次々とワニに向かって襲い掛かる!

ピコハンだけでなくワニも人影の敵なのか?

そう考えたピコハンであったが、その思考に意識を取られてしまった。

 

「あっ!」

 

肩を踏みつけた人影に足首を掴まれたのである!

予想していなかったそれによりピコハンはバランスを崩し人影の中へ倒れてしまう。

人間は2本の足でバランスを取っている、予期せぬ事でその足を止められたら誰でもバランスを崩すのは仕方ないだろう。

それでも倒れながらピコハンは自分が落ちる位置の人影を女王蟻の剣で切りつけ、自身に倒れた拍子に剣が当たらないように受身を取る。

勿論、足首を掴んだ人影は反対の足で蹴り付けて既に吹き飛んで霧になっている。

落ちて受身を取った後は直ぐに転がるように体を反転させ、起き上がりつつ近くの人影を切り裂くピコハン。

 

「やべっ?!」

 

そのまま剣を腰に構えて目の前の人影に体当たりをしながら押し進む!

 

バクン!

 

前に走った事で間一髪上下から襲ってきた牙を回避したピコハン、そのまま上に飛び上がり人影を踏みつけてチラリと後ろを見る。

あのワニと目が合った。

今さっき危険を察知して前に走っていなかったらあの口の中に間違い無くピコハンは入っていただろう。

そのままピコハンは人影の上を走りつつ奥へと進む!

密集した人影は次々とピコハンの足を掴もうと手を伸ばすが、同じ手は食わないピコハンはその手の甲を踏みつけたりしてそのまま渡っていく!

 

バクンッ!!

「うぉおっ!?」

 

走っているピコハンの直ぐ後ろで再びあの音が聞こえた。

あのワニだ!

再び口を大きく開いて車両の中全てが口と言う感じの状態でワニはそのまま物凄い勢いで進んでくる!

その口の中へ人影は次々と足を取られて入り込む。

そして、少し進んだ場所で再び、バクンッ!と言う音と共に大量の人影を捕食してしまうワニ。

人影がピコハンの移動の障害になってはいるが、それ以上にワニにとっても人影は障害であったのだろう。

そのままピコハンは車両の奥へ到達し、女王蟻の剣で車両を繋ぐドア前に居る人影を切り付けながら落下する!

そして、ドアを開いてその体を滑り込ませ連結路でドアを閉めようとする!

だがそこに人影の手が差し込まれドアが完全に閉まらない!

ピコハンはその手に女王蟻の剣を当てて手が霧になった事でドアが完全に閉まった!

 

ズガアアアアアン!!!

 

ドアが閉まると同時にドアにワニが激突する音が響き渡った!

だがドアは一切変形する事無く、透明の石越しにワニの口内が丸見えになる。

そこには今まさにワニの口内で喰われる寸前の人影がじたばたと暴れていた。

そして、ドア越しにワニの口が閉じる。

 

ワニのその目が透明の石越しにピコハンを見詰める。

そして、ワニはそのまま天井を突き破って屋根の上へと姿を消した。

ピコハンはそのワニが消えた後を見ていて驚きに表情が固まった。

 

「な・・・直ってる!」

 

ワニが飛び込んできた時に出来た筈の天井の穴は既に無く、ワニが口を開きながら突進した事で破壊された座席等がみるみる車両から生える様に修復されていったのだ。

なんにしてもこの車両と車両の連結部にはワニもその他のピコハンを襲う者も入る事が出来ないらしく、ピコハンはその場で腰を下ろして一息つくのであった。

 

「しかし、今回のこれははずれだな・・・」

 

そうである、車両内の広告は入手できたが、それ以外に今回のダンジョンは獲得できる物が少ないと考えていた。

だがそれは仕方在るまい、この車両に入ってからピコハンを襲う魔物の様な生き物は倒しても素材も残らず霧となって消えてしまう。

勿論ピコハンの体に向かって光の粒子も飛んでこずパワーアップは一切しなかった。

 

「とりあえず休める時には休んでおくか・・・」

 

そう言ってその場に座り込み、ドアに背中を預けて寄りかかりながらピコハンは目を閉じる。

そのままピコハンは仮眠を取るのであった。


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